上 下
48 / 69
第九章 彼に釣り合う妻になりたい(朋美side)

47.貝殻ビキニ☆

しおりを挟む
 翌朝目が覚めると太陽はすっかり高くなっていた。
「よかったら、今日は一緒に出かけませんか?」
 モーニングコーヒーを飲みながら彼は言った。

「もちろんいいけど、どこへ?」
 買い物にでも付き合ってほしいのか?
「実は新しいサロンが完成したんです。一緒に見に行ってくれませんか?」
 今まで彼の仕事のことに、私は何も関わることができなかったので、正直彼からのこの提案はとても嬉しかった。

 静かな郊外にそのサロンはあった。
「すごく素敵、外国みたい……」
 ゆったりとした広い敷地には大きな噴水があり、あちらこちらに南国の植物が植えられている。日本じゃないみたいだ。
「日常を忘れてリラックスできるように、海外の人気リゾート地のような空間を目指しました」
 蓮くんはカギを開けて、白ベースの真新しい建物へ入った。中にはスタッフも工事関係者ももちろんお客さんも誰もいない。

「朋美さんにここで僕のマッサージを受けてもらって、オープン前に色々確認できればと思ったのですが、協力してもらえます?」
 蓮くんはこれまた海外のリゾート地のスパのような雰囲気の施術室へ私を案内してくれた。
「もちろん」
 私は喜んで承諾した。

「ではさっそくマッサージしますので、朋美さんはこちらの水着に着替えてください」
 更衣室の中に入り、私は蓮くんから手渡された袋の中を見た。
「え、これって……」
 紐の先に白い貝殻がついているだけのビキニだった。
 それもホタテサイズの貝殻ではなく、アサリサイズほどしかない白い貝だった。
 恥ずかしい、と思いながらも鏡の前で裸になって試しに上下とも合わせて見ると、乳首や陰毛などがどうにかギリギリ隠れた。

 施術室から出て行っていた蓮くんが戻って来た物音がしたので、私はバスタオルを巻きつけて体を隠しながら更衣室を後にした。
 私が水着に着替えている間に蓮くんもケーシータイプの白衣へ着替えてきていた。
「ちょっと、その……、水着が小さいみたいなんだけど……」
 タオルを脱がそうとする彼に、私は正直に告白した。

「開放的な水着で思う存分リラックスしてもらうために、ここの店舗ではあえてそういう水着を用意しているんです」
「そうなの……?」
 マッサージサロンなのだからこのぐらい普通なのだろうか。恥ずかしいと思ったことが逆に恥ずかしいように思えてきた。

 爽やかな笑みを浮かべながら、彼は私のタオルをするりとはだけさせた。小さな貝殻しか身につけていない私の体を彼がうっとりと見つめた。
「よくお似合いです……」
 顔が耳元へ寄ったと思うと、ほとんど吐息みたいな声を吹き込まれ、私は背筋をゾクッと震わせた。

 不意に彼の向こうにカメラがセットされていることに気がついた。
 どうして、カメラなんて……。
「蓮くん、あれは……?」
 よく見ると撮影中を示しているのであろう、赤いランプが点灯している。

「新店舗での施術の様子を今後の参考のために記録させてもらおうと思って。もちろん僕が後で見返すだけで、他の人には見せませんから安心してくださいね」
「そう……」
 相変わらず仕事熱心なんだなと私は彼を感心した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

お知らせ有り※※束縛上司!~溺愛体質の上司の深すぎる愛情~

ひなの琴莉
恋愛
イケメンで完璧な上司は自分にだけなぜかとても過保護でしつこい。そんな店長に秘密を握られた。秘密をすることに交換条件として色々求められてしまう。 溺愛体質のヒーロー☓地味子。ドタバタラブコメディ。 2021/3/10 しおりを挟んでくださっている皆様へ。 こちらの作品はすごく昔に書いたのをリメイクして連載していたものです。 しかし、古い作品なので……時代背景と言うか……いろいろ突っ込みどころ満載で、修正しながら書いていたのですが、やはり難しかったです(汗) 楽しい作品に仕上げるのが厳しいと判断し、連載を中止させていただくことにしました。 申しわけありません。 新作を書いて更新していきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 お詫びに過去に書いた原文のママ載せておきます。 修正していないのと、若かりし頃の作品のため、 甘めに見てくださいm(__)m

森でオッサンに拾って貰いました。

来栖もよもよ&来栖もよりーぬ
恋愛
アパートの火事から逃げ出そうとして気がついたらパジャマで森にいた26歳のOLと、拾ってくれた40近く見える髭面のマッチョなオッサン(実は31歳)がラブラブするお話。ちと長めですが前後編で終わります。 ムーンライト、エブリスタにも掲載しております。

冷徹上司の、甘い秘密。

青花美来
恋愛
うちの冷徹上司は、何故か私にだけ甘い。 「頼む。……この事は誰にも言わないでくれ」 「別に誰も気にしませんよ?」 「いや俺が気にする」 ひょんなことから、課長の秘密を知ってしまいました。 ※同作品の全年齢対象のものを他サイト様にて公開、完結しております。

【R18】深層のご令嬢は、婚約破棄して愛しのお兄様に花弁を散らされる

奏音 美都
恋愛
バトワール財閥の令嬢であるクリスティーナは血の繋がらない兄、ウィンストンを密かに慕っていた。だが、貴族院議員であり、ノルウェールズ侯爵家の三男であるコンラッドとの婚姻話が持ち上がり、バトワール財閥、ひいては会社の経営に携わる兄のために、お見合いを受ける覚悟をする。 だが、今目の前では兄のウィンストンに迫られていた。 「ノルウェールズ侯爵の御曹司とのお見合いが決まったって聞いたんだが、本当なのか?」」  どう尋ねる兄の真意は……

処理中です...