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第八章 寝取られからの逆転(蓮side)

39.社長より、会長よりも偉い人

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 ドンドンドンッ……。
 慌ただしく扉がノックされ、舎弟たちが転がるように部屋へ入って来た。
「大変です、若社長っ」

「なんだ、騒々しい……」
 ペニスに付着した体液をティッシュで拭いていた淳士は、舎弟たちを一瞥し、ズボンを穿いた。
「何やら会長がお怒りで……っ」
「あ? オヤジが……?」
 淳士はずいぶん驚いた顔をしていた。ただ事ではないと気付いたのだろう。

 二人の舎弟は、
「とにかく早く来てください」
 と大慌てで淳士を連れて出て行った。

 部屋の中に残された朋美さんはバスタオルを丸裸の体に巻き付けて、すぐに僕の口を塞いでいるガムテープを剥がしてくれた。
「蓮くん、……ごめんなさい、巻き込んでしまって」
 悲痛な声でそう呟きながら、僕の背後のロープを解いてくれた。
「僕の方こそ、助けられなくて……」

 朋美さんは目に涙を浮かべていた。僕は自由になった両腕で彼女をギュッと力強く抱き締め、唇と唇を重ねた。
 体の横に下ろしていた彼女の両腕が僕の背中を包んだ。
 長いキスの後、唇を離すと、涙に濡れた瞳で彼女は僕を見つめた。

「蓮くんだけでもどうにか逃げてほしい……」
 部屋のドアのサムターンを回すとカギは開く。けれどドアの外にチェーンがかけられていて、外に出られない。
「朋美さんと一緒に逃げたいですが、これじゃ無理ですね。……でも安心してください。きっともう大丈夫ですから」
「……えっ?」
 朋美さんはきょとんとして僕の顔を見ていたが、僕が自信たっぷりにゆっくり頷くと、彼女は少し安心して、段ボールから下着とワンピースを取り出して、裸にバスタオルだけだった体に身につけた。
 もちろん、大丈夫というのはハッタリなんかじゃない。

 僕は朋美さんの前へ跪き、そっと掴んだ白くて細い手の甲へちゅっとキスをし、丹念に頬擦りした。
「会いたかったです……、朋美さん……。僕がどれほどあなたのことを心配していたか……。ずいぶん急いで水面下で手を回したのですが、あなたが引っ越してしまうまでに、あと一歩間に合わなかったこと、後悔するばかりでした……」
「蓮くん……」
 彼女の肌の感触、甘い香り、柔らかな声、まとっている雰囲気に、僕はやっぱり彼女の全てが大好きだと痛感した。

 カチャッとドアの方で音がした。
 部屋へ入って来たのは金髪の太った舎弟一人だった。
「おい、お前ら出て行っていいぞ」
「え……」
 朋美さんは驚いて舎弟を見ていた。

「やべえんだよ、どういうわけか株主が淳士さんの女癖の悪さ知っててさ。監禁してる女性を解放しないと淳士さんを役員から解任するって言い出したらしくて」
「株主……?」
 きょとんとしている朋美さんの隣で僕はほくそ笑んだ。
 僕が水面下で進めていた計画が表へ出たのだ。

 株式会社で一番偉いのは社長でも会長でもない。株主なんだ。
 幼少期に同居していた金持ちの祖父というのは、実はその道では名の知れた投資家で、様々な企業の株券を所有していて、自宅には大量の株主優待品が届く。

 僕が朋美さんの同僚の加奈子さんから淳士の会社「松山産業」の名を聞いたとき、どこかで聞いた名前だなぁと記憶をたどると、祖父の家の山のように積まれた優待品の中で見かけた名前だと思い出した。
 さっそく祖父に松山産業の株を買い増して経営に口出しできる権限を得るようお願いしたのだ。
 祖父にとって僕は大事な初孫だったからものすごく可愛がられていたし、両親が離婚してしまった今でも僕は度々祖父の家へ遊びに行き、祖父と祖母の体をマッサージしていたから、祖父は快く引き受けてくれたのだ。
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