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第十一章 マタニティライフ(朋美side)
61.突然の破水
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数日後、加奈子からかかってきた電話で私は心のうちを彼女に話した。
「もし離婚することになったとしたら、手に職のない私はどうやって生きていけばいいんだろう。SNSの料理インフルエンサーの仕事だけじゃ、とてもでも子供を一人で育てることなんて出来ないよ……」
「え、もう離婚のこと考え始めてるの? ってことは、蓮くんが浮気の事実を認めたわけね?」
「ううん、そうじゃないの。結局、彼には送られてきたあの手紙も写真も見せられなくて……」
彼がどんな反応をするのか考えると怖くて仕方がない。
私はここのところ眠れないか眠れたとしても悪夢を見てうなされてしまうことが多かった。
するといつも蓮くんが夜中だというのに「朋美さん、大丈夫ですか……」と優しく私を起こして、額に滲んだ汗を拭いてくれるのだけど。
「あれからネットで色々調べたんだけど、そしたらやっぱり浮気してるっぽいかなって思えてきちゃって……」
「例えば?」
以前に増して優しくなったとか、体を鍛えているとか、急にでかけるようになったとか……と加奈子に説明した。
「それだけで浮気してるかはわからないじゃない。物的な証拠があったら絶対写真撮っといた方がいいけどね」
「今のところそう言うのは何一つ出て来てなくて……」
「朋美、大丈夫? なんかナーバスになりすぎてない? ちょっとあんたらしくないわ」
私だって自分で気にしすぎだってわかってる。でも、不安でたまらないんだ。蓮くんの浮気が本当なら、私だけじゃなくお腹の子供にまで苦労させることになるから……。
「だって……私が妊娠中って知った上で、みわさんが宣戦布告しているのなら、もう私には勝ち目なんてないんじゃないかと思って……」
「まだそのみわって人が送り主とはわからないじゃない」
加奈子の声に賛同するようにお腹の中で赤ちゃんがドンッと私のお腹を強く蹴った。
「……いたっ」
まるで頼りない私にしっかりしろと喝を入れているみたいだった。
「ん? 朋美、どうしたの?」
「お腹の中で赤ちゃんが暴れてて。最近、本当に強い力で蹴飛ばしてくるの」
「ふふ、その不倫の件は本当かわからないし、そうだとしてものちのちどうにでもなるから、今は赤ちゃんのことに集中した方がいいわ。赤ちゃんも私もいつだって朋美の味方だから」
「ありがとう、加奈子」
私のような平凡な人間が、蓮くんみたいな優しくてイケメンで仕事のできる完璧な男の子と結婚したのが間違いだったのかな。
流れで彼と同棲してプロポーズされて浮かれて、こんなとんとん拍子に全てがうまくいくなんてそもそも出来すぎた話じゃないか。ちょっと前まで男性恐怖症で彼氏もできない冴えないOLだった私が……。
「ああ、だめ……」
あの手紙が来てから私はこんなことばっかり考えている……。
家に閉じこもっているとネガティブなことばかり考えてしまうので、私は近所を散歩した。安産のためにもウォーキングはいいらしいし、最近お腹が張って苦しいのも少し運動すると軽減するのでいいことずくめと思っていたのに……。
この日は会ったこともないみわさんの事をぐるぐると考えていたせいか、ずいぶん長く歩いてしまった。それがよくなかったのか、マンションのエレベーターを降り、もうすぐ自宅だというときに、何だかお腹が痛みだした。
歩きすぎたみたい……、ちょっとベッドで横になろう……。帰宅して靴を脱ごうと玄関へ座ったとき、体の奥からじわっと何かが溢れる感覚がした。
……うそ、破水? 予定日までまだあるのに!?
すぐにかかりつけの病院に電話して、私はマンションへタクシーを呼んで一人で乗った。
「もし離婚することになったとしたら、手に職のない私はどうやって生きていけばいいんだろう。SNSの料理インフルエンサーの仕事だけじゃ、とてもでも子供を一人で育てることなんて出来ないよ……」
「え、もう離婚のこと考え始めてるの? ってことは、蓮くんが浮気の事実を認めたわけね?」
「ううん、そうじゃないの。結局、彼には送られてきたあの手紙も写真も見せられなくて……」
彼がどんな反応をするのか考えると怖くて仕方がない。
私はここのところ眠れないか眠れたとしても悪夢を見てうなされてしまうことが多かった。
するといつも蓮くんが夜中だというのに「朋美さん、大丈夫ですか……」と優しく私を起こして、額に滲んだ汗を拭いてくれるのだけど。
「あれからネットで色々調べたんだけど、そしたらやっぱり浮気してるっぽいかなって思えてきちゃって……」
「例えば?」
以前に増して優しくなったとか、体を鍛えているとか、急にでかけるようになったとか……と加奈子に説明した。
「それだけで浮気してるかはわからないじゃない。物的な証拠があったら絶対写真撮っといた方がいいけどね」
「今のところそう言うのは何一つ出て来てなくて……」
「朋美、大丈夫? なんかナーバスになりすぎてない? ちょっとあんたらしくないわ」
私だって自分で気にしすぎだってわかってる。でも、不安でたまらないんだ。蓮くんの浮気が本当なら、私だけじゃなくお腹の子供にまで苦労させることになるから……。
「だって……私が妊娠中って知った上で、みわさんが宣戦布告しているのなら、もう私には勝ち目なんてないんじゃないかと思って……」
「まだそのみわって人が送り主とはわからないじゃない」
加奈子の声に賛同するようにお腹の中で赤ちゃんがドンッと私のお腹を強く蹴った。
「……いたっ」
まるで頼りない私にしっかりしろと喝を入れているみたいだった。
「ん? 朋美、どうしたの?」
「お腹の中で赤ちゃんが暴れてて。最近、本当に強い力で蹴飛ばしてくるの」
「ふふ、その不倫の件は本当かわからないし、そうだとしてものちのちどうにでもなるから、今は赤ちゃんのことに集中した方がいいわ。赤ちゃんも私もいつだって朋美の味方だから」
「ありがとう、加奈子」
私のような平凡な人間が、蓮くんみたいな優しくてイケメンで仕事のできる完璧な男の子と結婚したのが間違いだったのかな。
流れで彼と同棲してプロポーズされて浮かれて、こんなとんとん拍子に全てがうまくいくなんてそもそも出来すぎた話じゃないか。ちょっと前まで男性恐怖症で彼氏もできない冴えないOLだった私が……。
「ああ、だめ……」
あの手紙が来てから私はこんなことばっかり考えている……。
家に閉じこもっているとネガティブなことばかり考えてしまうので、私は近所を散歩した。安産のためにもウォーキングはいいらしいし、最近お腹が張って苦しいのも少し運動すると軽減するのでいいことずくめと思っていたのに……。
この日は会ったこともないみわさんの事をぐるぐると考えていたせいか、ずいぶん長く歩いてしまった。それがよくなかったのか、マンションのエレベーターを降り、もうすぐ自宅だというときに、何だかお腹が痛みだした。
歩きすぎたみたい……、ちょっとベッドで横になろう……。帰宅して靴を脱ごうと玄関へ座ったとき、体の奥からじわっと何かが溢れる感覚がした。
……うそ、破水? 予定日までまだあるのに!?
すぐにかかりつけの病院に電話して、私はマンションへタクシーを呼んで一人で乗った。
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