12 / 69
第三章 踏み出した一歩(朋美side)
11.お礼のつもりで……
しおりを挟む
確かに加奈子の言う通りかもしれない。蓮くんが壊したアダルトグッズの価格は大したことない。一方、蓮くんのお店の料金表を見ると私がいつもタダで施術してもらっているオイルマッサージの全身コースって結構いい値段する。一回施術してもらえればあのアダルトグッズを弁償したことになるのに、もうすでにお店で二回もマッサージしてもらっているし、次の分の無料サービスチケットをもらっている。
実は蓮くんに何かお礼をしたいという気持ちは私の中に元々あったのだ。
その日は珍しく定時で上がれたので、私は仕事帰りにスーパーへ寄った。ハンバーグと付け合わせの材料を買い込んだ。ハンバーグを失敗したときのために唐揚げの材料も買っておいた。
ハンバーグを作って、唐揚げを揚げているときに隣の部屋の玄関が閉まる音がした。
先に作っておいた赤玉ねぎのマリネとマカロニサラダ、ハンバーグと唐揚げをそれぞれタッパーに入れ、私は玄関のチャイムを鳴らした。
「はい」
タオルで髪を拭きながら蓮くんは玄関を開けた。半ズボンにティシャツという格好からして風呂上がりなのだろう。髪の毛先に水がしたたっていて、いつも以上にイケメンに見える。
「あれ、朋美さん……?」
私の顔を見ると彼は嬉しそうに笑った。
「突然、ごめんね。ちょっと夕飯、作りすぎちゃって。……よかったら、もらってくれない?」
自宅へ招待するというのは私にとってハードルが高いので、作ったおかずをタッパーに詰めて渡すことにしたのだ。
「えっ!? 朋美さんの手料理!?」
蓮くんは透き通るようにきれいな瞳を見開いた。
「うん、中身はハンバーグと唐揚げと玉ねぎのマリネとマカロニサラダなんだけど……」
私は紙袋の中のタッパーを指さしながら説明した。
足りないといけないと思ってついつい多く詰めて来てしまったが、改めて見ると一人で食べるには多すぎる量だ……。夕飯作りすぎたからお裾分けっていう量じゃない……。蓮くんのために作ってきたとバレただろうか、と私は少し恥ずかしくなった。
「えー、すごく嬉しいです……」
蓮くんはとろけるような表情で目元をぽっと赤く染めた。
その表情を見て、私はキュンと胸を痺れさせた。
「あ、そうだ……、もらい物のワインがあるんですよ。よかったら、これ一緒に食べながら飲みませんか」
「えっ!?」
まさか蓮くんがそんなことを言いだすなんて。
「どうぞ上がってください」
私の片手に握られた部屋のカギを蓮くんはちらりと見ていた。私は念のため部屋の戸締りをして来ていたから、断る理由なんてなかった。
「赤ワインはあまり好きではないですか?」
「ううん、好きだけど……」
「よかった。じゃあ是非」
彼がニコニコするから断れなくなって、私は蓮くんの部屋へ上がった。
相変わらず部屋の中はきれいに片付いていて、オーディオから心地いいジャズのBGMが流れている。
「ちょうど今夜はゆっくり飲みたいなって思っていたところなんです」
二人用のダイニングテーブルに、小皿やワイングラスを並べ、彼は冷蔵庫からワインを出した。
「チリ産のワインらしいです。これ、安いけどまあまあ美味しいよって、職場の先輩がくれて」
コルクを抜いて私のグラスに注いでくれた。
「へー、初めて飲むかも」
蓮くんは私の持ってきた料理を美味しい美味しいと言って目をキラキラさせながら心底幸せそうに食べてくれた。
彼は本当に目鼻立ちの整ったきれいな顔をしているなあ、さぞかし女の子にモテるんだろうな……と思った。
「僕も料理が好きでハンバーグよく作るんですけど、こんなに美味しくできないです。もしかしてナツメグとか入れるんですか?」
お世辞かな、と思いながらも私はすっかり嬉しくなって作り方とか他によく作る料理の話で盛り上がった。
「僕、ロールキャベツ大好きなんですけど、うまくできたことないです。まずキャベツを巻く段階できれいな形にできないですもん」
「生のキャベツでやろうとするから難しいんじゃない? 軽くチンしてからやればきれいに巻けるよ」
「あ、そうなんですか」
「じゃあ今度はロールキャベツ作って持ってくるね」
「えっ! めちゃくちゃ嬉しいです」
こんな素敵な男の子と二人で楽しくお酒を飲むなんて、私の人生では今までないことだった。
蓮くんに勧められるまま、私はワインをどんどん飲んでしまった。私はお酒を飲み過ぎるといつも眠くなってしまうのだ。
テーブルへ突っ伏していると、
「お水飲みませんか?」
と彼がグラスを差し出した。
「ありがとう……」
私は水をごくごく飲み干した。
彼の部屋の時計を見るともう22時近い。
「私、そろそろ……」
立ち上がると、目の前がくらくらして、体に力が入らない。
「おっと、大丈夫ですか?」
倒れそうになった私を蓮くんの男らしい胸板と太い腕が抱きとめた。
彼の体からはアロマオイルみたいないい匂いがする。
「ごめんなさい……。私、ちょっと飲みすぎちゃったみたいで」
