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第十三章 真相(朋美side)

67.手紙の送り主

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 蓮くんが仕事から帰ってくると、私はあの手紙と写真を蓮くんに見せた。
「……な、なんですか、これは……!? 社長はサロンの店長である野村みわと浮気しています。このあと二人はホテルへ向かいました……ってそんなことあるわけないです」
 彼はひどく驚いていた。
「これだって、野村さんが妊娠していて体調が悪いから、車で自宅まで送るところの写真ですよ……」
 産婦人科で会った野村みわさんが言っていたのと同じことを蓮くんも口にした。

「一体誰がこんな手紙を……。これって今日届いたんですか?」
「ううん、だいぶ前よ。私が切迫早産で入院する少し前……」
 彼はハッとして、私の顔を見つめた。私の切迫早産の原因が、この手紙が届いたことによって生じた浮気疑惑によるストレスだったと気付いたのだろう。
 今ならわかる、この手紙が届いた直後の自分のストレスがどれほどキツいものだったか。

 どうしてもっと早く相談してくれなかったのかと彼は言いたいのをこらえている様子だった。店長が妊娠しているから代わりに仕事に出なければならなくなったということを私に言っていなかったことを後ろめたく思っているのだろう。
「すみません、正直に話しておけばよかったですね。……いつだったか朋美さんが、蓮くんはみんなに優しいって言っていたので、僕は朋美さん以外に優しくするのを後ろめたく感じるようになってしまって……、朋美さんは僕にとって特別ですから……」
「……わかっているわ」
 妊娠、出産を通じて彼がどれほど私のことを大事に思ってくれているのか、私だってよくわかったのだ。

「私、ずっとこの手紙が野村みわさんから送られたんじゃないかって思っていて……。だからなんとなく勝ち目はないんじゃないかと思っていたんだけど、今日たまたま産婦人科でみわさんが声をかけてきてくれて、とてもこんな手紙と写真を送ってくるような人じゃないってわかったから……」
「ええ。彼女はそんな人ではないですよ。……むしろこの手紙の送り主は他に心当たりがあります……」


 数日後、私はうちへ遊びに来ていた両親に娘を見ていてもらって、みわさんが店長を務める新店舗のサロンへ出かけて行った。
 さっき蓮くんから電話があって、
「真相を見せるから新店舗のサロンの事務室まで来てほしい」
 と言われたのだ。

 受付のスタッフに「主人に呼ばれてきた」と事情を話し、通された事務室には蓮くんとみわさんがいた。私は蓮くんに持ってくるように頼まれていた“あるもの”を蓮くんに渡した。
 そしてみわさんと「先日はどうも」と挨拶を交わし談笑していると、「瀬戸」という名札をつけた女性スタッフが部屋に入って来た。

「初めまして、小宮の妻の朋美です」
 私が瀬戸さんに挨拶すると彼女は眉をひそめてそっぽを向いた。
 どうしたのかしら、と思っていると、蓮くんがあの手紙と写真を瀬戸さんに見せた。

「うちにこれを送ったのって、瀬戸さんですよね……?」
 彼女はぎょっとした顔をしながらも、
「な、なにそれ? 知らないわ……そんな手紙、初めて見た」
 と言いながら目を泳がせた。

「何だか知らないけど、いきなり人を犯人呼ばわりして、いくら社長だからって許されることじゃないわ。そんなのパワハラだし、名誉棄損よ。証拠もないくせにっ!」
 瀬戸さんは苛立っていて、私たち三人をすごい剣幕で睨みつけてきた。
「証拠ならあります。本人はわからないでしょうけど、この手紙から、瀬戸さんがいつもつけている香水の匂いがするんです」
 彼女はハッとした顔をした。
「……で、でも、……そ、それだけのことじゃ証拠にならないわ!」
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