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第十二章 臨月から出産(蓮side)
65.祖父の病状
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予定日より数日早く陣痛らしき痛みがあると言い出した朋美さんを僕は車に乗せて病院まで連れて行った。
彼女はめちゃくちゃ苦しんでいたし、僕も出産に立ち会うなんて人生で初めてのことだったから必死でよく覚えていないけど、妊娠後期から僕がよく会陰マッサージをしていた成果か、切開せずに出産できたらしかった。
生まれたての赤ちゃんはサルみたいで、本音を言うと全然可愛いと思えなかった。
でも命をかけて出産して疲れ果てた朋美さんが赤ちゃんを大事そうに抱きしめて幸せそうに涙していたので、僕も感動して一緒に泣いた。
朋美さんの両親が病院に駆けつけて、生まれたばかりの赤ちゃんを見に来た。
「朋美さんの体調が回復してからでいいんですけど、僕の祖父母にも赤ちゃんに会わせてあげたいと思っていて……」
「もちろんよ。ちゃんとおもてなしできないけど、それでよかったらいつでも」
産後で動くのもキツい状況の中、誰かと会うのは負担であるはずなのに、彼女は快諾してくれた。
退院してすぐに僕は祖父母を自宅へ招いた。
「可愛いわね、この子は美人になるわねぇ……」
「女の子はお父さんに似るって言うと本当だな、目元が蓮にそっくりだ……」
祖父はすっかり痩せてガリガリ……なんてこともなく、むしろ最近になって肉付きがよくなったようだった。
「じいちゃん、治療の方は順調なの?」
余命3年だというから深刻な状態なのだろうと思って今まで聞かずにいたけど、ひ孫を見せる約束を果たせたし、何より心配だったので僕は初めて祖父に病状を尋ねた。
「んー? 治療と言うと、この前手術した白内障のことかの? それならよーく見えるようになったのぉ」
祖父は首を傾げた。
「違うよ、……この際だから言うけど、じいちゃんは癌だって聞いて……」
「ああ、大腸癌のことか。手術で悪い部分はみんな取ってもらって、それから再発もなく、もうすっかり……」
「えっ……、だって余命3年って……」
「……余命3年? ……わしが?」
とぼけてごまかしているというより、本当に何のことかわからないという様子だった。
「違うの!?」
「……はて、なんのことだか?」
どういうことだと祖母を見るが、祖母は朋美さんと楽しそうに娘をあやしていた。
「僕の結婚式の数日前に、なるだけ3年以内にひ孫の顔が見たいって、じいちゃん言ったじゃん……、だから僕は……」
「わしも歳だからのぉ。いつぽっくりいってもおかしくないから、なるだけ早くひ孫に会いたかったのは本心じゃ」
なんだ……そういうことか……。
大好きな祖父が余命わずかというわけではないとわかって、僕は肩の荷が一気に降りた。
僕にとって、子供を急いだのが無駄な努力かと言うとそうでもないし。
元々は大好きな朋美さんを子供に取られてしまいそうで、僕は子供を持つのはずっと先でいいと考えていたけど、余命短い祖父の希望を叶えようと僕は妊活に必死になって、結局僕は妊娠と出産を通じて朋美さんとの絆が深まり一層幸せになった。
妊娠初期はいつも穏やかで優しい彼女もイライラしていることがあって大変な部分もあったけど、それでもそんな彼女の姿は夫である僕だけが見られる特権のようなものだから僕としてはそれすら嬉しかったのだ。
退院したばかりで体調もまだ悪いだろうに、朋美さんは今、休み暇もないほど、ほぼ24時間つきっきりで赤ちゃんの面倒を見ている。
赤ちゃんと母親の間には父親の僕なんかに入る隙がないだろうと思っていたけど、朋美さんはおむつ交換もミルクの準備も洗濯もなんでもやる僕を頼りにしてくれて、僕は幸せだ。
彼女はめちゃくちゃ苦しんでいたし、僕も出産に立ち会うなんて人生で初めてのことだったから必死でよく覚えていないけど、妊娠後期から僕がよく会陰マッサージをしていた成果か、切開せずに出産できたらしかった。
生まれたての赤ちゃんはサルみたいで、本音を言うと全然可愛いと思えなかった。
でも命をかけて出産して疲れ果てた朋美さんが赤ちゃんを大事そうに抱きしめて幸せそうに涙していたので、僕も感動して一緒に泣いた。
朋美さんの両親が病院に駆けつけて、生まれたばかりの赤ちゃんを見に来た。
「朋美さんの体調が回復してからでいいんですけど、僕の祖父母にも赤ちゃんに会わせてあげたいと思っていて……」
「もちろんよ。ちゃんとおもてなしできないけど、それでよかったらいつでも」
産後で動くのもキツい状況の中、誰かと会うのは負担であるはずなのに、彼女は快諾してくれた。
退院してすぐに僕は祖父母を自宅へ招いた。
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祖父はすっかり痩せてガリガリ……なんてこともなく、むしろ最近になって肉付きがよくなったようだった。
「じいちゃん、治療の方は順調なの?」
余命3年だというから深刻な状態なのだろうと思って今まで聞かずにいたけど、ひ孫を見せる約束を果たせたし、何より心配だったので僕は初めて祖父に病状を尋ねた。
「んー? 治療と言うと、この前手術した白内障のことかの? それならよーく見えるようになったのぉ」
祖父は首を傾げた。
「違うよ、……この際だから言うけど、じいちゃんは癌だって聞いて……」
「ああ、大腸癌のことか。手術で悪い部分はみんな取ってもらって、それから再発もなく、もうすっかり……」
「えっ……、だって余命3年って……」
「……余命3年? ……わしが?」
とぼけてごまかしているというより、本当に何のことかわからないという様子だった。
「違うの!?」
「……はて、なんのことだか?」
どういうことだと祖母を見るが、祖母は朋美さんと楽しそうに娘をあやしていた。
「僕の結婚式の数日前に、なるだけ3年以内にひ孫の顔が見たいって、じいちゃん言ったじゃん……、だから僕は……」
「わしも歳だからのぉ。いつぽっくりいってもおかしくないから、なるだけ早くひ孫に会いたかったのは本心じゃ」
なんだ……そういうことか……。
大好きな祖父が余命わずかというわけではないとわかって、僕は肩の荷が一気に降りた。
僕にとって、子供を急いだのが無駄な努力かと言うとそうでもないし。
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退院したばかりで体調もまだ悪いだろうに、朋美さんは今、休み暇もないほど、ほぼ24時間つきっきりで赤ちゃんの面倒を見ている。
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