上 下
39 / 57
第七章 見知らぬ美青年(麗夜side)

39.俺は蒼を本気で愛しているんだ

しおりを挟む
 確かにそうだ。蒼にお金を渡す代わりに製品テスターの仕事を持ちかけたという点ではちはるのしていることと大差ないかもしれない。
 重いと思われるのが怖くて俺は蒼にこの気持ちを打ち明けていないから、蒼からすれば身を売っているのと何も変わらないだろう。でも蒼のしていることはただの枕営業じゃない……。

「一緒にしないでくれ、……俺は蒼を本気で愛しているんだ」

 ちはるは目を見開いた。
「はあ? 遊び人で手が早いって有名なあんたが、どうしてあのぬぼっとした野々原を本気で好きだなんて言うんだよっ……」
「俺はもう遊び人じゃないんだ。どうしてなんて言葉じゃ説明できないが、俺はどうしようもないくらい蒼に惹かれてしまっているだ」
 自分でもびっくりだ。派手好きで遊び好きだった俺が、たった一人の人間にここまで執着してしまっていることに。

 ちはるは俺の発言を聞いて面白くなさそうにムッと口をへの字にしていたが、しばらくしてニヤニヤと笑いだした。
「……何がおかしい?」
「あーあ、かわいそう。いやね、今頃、野々原はどうなっちゃったかなって思って……」
「どうなったって……。お前、蒼に何かしたのかっ!?」

 俺はちはるの肩を掴んで問いただした。
「ムカつくから始末したくってね、でも僕は自分の手は汚したくないタイプだから。闇バイトを雇って野々原を襲わせてもいずれ僕が疑われるかもしれない。だから慎重に、探偵を雇って色々調べさせたんだ。そしたらあいつの住んでるボロアパートの隣人の李っていう男は違法就労者な上に、色々やらかして追われている身みたいだから、そいつを探している奴らに居場所を教えてやったんだ。相手は手段を選ばないような裏社会の人間だから、隣に住んでる野々原も巻き込まれてひどい目に遭ってるんじゃないんじゃないかな?」
「なんだとっ……」

 ちはるは楽しそうに言った。
「あの廃墟みたいなアパートごと、ドカーンと爆破されている頃かもね」

 俺はいてもたっていられなくなり、荷物を持ってホテルを出た。通りへ出て辺りを見回すとそこは俺の見慣れた景色だった。
 ホテルには意識がない状態で連れてこられていたのでどこかと思っていたが、ヤナイという男と飲んでいたバーのそばだった。ここなら割と自宅も近い。

 閑散とした真夜中の道を走っているうちに睡眠薬か何かを飲まされてボーっとしていた頭はすっきりと覚めた。駅前の道でタクシーを呼び止めて自宅へ帰った。元々酒は飲んでいなかったから、自宅マンションの駐車場から車を出して乗り込んだ。
 無事を願いながら蒼のアパートへ車を走らせた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

僕を拾ってくれたのはイケメン社長さんでした

なの
BL
社長になって1年、父の葬儀でその少年に出会った。 「あんたのせいよ。あんたさえいなかったら、あの人は死なずに済んだのに…」 高校にも通わせてもらえず、実母の恋人にいいように身体を弄ばれていたことを知った。 そんな理不尽なことがあっていいのか、人は誰でも幸せになる権利があるのに… その少年は昔、誰よりも可愛がってた犬に似ていた。 ついその犬を思い出してしまい、その少年を幸せにしたいと思うようになった。 かわいそうな人生を送ってきた少年とイケメン社長が出会い、恋に落ちるまで… ハッピーエンドです。 R18の場面には※をつけます。

