上 下
6 / 50

6.リヒトの目的※

しおりを挟む
「殺す訳ないよ。……俺の目的はあんたが王家から奪った首飾りを奪還することだ。それ以外のことはしないよ」

「な、ならば、なぜこんな辱めをっ……」

「据え膳食わぬは何とやらって言うでしょ。俺、他人に対して本気で興奮したの初めてなんだよ」

 照れくさそうに微笑んだリヒトは、我のヒザを掴んで再び猛りを挿入した。

「あひいいいっ、ああっ……」

 さっきとは当たる角度が変わって新たな場所をえぐられ、我は奴を睨みながらも悲鳴を漏らした。
 ゆっくり根元まで挿入すると奴は動きを止めて、我の顔をニヤニヤと見ていた。

「その気の強そうなところもっ、きれいな顔もっ、男らしい体型も、大きい雄っぱいもすごくそそる……。前の世界じゃ男になんて、いや女にも……誰にも興味なかったのに」

 ぐちっ、ずちゅっ、と水音を上げ、ゆるゆると性器を出し入れし始めた。

「ああっ、ああっ」

 奴の律動に合わせてこらえきれずあられもない声が出てしまう。手で口を塞ごうとしたが両手とも奴に掴まれていて何も出来ない。

「んっ、……気持ちいいね、俺もすごくいいよ……」

 奴のモノがまたぴくんと脈打ち大きくなった。腰の動きは徐々に激しくなっていく。

「……き、貴様ぁっ、あっ」

 パンッ、パンッ、パンッ、と乾いた音が響き、そのたび我の尻にたぷたぷとした柔らかなものが当たる。奴の陰嚢だろう。

「ああっ、だめっ、もう、イキそうっ……」

 敏感な最奥をトントン突かれて、極まりつつある体が子種を絞り取ろうとキュウキュウ締め上げる。
 人間にイかされるなど不本意なのに、もう絶頂を避けることなど出来なかった。

「……っ、……ぁっ、……お、おのれぇっ……」

 我は全身を震わせて自分の胸板に温かな飛沫をビュクビュクと飛ばした。

 絶頂する我の顔を見ながら、

「んっ、ルシファー……」

 とうっとりと我の名を呼んで奴は肩を震わせた。美しい漆黒の瞳が甘く揺れている。
 同時に腹の奥が熱で満たされていくのを感じた。

 奴の太い腕にぎゅーっと抱きしめられて、熱い舌がレロレロと我の首筋を這った。
 噛まれるっ!

 本能的な恐怖を感じた我は渾身の力で奴の胸板を押した。

「……このっ、無礼者めがっ! 魔王である我の首を噛もうとはっ」

 奴の性器をずるりと引き抜いて身を離した。

 押さえを失った奴の体液がとろりとナカから溢れそうになり、

「ぁっ……」

 と鼻にかかった声を漏らしてしまったのが気恥ずかしい。

「くっ、……貴様、何者だっ!? ただの人間とは思えんっ!」

 たった一人で魔王城へ攻め込み、魔王である我を抱くなどどう考えても肝が据わりすぎている。
 魔王を前にしたら普通はもっと恐れおののくものだろう。

「んー? 普通の人間だよ。最初に言った通り異世界から来たけど。前の世界じゃニホンっていう国でホストっていう仕事をしていたんだ」

 リヒトはズボンを穿き直して、ベルトを整えた。

「……ニホン? ホスト?」

「ああそうか、海外にはホストクラブがないって客が言ってたっけ。えっとねぇ、ホストっていうのは酒場で働いてる人、的な?」

 奴はニコニコ笑みを浮かべながら首を傾げた。
 静かだった魔王城の中が騒がしくなってきた。手下たちが加勢しに来たのだろう。

「これ返してもらうけど。じゃあね」

 偽物とは疑いもせずテーブルの上に置かれた首飾りを持って奴は部屋から出て行った。手下たちがそれを追う音がした。

 我は短くなったマントを肩から外して丸裸の腰に巻き付け、隠し扉の中の本物の魔石の首飾りを手に取った。
 そして魔王の間の隠し階段をよろよろと上がって塔の上の自分の寝室へ向かった。

 窓に寄りかかって、来た時と同様にトラップを避けて帰って行くリヒトの姿を見えなくなるまでずっとそこから見ていた。

「返して、は我のセリフだというのに……」

 寿命の短い人間どもはすぐに歴史を忘れる。

 不毛の地である魔界から豊かさを求めて移住してきた魔族たちが穏やかに暮らしていたこの地に、人間どもが突然攻め込んできたのはほんの100年程前の話だ。

 我の父である先代の魔王サタンを殺し我々の領土を奪い、「サムガリア王国」と名乗って国を作った。
 この首飾りだってその時に人間どもが我らから奪って行った我ら魔族の宝である。それをどうして「返して」だなんて言えるのか。

 人間はいつだって魔族を悪、自分たちを正義だと一方的に決めつけている。

「フン、人間など大嫌いだっ」

しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

[完結]ひきこもり執事のオンオフスイッチ!あ、今それ押さないでくださいね!

