47 / 57
第八章 彼の気持ち(蒼side)
47.リイさんのその後
しおりを挟む
「麗夜さん、……あのっ」
言葉を整理して麗夜さんに伝えようとしたとき、彼のスマホが鳴った。
「ちょっと、ごめんね……」
アラビアータを食べていたフォークを皿へ置いて、麗夜さんは僕の目の前に座ったまま電話に出た。
「はい、もしもし……。うん……。お、それはよかった。わかった、すぐ準備するから」
電話を切るとすぐにテーブルの空きスペースにノートパソコンを置いて開き、電源を入れた。
こんなときに仕事? 彼に取って仕事は大事なものだとわかっているけど、僕は今まさに真剣に麗夜さんへ自分の気持ちを伝えようとしていたのに……。
僕は少しだけモヤモヤしながらパソコンを操作している麗夜さんを見ていた。
「ほら、蒼、来て」
麗夜さんは僕を手招きした。
僕はおずおずと席を立ち、彼の隣に行って画面を見た。
ビデオ通話だろうか、読み込み中のマークが消えてパソコンの画面にある人物が映り込んだ。
「リイさんっ!?」
それは間違いなくつい先日まで隣人だったリイさんだった。
「蒼、無事で良かった。蒼のことずっと心配でした」
リイさんの背後にはずいぶんと豪華な装飾品と家族らしき人たちが映り込んでいた。彼の身なりも日本にいた頃よりずっといい。
「リイさんも無事なの!? 無事に国に帰れたんだね! よかった……。あれからアパートに変な人たちが来たんだよ、大丈夫だった?」
「ごめんなさい、蒼に本当のこと言っていませんでした。私の家は代々続く歴史ある料理店です。我が家の大事な秘伝のレシピ、盗まれました。売られて日本にあると知り、私は取り返しに日本へ行きました。海外の盗品を転売する業者から盗み返しました、だから私は追われていました。でももう大丈夫。奴らはここまで追ってきません、何も心配ありません」
リイさんはボロボロの書物を画面越しに僕に見せた。
料理の修行のために日本へ来ていると言っていたのはカモフラージュだったのか。
「日本へたった一人で行った私のことが心配で父は体調崩しました。でも秘伝のレシピ持ち帰ったら、この通り元気です」
隣にいるお父さんの頬はこけているけど、にこにこと笑っている。
「よかったね、リイさん……」
「そうだ、私の許婚、紹介しましょう」
リイさんは家族たちの一番後ろにいたきれいで優しそうな女性を呼んで僕へ見せた。
「結婚します。レシピ持ち帰ったらそうする約束でした。だから頑張れた」
リイさんは僕に満面の笑みを向けた。
よかった、本当に。彼が無事で。幸せそうで……。
「蒼、遠いけどいつか私のお店へ会いに来てください。いっぱいご馳走します」
「うん、そのうち必ず行くよ。リイさん、元気で」
「蒼も。お幸せに」
お幸せには結婚するリイさんでしょ、と思いながらも僕は嬉し涙をこらえながら、ビデオ通話を終えた。
言葉を整理して麗夜さんに伝えようとしたとき、彼のスマホが鳴った。
「ちょっと、ごめんね……」
アラビアータを食べていたフォークを皿へ置いて、麗夜さんは僕の目の前に座ったまま電話に出た。
「はい、もしもし……。うん……。お、それはよかった。わかった、すぐ準備するから」
電話を切るとすぐにテーブルの空きスペースにノートパソコンを置いて開き、電源を入れた。
こんなときに仕事? 彼に取って仕事は大事なものだとわかっているけど、僕は今まさに真剣に麗夜さんへ自分の気持ちを伝えようとしていたのに……。
僕は少しだけモヤモヤしながらパソコンを操作している麗夜さんを見ていた。
「ほら、蒼、来て」
麗夜さんは僕を手招きした。
僕はおずおずと席を立ち、彼の隣に行って画面を見た。
ビデオ通話だろうか、読み込み中のマークが消えてパソコンの画面にある人物が映り込んだ。
「リイさんっ!?」
それは間違いなくつい先日まで隣人だったリイさんだった。
「蒼、無事で良かった。蒼のことずっと心配でした」
リイさんの背後にはずいぶんと豪華な装飾品と家族らしき人たちが映り込んでいた。彼の身なりも日本にいた頃よりずっといい。
「リイさんも無事なの!? 無事に国に帰れたんだね! よかった……。あれからアパートに変な人たちが来たんだよ、大丈夫だった?」
「ごめんなさい、蒼に本当のこと言っていませんでした。私の家は代々続く歴史ある料理店です。我が家の大事な秘伝のレシピ、盗まれました。売られて日本にあると知り、私は取り返しに日本へ行きました。海外の盗品を転売する業者から盗み返しました、だから私は追われていました。でももう大丈夫。奴らはここまで追ってきません、何も心配ありません」
リイさんはボロボロの書物を画面越しに僕に見せた。
料理の修行のために日本へ来ていると言っていたのはカモフラージュだったのか。
「日本へたった一人で行った私のことが心配で父は体調崩しました。でも秘伝のレシピ持ち帰ったら、この通り元気です」
隣にいるお父さんの頬はこけているけど、にこにこと笑っている。
「よかったね、リイさん……」
「そうだ、私の許婚、紹介しましょう」
リイさんは家族たちの一番後ろにいたきれいで優しそうな女性を呼んで僕へ見せた。
「結婚します。レシピ持ち帰ったらそうする約束でした。だから頑張れた」
リイさんは僕に満面の笑みを向けた。
よかった、本当に。彼が無事で。幸せそうで……。
「蒼、遠いけどいつか私のお店へ会いに来てください。いっぱいご馳走します」
「うん、そのうち必ず行くよ。リイさん、元気で」
「蒼も。お幸せに」
お幸せには結婚するリイさんでしょ、と思いながらも僕は嬉し涙をこらえながら、ビデオ通話を終えた。
3
お気に入りに追加
235
あなたにおすすめの小説
お客様と商品
あかまロケ
BL
馬鹿で、不細工で、性格最悪…なオレが、衣食住提供と引き換えに体を売る相手は高校時代一度も面識の無かったエリートモテモテイケメン御曹司で。オレは商品で、相手はお客様。そう思って毎日せっせとお客様に尽くす涙ぐましい努力のオレの物語。(*ムーンライトノベルズ・pixivにも投稿してます。)
双葉病院小児病棟
moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。
病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。
この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。
すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。
メンタル面のケアも大事になってくる。
当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。
親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。
【集中して治療をして早く治す】
それがこの病院のモットーです。
※この物語はフィクションです。
実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。
【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集
あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。
こちらの短編集は
絶対支配な攻めが、
快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす
1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。
不定期更新ですが、
1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
書きかけの長編が止まってますが、
短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。
よろしくお願いします!
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
見ぃつけた。
茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは…
他サイトにも公開しています
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる