25 / 50
25.交換条件
しおりを挟む
「くっ……、情けないっ」
エルフどもに笑い者にされるだなんて。
悔しさのあまり、我は下を向いて唇を噛んだ。
「おっと、勝手に舌を噛んで死ぬなよっ!」
ウォズが我の顔の前に手をかざして呪文を唱えた。
魔法で出現したひも状の口かせで我の口は拘束されてしまった。
「んんっ」
苦しくはないものの、これではしゃべることも出来ない。
舌でグイグイ押してみても革製なのだろう頑丈でびくともしない。
「お前をいたぶり殺すのが俺たちの楽しみなんだからさ」
我のあごを掴んで顔を近づけたウォズは青い瞳で微笑んだ。
「ウォズ王子、この者たちを打ち首にしましょう」
「火あぶりはいかがですか?」
兵士たちが物騒な発言をするので、我々は焦りを感じた。
「ねえ、ウォズ。俺の話を聞いてよ」
リヒトは縛られている身をよじってウォズに話しかけた。
「んー、なんだよ?」
「ねえ、一つお願いがあるんだ。殺されるなら俺たちは一緒に殺されたいんだ。片時も一人になりたくないんだ。俺たちは番だからね」
「お前たちそんなに仲がいいなら、なぜ送還魔法で元の世界に帰ろうとしていたんだ? さてはまた俺たちエルフ族を騙して青の魔石を奪い取ろうなんて考えているんじゃないか?」
ウォズは苛立ちを隠せない様子だった。
「違うよ、俺は元の世界にどうしてもやり残したことがあって、一旦帰らなきゃならないんだけどすぐに戻ってくるつもりだったんだよ。俺とルシファーはすでに番だからね。俺がちゃんとこっちに戻ってこないと、アルファの俺はともかくオメガのルシファーはこの世界で惨めな思いをしちゃうからさぁ」
リヒトはどうしてこんな嘘をつくのか。我々は番にはなっていないし、おまけにリヒトがこの世界に戻ってくる計画なんてないのに。
「ああ、どおりで赤の魔石の首飾りで首を覆っていると思ったら、魔王のくせに首につけられてしまった恥ずかしい人間の歯形を隠している訳か。こりゃ傑作だっ」
ウォズはお腹を抱えて笑った後、
「ははーん、なるほど。もしリヒトが戻ってこなければ番を解消された状況と同じという訳か。魔王が番のアルファに捨てられ一人で生きる惨めな姿は見ものだな。うーん、簡単に殺してしまうのが惜しくなってきたな……」
とつぶやきながら考えを巡らせ、エルフ王の耳元へ顔を近づけ何やら相談を始めた。
アルファは番を解消することによって別のオメガを見つけて番になることも可能だが、オメガは一度番を解消されると次に新たなパートナーを探すのは難しいと言われている。
それどかろか番を解消されたオメガは後も訪れる発情期も経済的な問題もたった一人でどうにかしなければならないのだ。
なるほど段々とリヒトの狙いが見えてきた、と我は黙って聞いていた。
「わかった、こうしよう。我々でリヒトを元の世界に戻してやってもいい。ただしタダでという訳にはいかない。すでに群衆はお前らの公開処刑を楽しみにしていたのだから。リヒトを元の世界へ送還し魔王を生きたまま解放してやる代わりに今夜の祭りに参加してもらおう」
ゆっくりと近づいてきたウォズは、にやりと顔を歪ませて言った。
「……祭り?」
打ち首や火あぶりにされるよりマシだとリヒトは安堵した表情で聞いた。
エルフどもに笑い者にされるだなんて。
悔しさのあまり、我は下を向いて唇を噛んだ。
「おっと、勝手に舌を噛んで死ぬなよっ!」
ウォズが我の顔の前に手をかざして呪文を唱えた。
魔法で出現したひも状の口かせで我の口は拘束されてしまった。
「んんっ」
苦しくはないものの、これではしゃべることも出来ない。
舌でグイグイ押してみても革製なのだろう頑丈でびくともしない。
「お前をいたぶり殺すのが俺たちの楽しみなんだからさ」
我のあごを掴んで顔を近づけたウォズは青い瞳で微笑んだ。
「ウォズ王子、この者たちを打ち首にしましょう」
「火あぶりはいかがですか?」
兵士たちが物騒な発言をするので、我々は焦りを感じた。
「ねえ、ウォズ。俺の話を聞いてよ」
リヒトは縛られている身をよじってウォズに話しかけた。
「んー、なんだよ?」
「ねえ、一つお願いがあるんだ。殺されるなら俺たちは一緒に殺されたいんだ。片時も一人になりたくないんだ。俺たちは番だからね」
