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第六章 お金のための関係 (蒼side)
29.忙しい彼
しおりを挟む ふかふかな布団の中で僕は目を覚ました。
間接照明の柔らかな光とアロマの香りがするおしゃれな空間。自宅のボロアパートとはあまりに違って、一瞬ここはどこかと思ったが、そういえば麗夜さんの部屋に来ていたんだと思い出した。
よく寝てすっきりした。相変わらず自力で契約が取れない僕は外回りで歩き回って、帰社すれば雑用を押しつけられて残業続きで、寝不足だったのだ。
ベッドの隣の空間に彼の姿はなかった。休日だとは言っていたけど、忙しい人だからまた仕事に戻ったのかもしれない。僕に客を紹介してくれているときや、テスターの仕事で会っているときも彼はたびたび電話で呼び出されていた。社長さんって本当に大変なんだ。
ベッドの隣に彼がいて僕を抱きしめてくれていたらいいのに、なんて少しでも思うのは図々しい話だ。
そもそも麗夜さんは営業マンとしてダメダメで借金の返済に追われている僕に同情して、知り合いを客として紹介してくれたり、自社製品のテスターの仕事を一回5万円で雇ったりしてくれているのだから。
当たり前だけど恋人でも何でもないんだ。勘違いしちゃいけない、と僕は首をフルフル振った。
はあ……とため息をつくと、ぐーっとお腹が鳴った。
そう言えば僕はお昼ご飯を作る約束で今日ここへ来たんだった……。炊けたはずのご飯と作っておいたきんぴらごぼう、他にもおかずを作るつもりだった。
そうだ、麗夜さんが帰って来たら食べられるようにして置いてあげよう……。
そう思って僕は服を着てリビングへ向かった。
「おはよう、目が覚めた?」
麗夜さんはキッチンのコンロの前にいた。香ばしい揚げ物の香りがしている。
「麗夜さん、仕事に行ったんじゃなかったんですね?」
「え? ふふ。今日は大事な用がある日だって秘書の都築に言っておいたから、呼び出されないよ」
僕が麗夜さんの家に来ることが、大事な用事だなんて……。
「お腹すいたでしょ? せっかくだから色々作っておいたんだ。一緒に食べよう?」
彼は鶏の唐揚げがこんもりと乗った皿を僕に見せた。
「え、麗夜さんが作ったんですか!? 確か料理はしないって……」
調理器具や家電も新品のものばかりだったのに。
「自分の会社を持ってからは時間がないから料理はしないって決めていただけで、元々料理は大好きなんだよ。だから蒼と一緒に料理したくってね」
住む世界が違う人だけど、麗夜さんにはすごく親近感が湧く。
炊いたご飯も今風のふっくらと結んだおにぎりにしてお皿に乗っていた。
「手伝いますっ」
僕はお椀に彼が作っておいてくれた豚汁をよそった。
食べて見ると、麗夜さんが作った鶏の唐揚げもひじきとレンコンと豆のサラダも、豚汁もとても美味しかった。
「美味しいです、この明太子おにぎりも」
「ふふ、よかった」
彼は僕が作ったきんぴらごぼうをとても褒めてくれた。
間接照明の柔らかな光とアロマの香りがするおしゃれな空間。自宅のボロアパートとはあまりに違って、一瞬ここはどこかと思ったが、そういえば麗夜さんの部屋に来ていたんだと思い出した。
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ベッドの隣に彼がいて僕を抱きしめてくれていたらいいのに、なんて少しでも思うのは図々しい話だ。
そもそも麗夜さんは営業マンとしてダメダメで借金の返済に追われている僕に同情して、知り合いを客として紹介してくれたり、自社製品のテスターの仕事を一回5万円で雇ったりしてくれているのだから。
当たり前だけど恋人でも何でもないんだ。勘違いしちゃいけない、と僕は首をフルフル振った。
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そう言えば僕はお昼ご飯を作る約束で今日ここへ来たんだった……。炊けたはずのご飯と作っておいたきんぴらごぼう、他にもおかずを作るつもりだった。
そうだ、麗夜さんが帰って来たら食べられるようにして置いてあげよう……。
そう思って僕は服を着てリビングへ向かった。
「おはよう、目が覚めた?」
麗夜さんはキッチンのコンロの前にいた。香ばしい揚げ物の香りがしている。
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僕が麗夜さんの家に来ることが、大事な用事だなんて……。
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「え、麗夜さんが作ったんですか!? 確か料理はしないって……」
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「手伝いますっ」
僕はお椀に彼が作っておいてくれた豚汁をよそった。
食べて見ると、麗夜さんが作った鶏の唐揚げもひじきとレンコンと豆のサラダも、豚汁もとても美味しかった。
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