【BL】新人ダメ営業マンはスパダリ社長に溺愛される【完結】

衣草 薫

文字の大きさ
上 下
41 / 57
第八章 彼の気持ち(蒼side)

41.麗夜さんの秘密

しおりを挟む
 僕は目からぽろっと涙がこぼれた。
「そんな優しくされたら僕、勘違いしちゃいます……」

 僕を本気で愛してくれるわけない人なのに、僕の方はいつの間にか麗夜さんのことが本気で好きになってしまっていた。
 だってこんなふうに僕がピンチの時に颯爽と現れて助けてくれるような人、他にいない。麗夜さんと一緒にいると楽しいし、ものすごく安心できる。両親を失ってから僕はずっと寂しかったのだ。
 だから遊ばれているだけ、麗夜さんからしたら面白い存在なんだと思うと胸が張り裂けそうなほど切ない。

「蒼……」
 麗夜さんは僕の涙を指先で払ってくれた。
 涙でにじんだ視界の向こうに麗夜さんが困ったように笑っている。そう、こんなふうに泣いたって困らせるだけだ、下手すれば捨てられちゃう……。そう思ったのに涙は止まらない。

 深夜の冷たい風が吹き抜けて、僕たちは身を震え上がらせた。
「俺のうちに来て。蒼に聞いてほしい話があるんだ……」
 彼に肩を抱かれて車の助手席に座った。

***

 豪華なタワーマンションの麗夜さんの自宅へ着いた。車の中でも駐車場から部屋まで移動する間も僕は黙って彼に着いて行った。
「恥ずかしい話をしてしまおうかな、本当は蒼には言わないでおきたかったんだけど……」
 彼は広いリビングにある、大きな棚の扉を開けた。

 中にはたくさんの太い筒状のものが並べられている。コップかタンブラー、花瓶かなと思うようなそれらをよく見ると、なんとなくいかがわしいアイテムなんじゃないかと気づいた。あからさまなデザインじゃないから単体で置かれていれば何かのインテリアかと思うようなものだけど、これだけ同じ形状のものが陳列されていると、そういうことに疎い僕でもこれはきっとオナホールなんじゃないかとわかる。
 未開封の品のパッケージに書かれている「リアルなアナルセックスの感触」の文字を見つけて、僕は頬がカアッと熱くなって目を逸らした。

「ふふ、俺の秘密のコレクションってわけじゃないからそんな顔しないで。これは全部うちの会社の製品なんだ」
 まあどっちでも同じか、と言いながら麗夜さんは筒の一つを手に取った。
「製品のサンプル、昔は家で使うのが楽しみだったんだけどね。実はここ最近のものはずっと未開封なんだ……」
 そう言って彼が手に取った製品は確かにパッケージに包まったままだった。

「どうして……?」
「実は俺、蒼と出会う少し前にEDになっちゃったんだ」
「ED?」
 EDって勃起不全ってこと? そんなはずはない、麗夜さんは最初に会った日もバキバキに勃起した大きな性器で僕のことを犯したじゃないか。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

年下くんに堕とされて。

bara
BL
イケメン後輩に堕とされるお話。 3話で本編完結です

モブなのに執着系ヤンデレ美形の友達にいつの間にか、なってしまっていた

マルン円
BL
執着系ヤンデレ美形×鈍感平凡主人公。全4話のサクッと読めるBL短編です(タイトルを変えました)。 主人公は妹がしていた乙女ゲームの世界に転生し、今はロニーとして地味な高校生活を送っている。内気なロニーが気軽に学校で話せる友達は同級生のエドだけで、ロニーとエドはいっしょにいることが多かった。 しかし、ロニーはある日、髪をばっさり切ってイメチェンしたエドを見て、エドがヒロインに執着しまくるメインキャラの一人だったことを思い出す。 平凡な生活を送りたいロニーは、これからヒロインのことを好きになるであろうエドとは距離を置こうと決意する。 タイトルを変えました。 前のタイトルは、「モブなのに、いつのまにかヒロインに執着しまくるキャラの友達になってしまっていた」です。 急に変えてしまい、すみません。  

幸せの温度

本郷アキ
BL
※ラブ度高めです。直接的な表現もありますので、苦手な方はご注意ください。 まだ産まれたばかりの葉月を置いて、両親は天国の門を叩いた。 俺がしっかりしなきゃ──そう思っていた兄、睦月《むつき》17歳の前に表れたのは、両親の親友だという浅黄陽《あさぎよう》33歳。 陽は本当の家族のように接してくれるけれど、血の繋がりのない偽物の家族は終わりにしなければならない、だってずっと家族じゃいられないでしょ? そんなのただの言い訳。 俺にあんまり触らないで。 俺の気持ちに気付かないで。 ……陽の手で触れられるとおかしくなってしまうから。 俺のこと好きでもないのに、どうしてあんなことをしたの? 少しずつ育っていった恋心は、告白前に失恋決定。 家事に育児に翻弄されながら、少しずつ家族の形が出来上がっていく。 そんな中、睦月をストーキングする男が現れて──!?

お酒に酔って、うっかり幼馴染に告白したら

夏芽玉
BL
タイトルそのまんまのお話です。 テーマは『二行で結合』。三行目からずっとインしてます。 Twitterのお題で『お酒に酔ってうっかり告白しちゃった片想いくんの小説を書いて下さい』と出たので、勢いで書きました。 執着攻め(19大学生)×鈍感受け(20大学生)

仕事ができる子は騎乗位も上手い

冲令子
BL
うっかりマッチングしてしまった会社の先輩後輩が、付き合うまでの話です。 後輩×先輩。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

鬼の愛人

のらねことすていぬ
BL
ヤクザの組長の息子である俺は、ずっと護衛かつ教育係だった逆原に恋をしていた。だが男である俺に彼は見向きもしようとしない。しかも彼は近々出世して教育係から外れてしまうらしい。叶わない恋心に苦しくなった俺は、ある日計画を企てて……。ヤクザ若頭×跡取り

激重感情の矢印は俺

NANiMO
BL
幼馴染みに好きな人がいると聞いて10年。 まさかその相手が自分だなんて思うはずなく。 ___ 短編BL練習作品

処理中です...