「お前たちそんなに仲がいいなら、なぜ送還魔法で元の世界に帰ろうとしていたんだ? さてはまた俺たちエルフ族を騙して青の魔石を奪い取ろうなんて考えているんじゃないか?」
ウォズは苛立ちを隠せない様子だった。
「違うよ、俺は元の世界にどうしてもやり残したことがあって、一旦帰らなきゃならないんだけどすぐに戻ってくるつもりだったんだよ。俺とルシファーはすでに番だからね。俺がちゃんとこっちに戻ってこないと、アルファの俺はともかくオメガのルシファーはこの世界で惨めな思いをしちゃうからさぁ」
リヒトはどうしてこんな嘘をつくのか。我々は番にはなっていないし、おまけにリヒトがこの世界に戻ってくる計画なんてないのに。
「ああ、どおりで赤の魔石の首飾りで首を覆っていると思ったら、魔王のくせに首につけられてしまった恥ずかしい人間の歯形を隠している訳か。こりゃ傑作だっ」
ウォズはお腹を抱えて笑った後、
「ははーん、なるほど。もしリヒトが戻ってこなければ番を解消された状況と同じという訳か。魔王が番のアルファに捨てられ一人で生きる惨めな姿は見ものだな。うーん、簡単に殺してしまうのが惜しくなってきたな……」
とつぶやきながら考えを巡らせ、エルフ王の耳元へ顔を近づけ何やら相談を始めた。
アルファは番を解消することによって別のオメガを見つけて番になることも可能だが、オメガは一度番を解消されると次に新たなパートナーを探すのは難しいと言われている。
それどかろか番を解消されたオメガは後も訪れる発情期も経済的な問題もたった一人でどうにかしなければならないのだ。
なるほど段々とリヒトの狙いが見えてきた、と我は黙って聞いていた。
「わかった、こうしよう。我々でリヒトを元の世界に戻してやってもいい。ただしタダでという訳にはいかない。すでに群衆はお前らの公開処刑を楽しみにしていたのだから。リヒトを元の世界へ送還し魔王を生きたまま解放してやる代わりに今夜の祭りに参加してもらおう」
ゆっくりと近づいてきたウォズは、にやりと顔を歪ませて言った。
「……祭り?」
打ち首や火あぶりにされるよりマシだとリヒトは安堵した表情で聞いた。
1
お気に入りに追加
124
あなたにおすすめの小説
運命の息吹
梅川 ノン
BL
ルシアは、国王とオメガの番の間に生まれるが、オメガのため王子とは認められず、密やかに育つ。
美しく育ったルシアは、父王亡きあと国王になった兄王の番になる。
兄王に溺愛されたルシアは、兄王の庇護のもと穏やかに暮らしていたが、運命のアルファと出会う。
ルシアの運命のアルファとは……。
西洋の中世を想定とした、オメガバースですが、かなりの独自視点、想定が入ります。あくまでも私独自の創作オメガバースと思ってください。楽しんでいただければ幸いです。
【完結】恋愛経験ゼロ、モテ要素もないので恋愛はあきらめていたオメガ男性が運命の番に出会う話
十海 碧
BL
桐生蓮、オメガ男性は桜華学園というオメガのみの中高一貫に通っていたので恋愛経験ゼロ。好きなのは男性なのだけど、周囲のオメガ美少女には勝てないのはわかってる。高校卒業して、漫画家になり自立しようと頑張っている。蓮の父、桐生柊里、ベータ男性はイケメン恋愛小説家として活躍している。母はいないが、何か理由があるらしい。蓮が20歳になったら母のことを教えてくれる約束になっている。
ある日、沢渡優斗というアルファ男性に出会い、お互い運命の番ということに気付く。しかし、優斗は既に伊集院美月という恋人がいた。美月はIQ200の天才で美人なアルファ女性、大手出版社である伊集社の跡取り娘。かなわない恋なのかとあきらめたが……ハッピーエンドになります。
失恋した美月も運命の番に出会って幸せになります。
蓮の母は誰なのか、20歳の誕生日に柊里が説明します。柊里の過去の話をします。
初めての小説です。オメガバース、運命の番が好きで作品を書きました。業界話は取材せず空想で書いておりますので、現実とは異なることが多いと思います。空想の世界の話と許して下さい。
【完結】婚約破棄された僕はギルドのドSリーダー様に溺愛されています
八神紫音
BL
魔道士はひ弱そうだからいらない。
そういう理由で国の姫から婚約破棄されて追放された僕は、隣国のギルドの町へとたどり着く。
