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第八章 寝取られからの逆転(蓮side)

40.地下室からの解放

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 僕たちは部屋の中に段ボールに入ったまま置かれていた朋美さんの荷物を運び出して通りでタクシーを拾った。

「なんだか怖い……。どこへ逃げてもあの人は追ってくる気がする……」
 タクシーの中で朋美さんは曇ったままの表情で窓の外を見ていた。
「大丈夫ですよ、あの男は実家の会社を捨てることなんてできませんから。つまり株主である僕の祖父には一生逆らえないんです」
 それを聞いて、彼女は少し安堵していた。

 僕たちの住んでいたマンションの前でタクシーから降りると、彼女は自分の部屋に見慣れないカーテンがかかっているのを見てショックを受けていた。
「あ、……そうだった。私の部屋はもう解約してしまっていたから、新しい人が入ってしまったのね……」

 普通なら部屋のクリーニングなどで次の人に部屋を貸すまで数週間は間が空くだろうけど、このワンルームマンションは不動産会社を介さずに大家さんが自分で管理していることもあり、部屋に空きが出ると即日次の人が入居してくることがこれまでにもよくあった。
「大丈夫です。僕、ちゃんと考えてありますから。ちょっと待っていてください」

 タクシーを待たせて、僕は自分の部屋へあるものを取りに行き、再び朋美さんと一緒にタクシーへ乗り込んだ。

***

 都市部のタワーマンションの最上階の広々とした部屋のカギを開けて中へ案内すると、朋美さんはただただ驚いていた。
「ここは……?」
 大型の家電もついている50帖ほどの広々としたリビングを彼女はきょろきょろ眺めた。ダイニングテーブルやソファーがゆったりと置かれている。

「朋美さん、これから一緒にこの部屋で暮らしてくれませんか?」
「え、……それは」
 僕に見つめられて、彼女は頬を染めた。

 僕は彼女の前に跪き、彼女の手の甲へキスをした。
「結婚を前提に、僕と同棲してください」
「……うわ、嬉しい。……もちろんよ」
 彼女は涙ぐみながら頷いてくれた。

「でもこの部屋どうしたの? こんなすごい部屋、家賃もものすごく高いでしょう?」
 ガラス張りの壁の向こうに広がる都会の景色を見ながら彼女は心配そうにそう尋ねた。
「賃貸じゃないです。ここは分譲マンションですから」
「……え、……買ったの!?」
「ふふ、僕がマッサージ師の仕事で稼いだお金で購入したわけじゃないです。買ったのは祖父です。今回のことを説明したら僕にプレゼントしてくれたんです」

 投資家の祖父は不動産も多数所有していて、人に貸し出して家賃収入を得ている。今回のことで僕に将来を真剣に考えている彼女がいると知ると、なら彼女と暮らすために一番いい部屋をあげようと、言ってくれたのだ。
 3LDKの間取りなら二人で暮らすにも十分すぎる。

 僕は朋美さんの部屋にしようと思っていた個室に彼女の段ボールを運んだ。
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