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第十一章 マタニティライフ(朋美side)

59.疑惑の手紙

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 蓮くんはそれから頻繁に胸や会陰をマッサージしてくれた。私は彼のモノを胸に挟んで扱いたり、お腹も大きいというのに彼の上に跨って挿入し腰を振ったりした。

 もうすぐやってくる出産は少し怖いけど、妊娠してから彼は今まで以上に優しいし、生まれてくる子供のことを考えるとこれからが楽しみで、私は幸せな日々を過ごしていた。

 新店舗のサロンの運営が軌道に乗ってから、仕事をセーブしてくれて家で過ごす時間の多かった蓮くんだったけど、ここ数日急に慌ただしく出かけて行くことが増えた。

「新店舗でトラブルっていうか、ちょっと困ったことがあってね」
 その日も、ずいぶん朝早い時間に彼はそう言って忙しそうに出かけて行った。
 一昨日は急に夜遅く出かけて行ったし、経営者って大変だ。

 午後、スーパーへ買い出しに出かけた私は、帰りにマンションのポストに入っていた郵便物の中に自分宛の封筒を見つけた。
 差出人の名前はなかった。
 封筒を開けると中には写真と手紙が入っていた。写真には蓮くんが髪の長い細身の女性を自分の車の助手席へエスコートしている姿が映っていた。

「小宮社長の奥さんへ
 社長はサロンの店長である野村みわと浮気しています。このあと二人はホテルへ向かいました」

 ……なに、これ……?
 私は目の前が真っ白になって、愕然と写真と手紙の文面を見つめた。



「このあと二人はホテルへ向かいましたって、……本当なの、これ……?」
 どうしたらいいかわからなくて、私は電話で加奈子に相談した。すぐに自宅まで来てくれた彼女に、私は写真と手紙を見せた。
「うーん、たまたま仕事で遅くなったから車で家まで送るところにも見えるけど……」
 彼女は首を傾げながら、写真をじーっと見つめながら率直な感想を述べた。
「うん、この写真一枚では判断はつかないけど……。でも、ただ家まで送るだけだったなら、そんなところをわざわざ撮って私に送ってこないんじゃない……?」

 あの優しい蓮くんに限って不倫なんてしないって思いたいけど……。
「まあ、そうよね……。朋美自身は蓮くんが浮気している可能性ってあると思うの? 最近、彼の様子が前と違うとか?」
 加奈子は私の表情をじっくりと観察しながら言った。

「……ここのところよく急に呼び出されて出かけることがあるの。早朝とか夜に。……彼、私に対しては以前にも増して優しくしてくれるんだけど……」
「それは怪しいわ。……朋美はその野村みわって人と面識は?」
「ないけど、蓮くんのスマホがちらっと見えたとき、その人とやり取りしているのが見えたことはあるわ」
「え! じゃあ間違いなく黒じゃない!」

「でも、彼女はサロンの店長みたいだし……」
「そっか、業務的な連絡は取り合って当然か……、うーん……」

 不意に私は以前、SNSのアカウントに嫌味な書き込みをしていたアンチが実は裏掲示板で雇われた人間だったということを思い出し、加奈子に伝えた。
「SNSのアンチを雇ったのって、もしかして淳士かしら……、だとしたら今回のこの写真も実は淳士が……?」
 淳士の影に怯えて生きるのは嫌だし、何より蓮くんのおじいさんが淳士のことを監視してくれているのだから、淳士のことはもうあまり考えないようにしようとは思っていたんだけど、やっぱり一番怪しいのはあの男だと思う。

「うーん、それはないと思うわ……」
 加奈子は断言して、相変わらずおしゃれなネイルをしている指先でスマホの画面を操作した。
「ほら、見て。松山淳士のSNS。……今じゃ子煩悩パパだもの」
「えっ! 淳士がパパ!? 嘘でしょう?」
 金髪に派手なメイクの水商売風の女性と3歳と0歳の二人の子供の写真で、彼のアカウントはいっぱいになっていた。

「まあどうやら、この女性に生まれた子供を認知するか、結婚するかしてって迫られていたんでしょうね。そこへ長年心残りだった元カノの朋美が現れて、松山淳士はあんたとの恋に決着をつけようと必死になっちゃったみたいね」
 そんな迷惑な……。

「でもとにかく淳士は結婚して今はこんな様子だし、今更あんたに手を出して来るとは思えないかな?」
「じゃあ誰がこんな手紙を……?」
 加奈子はもう一度その手紙の文面をじっと見つめてこう言った。

「……怪しいのはその店長のみわって人よね? もしかして前々から蓮くんの愛人だった彼女が写真を仲間に隠し撮りさせて、自分が蓮くんと結婚したいから朋美と蓮くんを離婚させようって魂胆で送ってきたんじゃない?」
「えっ……」
 加奈子の言葉にゾクッと寒気がした。
「この手紙は誰かが私に二人の関係を密告しているんじゃなくて、このみわさんって人からの宣戦布告ってこと……?」
 私は口元を手で押さえて、目を泳がせた。
 加奈子の推測が本当なら、みわさんは私から蓮くんを奪い取る気なんだ……。

「まだそうと決まったわけじゃないけど、他に心当たりがないなら可能性はありそうかなって……あ、ごめん、朋美。私もう行かないと……」
 加奈子は申し訳なさそうに腕時計を見た。
「忙しいのに来てくれてありがとう、加奈子」

「ううん、あんたのこと心配だったからさ。何か進展あったら、また電話でもメッセージでもしてきて。今は特にストレス溜めない方がいいから」
 うちへ来るために延長保育にしてくれた子供をお迎えに行かなきゃと帰って行く加奈子は、私の大きなお腹を心配そうに見ていた。
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