そこでドSなギルドリーダー様に拾われて、
ギルドのみんなに可愛いとちやほやされることに……。
【完結】僕の大事な魔王様
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
BL
母竜と眠っていた幼いドラゴンは、なぜか人間が住む都市へ召喚された。意味が分からず本能のままに隠れたが発見され、引きずり出されて兵士に殺されそうになる。
「お母さん、お父さん、助けて! 魔王様!!」
魔族の守護者であった魔王様がいない世界で、神様に縋る人間のように叫ぶ。必死の嘆願は幼ドラゴンの魔力を得て、遠くまで響いた。そう、隣接する別の世界から魔王を召喚するほどに……。
俺様魔王×いたいけな幼ドラゴン――成長するまで見守ると決めた魔王は、徐々に真剣な想いを抱くようになる。彼の想いは幼過ぎる竜に届くのか。ハッピーエンド確定
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/11……完結
2023/09/28……カクヨム、週間恋愛 57位
2023/09/23……エブリスタ、トレンドBL 5位
2023/09/23……小説家になろう、日間ファンタジー 39位
2023/09/21……連載開始
ふしだらオメガ王子の嫁入り
金剛@キット
BL
初恋の騎士の気を引くために、ふしだらなフリをして、嫁ぎ先が無くなったペルデルセ王子Ωは、10番目の側妃として、隣国へ嫁ぐコトが決まった。孤独が染みる冷たい後宮で、王子は何を思い生きるのか?
お話に都合の良い、ユルユル設定のオメガバースです。
キンモクセイは夏の記憶とともに
広崎之斗
BL
弟みたいで好きだった年下αに、外堀を埋められてしまい意を決して番になるまでの物語。
小山悠人は大学入学を機に上京し、それから実家には帰っていなかった。
田舎故にΩであることに対する風当たりに我慢できなかったからだ。
そして10年の月日が流れたある日、年下で幼なじみの六條純一が突然悠人の前に現われる。
純一はずっと好きだったと告白し、10年越しの想いを伝える。
しかし純一はαであり、立派に仕事もしていて、なにより見た目だって良い。
「俺になんてもったいない!」
素直になれない年下Ωと、執着系年下αを取り巻く人達との、ハッピーエンドまでの物語。
性描写のある話は【※】をつけていきます。
夢見がちオメガ姫の理想のアルファ王子
葉薊【ハアザミ】
BL
四方木 聖(よもぎ ひじり)はちょっぴり夢見がちな乙女男子。
幼少の頃は父母のような理想の家庭を築くのが夢だったが、自分が理想のオメガから程遠いと知って断念する。
一方で、かつてはオメガだと信じて疑わなかった幼馴染の嘉瀬 冬治(かせ とうじ)は聖理想のアルファへと成長を遂げていた。
やがて冬治への恋心を自覚する聖だが、理想のオメガからは程遠い自分ではふさわしくないという思い込みに苛まれる。
※ちょっぴりサブカプあり。全てアルファ×オメガです。
この噛み痕は、無効。
ことわ子
BL
執着強めのαで高校一年生の茜トキ×αアレルギーのβで高校三年生の品野千秋
α、β、Ωの三つの性が存在する現代で、品野千秋(しなのちあき)は一番人口が多いとされる平凡なβで、これまた平凡な高校三年生として暮らしていた。
いや、正しくは"平凡に暮らしたい"高校生として、自らを『αアレルギー』と自称するほど日々αを憎みながら生活していた。
千秋がαアレルギーになったのは幼少期のトラウマが原因だった。その時から千秋はαに対し強い拒否反応を示すようになり、わざわざαのいない高校へ進学するなど、徹底してαを避け続けた。
そんなある日、千秋は体育の授業中に熱中症で倒れてしまう。保健室で目を覚ますと、そこには親友の向田翔(むこうだかける)ともう一人、初めて見る下級生の男がいた。
その男と、トラウマの原因となった人物の顔が重なり千秋は混乱するが、男は千秋の混乱をよそに急に距離を詰めてくる。
「やっと見つけた」
男は誰もが見惚れる顔でそう言った。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる