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第八章 彼の気持ち(蒼side)
43.津田くん
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「僕はリビングのソファーかなんなら床でも借りられれば十分です」
居候の立場ですから、と言ったのに、
「俺がこうして眠りたいんだ……」
麗夜さんは自分の寝室のベッドへ僕を連れて行き、柔らかなベッドの中で僕を大切そうに抱きしめた。
「無事で本当によかった……。蒼に何かあったらどうしようと思ったんだ」
電気を消した暗がりでそう呟いた。
麗夜さん匂いや体温に包まれて、僕はほっとしながら眠りについた。
思えば、何もされずに麗夜さんと一緒に眠るなんて初めてのことだった。
翌朝、麗夜さんのマンションから職場へ向かった。
「実は俺、蒼以外には全然反応しないんだよ」「俺にとって蒼は特別な人」「俺の恋人になって、この部屋で一緒に暮らしてほしい」
駅まで歩く道でも電車の中でも昨夜の彼の言葉を思い出していた。
これまでずっと僕は孤独と借金苦で辛かった。麗夜さんとずっと一緒にいられたらどんなにいいだろう。きっともうお金の心配もいらない。
あの時、すんなり指輪を受け取ればよかったのだろうか……。
大好きな麗夜さんが僕に告白してくれたのにすぐに返事をできなかったのは、自分に自信がないからだ。麗夜さんみたいな煌びやかな世界を生きる社長と地味で貧乏なダメ営業マンの僕なんかが釣り合うわけがないじゃないか。
それに自分だけが幸せになるのって気が引けてしまう。極貧生活を共にしたリイさんは無事に家族の元へ帰れただろうか……。彼を追ってアパートに侵入してきた人たちは何者なのだろう。
一気に色々なことが起こりすぎたせいで、僕の頭の中は整理がつかないでいた。。
営業二課のフロアに着くと、何やらみんながひそひそと話していた。
「何かあったのかな……?」
ぼそっと独り言をつぶやくと背後から声がした。
「いい気なもんだね、何かあったのかなじゃないよ、今日は四半期の営業成績発表の日じゃないか」
同期の津田くんもちょうど出勤してきたところだった。
「あ、津田くん。そっか、すっかり忘れてたよ、ふふ」
色々なことがありすぎて、それどころじゃなかったのだ。
津田くんはなんだか機嫌が悪いみたいで、僕をフンと鼻で笑った。
「のんきなこと言うなよ。一人の社長から気まぐれに気に入られて少しは契約取れたみたいだけど、調子に乗らない方がいいよ。そんなの君の実力じゃないんだから」
津田くんに言われてぎくりとした。
彼の言う通り、今期の僕の契約は全て麗夜さんがお膳立てしてくれたものだ。そう、僕は実力で契約を取れるようになったわけじゃないんだ……。
居候の立場ですから、と言ったのに、
「俺がこうして眠りたいんだ……」
麗夜さんは自分の寝室のベッドへ僕を連れて行き、柔らかなベッドの中で僕を大切そうに抱きしめた。
「無事で本当によかった……。蒼に何かあったらどうしようと思ったんだ」
電気を消した暗がりでそう呟いた。
麗夜さん匂いや体温に包まれて、僕はほっとしながら眠りについた。
思えば、何もされずに麗夜さんと一緒に眠るなんて初めてのことだった。
翌朝、麗夜さんのマンションから職場へ向かった。
「実は俺、蒼以外には全然反応しないんだよ」「俺にとって蒼は特別な人」「俺の恋人になって、この部屋で一緒に暮らしてほしい」
駅まで歩く道でも電車の中でも昨夜の彼の言葉を思い出していた。
これまでずっと僕は孤独と借金苦で辛かった。麗夜さんとずっと一緒にいられたらどんなにいいだろう。きっともうお金の心配もいらない。
あの時、すんなり指輪を受け取ればよかったのだろうか……。
大好きな麗夜さんが僕に告白してくれたのにすぐに返事をできなかったのは、自分に自信がないからだ。麗夜さんみたいな煌びやかな世界を生きる社長と地味で貧乏なダメ営業マンの僕なんかが釣り合うわけがないじゃないか。
それに自分だけが幸せになるのって気が引けてしまう。極貧生活を共にしたリイさんは無事に家族の元へ帰れただろうか……。彼を追ってアパートに侵入してきた人たちは何者なのだろう。
一気に色々なことが起こりすぎたせいで、僕の頭の中は整理がつかないでいた。。
営業二課のフロアに着くと、何やらみんながひそひそと話していた。
「何かあったのかな……?」
ぼそっと独り言をつぶやくと背後から声がした。
「いい気なもんだね、何かあったのかなじゃないよ、今日は四半期の営業成績発表の日じゃないか」
同期の津田くんもちょうど出勤してきたところだった。
「あ、津田くん。そっか、すっかり忘れてたよ、ふふ」
色々なことがありすぎて、それどころじゃなかったのだ。
津田くんはなんだか機嫌が悪いみたいで、僕をフンと鼻で笑った。
「のんきなこと言うなよ。一人の社長から気まぐれに気に入られて少しは契約取れたみたいだけど、調子に乗らない方がいいよ。そんなの君の実力じゃないんだから」
津田くんに言われてぎくりとした。
彼の言う通り、今期の僕の契約は全て麗夜さんがお膳立てしてくれたものだ。そう、僕は実力で契約を取れるようになったわけじゃないんだ……。
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