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第八章 彼の気持ち(蒼side)

42.君に本気……

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「蒼に出会う前の俺はどうしようもないほど遊んでいたんだ。思いっきり仕事をしていっぱい金を稼いで、そして派手にパーティーを開いたり風俗で豪遊したりすることが最高の楽しみだった」
 僕は津田くんに見せられた画像の情景が浮かんで胸がチクリと痛んだ。やっぱり生きる世界違う人なんだ……、と切なく思ったけど、麗夜さんは話を続けた。

「でもある日、いつものようにパーティーで知り合った好みのタイプの男の子をホテルへ連れ込んで抱こうと思ったとき、突然あそこが勃たなくなったんだ。……焦ったよ、それまで一度もそんなことなかったし、俺はまだ32だからね。酔っているから、疲れているからだと思いたかったけど、病院に行ったり民間療法も色々試したりしたけど結局治らなかったんだ……」
 誰の話をしているんだろう……、そう思いながら僕はきょとんと聞いていた。

「今だってそう、実は俺、蒼以外には全然反応しないんだよ」
「えっ……、うそ」
 そんなことってあるの? 僕は麗夜さんのことを今でも遊んでいる人だと思っていた。きっと僕のような存在が複数いるんだろうと。
 僕に客を紹介してくれたり金銭的に支えてくれたりするのはただの気まぐれかと思っていたのに……。
 
「俺は君に本気なんだ……。こんなにも誰かを好きになったのは初めてだよ。見た目に反して重いって引かれたくなくて今まで軽いノリを装っていたんだ……」
 麗夜さんはいつの間にか小さな四角い箱を手にしていた。よくドラマなんかで見る中に指輪が入っているようなやつだけど、まさか……。

「愛しているよ、蒼。俺の恋人になって、この部屋で一緒に暮らしてほしい」
 箱の中には同じデザインの指輪が2つ入っていた。
「蒼とペアリングをつけたくて、ホテルで蒼が寝ているときにこっそりサイズを測って作ってしまったんだ」

 僕みたいな人間が彼からこんなふうに告白されるなんて夢にも思っていなくて、僕は何も答えられずに固まってしまっていた。
 借金苦で貧乏だし、営業マンとしてダメダメなこの僕のどこに麗夜さんは魅力を感じているというのか……。

「はは、ずるいよね、蒼には行く場所がないっていうのに、こんなふうに言われたら嫌でも俺と付き合うしかないよね……。返事は今日じゃなくていいよ。俺にとって蒼は特別な人で、付き合いたいし今後の人生を共に生きたいって思っているから、よく考えて返事聞かせて」
 麗夜さんはいつになく真剣だった表情をふふと笑って歪めた。
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