小葉石
BL
   有能でも少しおバカなシェインは自分の城(ひきこもり先)をゲットするべく今日も全力で頑張ります!  応募した執事面接に即合格。  雇い主はこの国の第3王子ガラット。 人嫌いの曰く付き、長く続いた使用人もいないと言うが、今、目の前の主はニッコニコ。  あれ?聞いていたのと違わない?色々と違わない?  しかし!どんな主人であろうとも、シェインの望みを叶えるために、完璧な執事をこなして見せます!  勿論オフはキッチリいただきますね。あ、その際は絶対に呼ばないでください! *第9回BL小説大賞にエントリーしてみました。  

【完結】ワンコ系オメガの花嫁修行

古井重箱
BL
【あらすじ】アズリール(16)は、オメガ専用の花嫁学校に通うことになった。花嫁学校の教えは、「オメガはアルファに心を開くなかれ」「閨事では主導権を握るべし」といったもの。要するに、ツンデレがオメガの理想とされている。そんな折、アズリールは王太子レヴィウス(19)に恋をしてしまう。好きな人の前ではデレデレのワンコになり、好き好きオーラを放ってしまうアズリール。果たして、アズリールはツンデレオメガになれるのだろうか。そして王太子との恋の行方は——?【注記】インテリマッチョなアルファ王太子×ワンコ系オメガ。R18シーンには*をつけます。ムーンライトノベルズとアルファポリスに掲載中です。

運命の息吹

梅川 ノン
BL
ルシアは、国王とオメガの番の間に生まれるが、オメガのため王子とは認められず、密やかに育つ。 美しく育ったルシアは、父王亡きあと国王になった兄王の番になる。 兄王に溺愛されたルシアは、兄王の庇護のもと穏やかに暮らしていたが、運命のアルファと出会う。 ルシアの運命のアルファとは……。 西洋の中世を想定とした、オメガバースですが、かなりの独自視点、想定が入ります。あくまでも私独自の創作オメガバースと思ってください。楽しんでいただければ幸いです。

みなしご白虎が獣人異世界でしあわせになるまで

キザキ ケイ
BL
親を亡くしたアルビノの小さなトラは、異世界へ渡った────…… 気がつくと知らない場所にいた真っ白な子トラのタビトは、子ライオンのレグルスと出会い、彼が「獣人」であることを知る。 獣人はケモノとヒト両方の姿を持っていて、でも獣人は恐ろしい人間とは違うらしい。 故郷に帰りたいけれど、方法が分からず途方に暮れるタビトは、レグルスとふれあい、傷ついた心を癒やされながら共に成長していく。 しかし、珍しい見た目のタビトを狙うものが現れて────?

【完結】恋愛経験ゼロ、モテ要素もないので恋愛はあきらめていたオメガ男性が運命の番に出会う話

十海 碧
BL
桐生蓮、オメガ男性は桜華学園というオメガのみの中高一貫に通っていたので恋愛経験ゼロ。好きなのは男性なのだけど、周囲のオメガ美少女には勝てないのはわかってる。高校卒業して、漫画家になり自立しようと頑張っている。蓮の父、桐生柊里、ベータ男性はイケメン恋愛小説家として活躍している。母はいないが、何か理由があるらしい。蓮が20歳になったら母のことを教えてくれる約束になっている。 ある日、沢渡優斗というアルファ男性に出会い、お互い運命の番ということに気付く。しかし、優斗は既に伊集院美月という恋人がいた。美月はIQ200の天才で美人なアルファ女性、大手出版社である伊集社の跡取り娘。かなわない恋なのかとあきらめたが……ハッピーエンドになります。 失恋した美月も運命の番に出会って幸せになります。 蓮の母は誰なのか、20歳の誕生日に柊里が説明します。柊里の過去の話をします。 初めての小説です。オメガバース、運命の番が好きで作品を書きました。業界話は取材せず空想で書いておりますので、現実とは異なることが多いと思います。空想の世界の話と許して下さい。

【完結】僕の大事な魔王様

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
BL
母竜と眠っていた幼いドラゴンは、なぜか人間が住む都市へ召喚された。意味が分からず本能のままに隠れたが発見され、引きずり出されて兵士に殺されそうになる。 「お母さん、お父さん、助けて! 魔王様!!」 魔族の守護者であった魔王様がいない世界で、神様に縋る人間のように叫ぶ。必死の嘆願は幼ドラゴンの魔力を得て、遠くまで響いた。そう、隣接する別の世界から魔王を召喚するほどに……。 俺様魔王×いたいけな幼ドラゴン――成長するまで見守ると決めた魔王は、徐々に真剣な想いを抱くようになる。彼の想いは幼過ぎる竜に届くのか。ハッピーエンド確定 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/11……完結 2023/09/28……カクヨム、週間恋愛 57位 2023/09/23……エブリスタ、トレンドBL 5位 2023/09/23……小説家になろう、日間ファンタジー 39位 2023/09/21……連載開始

ふしだらオメガ王子の嫁入り

金剛@キット
BL
初恋の騎士の気を引くために、ふしだらなフリをして、嫁ぎ先が無くなったペルデルセ王子Ωは、10番目の側妃として、隣国へ嫁ぐコトが決まった。孤独が染みる冷たい後宮で、王子は何を思い生きるのか? お話に都合の良い、ユルユル設定のオメガバースです。

キンモクセイは夏の記憶とともに

広崎之斗
BL
弟みたいで好きだった年下αに、外堀を埋められてしまい意を決して番になるまでの物語。 小山悠人は大学入学を機に上京し、それから実家には帰っていなかった。 田舎故にΩであることに対する風当たりに我慢できなかったからだ。 そして10年の月日が流れたある日、年下で幼なじみの六條純一が突然悠人の前に現われる。 純一はずっと好きだったと告白し、10年越しの想いを伝える。 しかし純一はαであり、立派に仕事もしていて、なにより見た目だって良い。 「俺になんてもったいない!」 素直になれない年下Ωと、執着系年下αを取り巻く人達との、ハッピーエンドまでの物語。 性描写のある話は【※】をつけていきます。

処理中です...