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11.ベッドで一人※

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 マントを外して丈の短い黒のタンクトップと革のズボンを脱ぎ、寝室の隣の浴室で熱いシャワーを浴びた。

 これまでは美しい肉体を隠すのが惜しく、上半身は裸にマントだけしか身につけていないのが常だった。しかし発情中のため全身が敏感で、乳首が以前よりもふっくらと腫れている気がして人に晒しておくのが気恥ずかしくなってしまったのだ。
 ぴっちりとしたショート丈のタンクトップなら逞しい胸の筋肉も見えるし、腹筋を隠してしまうこともない。

 シャワーを浴び終えると我はバスローブを羽織りタオルで髪を拭きながら寝室へ向かった。我慢できず歩きながらバスローブ越しの前に触れた。

「んっ……」

 まるで何度消しても消えない火のようにしつこく欲望がくすぶるそれを右手でムニムニと揉むと、あっという間にバキバキに硬くなった。
 今日は何度射精したかもわからないほど自慰行為ばかりしていたというのに。収まることのないこの底なしの性欲に軽い恐怖すら感じている。

「くそっ、リヒトめっ……」

 あやつのせいだ。アルファであった我がオメガになってしまったのも、我が狂ったように発情しているのも、全てあやつが悪いに違いない。

 心の底から憎い奴であるはずなのに、甘い響きのその名前を口にすると頭の中がとろけそうになって体の奥が切ない。

 わかっている。いくら肉棒を擦って快楽を得ても満足しないのは我の体が抱かれることを求めているからだ。刺激を欲しているのは後ろなのだ。

 バスローブの紐を解いて、丸裸になってベッドに寝そべった。素肌はシャワーを浴びたばかりでしっとりと火照っている。

 少し怖いが自分の双丘へ手を滑らせ、粘液を漏らしヒクつく蕾へ中指を押し当てた。

「っ……、ぁっ……、はぁっ……」

 そこはにゅるりと喜んで指先を咥えこんだ。

「ん……っ」

 ゆっくりと肉癖をまさぐってみる。期待に屹立がピクピクと震えた。
 しかし指では奴に突かれた体の奥までとても届かない。中途半端な刺激では肝心な場所が余計に疼いて虚しいだけだった。

 奴にされたように足を開き秘部を晒す屈辱的な格好をしてみると、それだけで体の奥が痺れるように熱くなり、ペニスがドクッと大きさを増した。

 目を瞑って想像してみる。奴の闇のように黒い髪と瞳、薄いけれど見た目以上に柔らかで弾力のある唇、肉ひだをこじ開け侵入した熱い肉棒の圧迫感、熱っぽい吐息と手の感触、猛りを抜き差しするリズム、それに憎らしいほど爽やかな匂い。それだけでもう気が狂いそうなほど感じてしまう。

「……っ、んくっ」

 後孔だけではなく胸の先もじくじくと熱を帯びている。
 大きく膨らんだ乳輪のふちを指先で撫でてみる。奴が触ったときのようにそこは驚くほど敏感だった。ビリビリとした刺激が乳首の先から体の芯へ駆け抜け、我はベッドの上で体をくねらせた。

「くっ……、ああっ!」

 肉棒を擦っていたもう片方の手も胸へ這わせ、両手で両胸の先を摘まんで扱いた。

 立てたヒザを擦り合わせて腰をうねりながら、だらしなく半開きの口の隅から唾液が垂れるのも構わず、こすこすと乳頭をつねったり潰したりしつこくいじめる。

「ぃっ……、んっ、くっ……!」
 こんなところを自分で触ってしまうなんて乳首が大きくなってしまったら嫌なのに。でもあまりに気持ちが良くて指を止めることが出来ない。

「いいっ……、すごくいいっ。ぁっ……い、いぐっ、いぐぅっ!」

 胸への刺激で快感がピークに達して体をこわばらせた。硬く反りかえりピクピク震えていたペニスの先からびゅるっと熱が噴き出した。

「……ぁっ、……はぁ」

 呼吸に合わせ大きく上下している引き締まった腹筋の上へ弧を描いて白濁が飛び散る。

「はあっ……、はぁっ……」

 鎖骨や頬にまでパタパタと青臭い精液の飛沫がかかった。
 そのまま天井を見つめて呼吸を整えた。

「……くそがっ」

 我は傍らにあった枕を壁に向かって投げつけた。

 悔しいが認めざるを得ない、我の体はリヒトとのセックスを忘れられずにいるのだ。あやつのせいでオメガになったし、病院で恥をかかされたし、死ぬほど憎い奴であるはずなのに。

 いまどこでどうしているのか、また会えるのか気になって、その夜はなかなか寝付けなかった。
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