くまさんのマッサージ♡

はやしかわともえ
BL
ほのぼの日常。ちょっとえっちめ。 2024.03.06 閲覧、お気に入りありがとうございます。 m(_ _)m もう一本書く予定です。時間が掛かりそうなのでお気に入りして頂けると便利かと思います。よろしくお願い致します。 2024.03.10 完結しました!読んで頂きありがとうございます。m(_ _)m 今月25日(3/25)のピクトスクエア様のwebイベントにてこの作品のスピンオフを頒布致します。詳細はまたお知らせ致します。 2024.03.19 https://pictsquare.net/skaojqhx7lcbwqxp8i5ul7eqkorx4foy イベントページになります。 25日0時より開始です! ※補足 サークルスペースが確定いたしました。 一次創作2: え5 にて出展させていただいてます! 2024.10.28 11/1から開催されるwebイベントにて、新作スピンオフを書いています。改めてお知らせいたします。 2024.11.01 https://pictsquare.net/4g1gw20b5ptpi85w5fmm3rsw729ifyn2 本日22時より、イベントが開催されます。 よろしければ遊びに来てください。

貧乏大学生がエリート商社マンに叶わぬ恋をしていたら、玉砕どころか溺愛された話

タタミ
BL
貧乏苦学生の巡は、同じシェアハウスに住むエリート商社マンの千明に片想いをしている。 叶わぬ恋だと思っていたが、千明にデートに誘われたことで、関係性が一変して……? エリート商社マンに溺愛される初心な大学生の物語。

家の中で空気扱いされて、メンタルボロボロな男の子

こじらせた処女
BL
学歴主義の家庭で育った周音(あまね)は、両親の期待に応えられず、受験に失敗してしまう。試験そのものがトラウマになってしまった周音の成績は右肩下がりに落ちていき、いつしか両親は彼を居ないものとして扱う様になる。  そんな彼とは裏腹に、弟の亜季は優秀で、両親はますます周音への態度が冷たくなっていき、彼は家に居るのが辛くなり、毎週末、いとこの慶の家にご飯を食べに行く様になる。  慶の家に行くことがストレスの捌け口になっていた周音であるが、どんどん精神的に参ってしまい、夜尿をしてしまうほどに追い詰められてしまう。ストレス発散のために慶の財布からお金を盗むようになるが、それもバレてしまい…?

手作りが食べられない男の子の話

こじらせた処女
BL
昔料理に媚薬を仕込まれ犯された経験から、コンビニ弁当などの封のしてあるご飯しか食べられなくなった高校生の話

えっちな美形男子〇校生が出会い系ではじめてあった男の人に疑似孕ませっくすされて雌墜ちしてしまう回

朝井染両
BL
タイトルのままです。 男子高校生(16)が欲望のまま大学生と偽り、出会い系に登録してそのまま疑似孕ませっくるする話です。 続き御座います。 『ぞくぞく!えっち祭り』という短編集の二番目に載せてありますので、よろしければそちらもどうぞ。 本作はガバガバスター制度をとっております。別作品と同じ名前の登場人物がおりますが、別人としてお楽しみ下さい。 前回は様々な人に読んで頂けて驚きました。稚拙な文ではありますが、感想、次のシチュのリクエストなど頂けると嬉しいです。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

こっそりバウムクーヘンエンド小説を投稿したら相手に見つかって押し倒されてた件

神崎 ルナ
BL
バウムクーヘンエンド――片想いの相手の結婚式に招待されて引き出物のバウムクーヘンを手に失恋に浸るという、所謂アンハッピーエンド。 僕の幼なじみは天然が入ったぽんやりしたタイプでずっと目が離せなかった。 だけどその笑顔を見ていると自然と僕も口角が上がり。 子供の頃に勢いに任せて『光くん、好きっ!!』と言ってしまったのは黒歴史だが、そのすぐ後に白詰草の指輪を持って来て『うん、およめさんになってね』と来たのは反則だろう。   ぽやぽやした光のことだから、きっとよく意味が分かってなかったに違いない。 指輪も、僕の左手の中指に収めていたし。 あれから10年近く。 ずっと仲が良い幼なじみの範疇に留まる僕たちの関係は決して崩してはならない。 だけど想いを隠すのは苦しくて――。 こっそりとある小説サイトに想いを吐露してそれで何とか未練を断ち切ろうと思った。 なのにどうして――。 『ねぇ、この小説って海斗が書いたんだよね?』 えっ!?どうしてバレたっ!?というより何故この僕が押し倒されてるんだっ!?(※注 サブ垢にて公開済みの『バウムクーヘンエンド』をご覧になるとより一層楽しめるかもしれません)

処理中です...