「朋美さんは疲れが溜まっているんですよ。いつも周りに気を使ってすごく頑張っているんだなってマッサージしていてそう思いますもん。僕には気を使わなくていいんですよ」
こんな優しいことを言われるなんて……。
背中を優しく撫でる彼の手の心地よさに、私は安堵して目を閉じた。
実は蓮くんに何かお礼をしたいという気持ちは私の中に元々あったのだ。
その日は珍しく定時で上がれたので、私は仕事帰りにスーパーへ寄った。ハンバーグと付け合わせの材料を買い込んだ。ハンバーグを失敗したときのために唐揚げの材料も買っておいた。
ハンバーグを作って、唐揚げを揚げているときに隣の部屋の玄関が閉まる音がした。
先に作っておいた赤玉ねぎのマリネとマカロニサラダ、ハンバーグと唐揚げをそれぞれタッパーに入れ、私は玄関のチャイムを鳴らした。
「はい」
タオルで髪を拭きながら蓮くんは玄関を開けた。半ズボンにティシャツという格好からして風呂上がりなのだろう。髪の毛先に水がしたたっていて、いつも以上にイケメンに見える。
「あれ、朋美さん……?」
私の顔を見ると彼は嬉しそうに笑った。
「突然、ごめんね。ちょっと夕飯、作りすぎちゃって。……よかったら、もらってくれない?」
自宅へ招待するというのは私にとってハードルが高いので、作ったおかずをタッパーに詰めて渡すことにしたのだ。
「えっ!? 朋美さんの手料理!?」
蓮くんは透き通るようにきれいな瞳を見開いた。
「うん、中身はハンバーグと唐揚げと玉ねぎのマリネとマカロニサラダなんだけど……」
私は紙袋の中のタッパーを指さしながら説明した。
足りないといけないと思ってついつい多く詰めて来てしまったが、改めて見ると一人で食べるには多すぎる量だ……。夕飯作りすぎたからお裾分けっていう量じゃない……。蓮くんのために作ってきたとバレただろうか、と私は少し恥ずかしくなった。
「えー、すごく嬉しいです……」
蓮くんはとろけるような表情で目元をぽっと赤く染めた。
その表情を見て、私はキュンと胸を痺れさせた。
「あ、そうだ……、もらい物のワインがあるんですよ。よかったら、これ一緒に食べながら飲みませんか」
「えっ!?」
まさか蓮くんがそんなことを言いだすなんて。
「どうぞ上がってください」
私の片手に握られた部屋のカギを蓮くんはちらりと見ていた。私は念のため部屋の戸締りをして来ていたから、断る理由なんてなかった。
「赤ワインはあまり好きではないですか?」
「ううん、好きだけど……」
「よかった。じゃあ是非」
彼がニコニコするから断れなくなって、私は蓮くんの部屋へ上がった。
相変わらず部屋の中はきれいに片付いていて、オーディオから心地いいジャズのBGMが流れている。
「ちょうど今夜はゆっくり飲みたいなって思っていたところなんです」
二人用のダイニングテーブルに、小皿やワイングラスを並べ、彼は冷蔵庫からワインを出した。
「チリ産のワインらしいです。これ、安いけどまあまあ美味しいよって、職場の先輩がくれて」
コルクを抜いて私のグラスに注いでくれた。
「へー、初めて飲むかも」
蓮くんは私の持ってきた料理を美味しい美味しいと言って目をキラキラさせながら心底幸せそうに食べてくれた。
彼は本当に目鼻立ちの整ったきれいな顔をしているなあ、さぞかし女の子にモテるんだろうな……と思った。
「僕も料理が好きでハンバーグよく作るんですけど、こんなに美味しくできないです。もしかしてナツメグとか入れるんですか?」
お世辞かな、と思いながらも私はすっかり嬉しくなって作り方とか他によく作る料理の話で盛り上がった。
「僕、ロールキャベツ大好きなんですけど、うまくできたことないです。まずキャベツを巻く段階できれいな形にできないですもん」
「生のキャベツでやろうとするから難しいんじゃない? 軽くチンしてからやればきれいに巻けるよ」
「あ、そうなんですか」
「じゃあ今度はロールキャベツ作って持ってくるね」
「えっ! めちゃくちゃ嬉しいです」
こんな素敵な男の子と二人で楽しくお酒を飲むなんて、私の人生では今までないことだった。
蓮くんに勧められるまま、私はワインをどんどん飲んでしまった。私はお酒を飲み過ぎるといつも眠くなってしまうのだ。
テーブルへ突っ伏していると、
「お水飲みませんか?」
と彼がグラスを差し出した。
「ありがとう……」
私は水をごくごく飲み干した。
彼の部屋の時計を見るともう22時近い。
「私、そろそろ……」
立ち上がると、目の前がくらくらして、体に力が入らない。
「おっと、大丈夫ですか?」
倒れそうになった私を蓮くんの男らしい胸板と太い腕が抱きとめた。
彼の体からはアロマオイルみたいないい匂いがする。
「ごめんなさい……。私、ちょっと飲みすぎちゃったみたいで」
「朋美さんは疲れが溜まっているんですよ。いつも周りに気を使ってすごく頑張っているんだなってマッサージしていてそう思いますもん。僕には気を使わなくていいんですよ」
こんな優しいことを言われるなんて……。
背中を優しく撫でる彼の手の心地よさに、私は安堵して目を閉じた。
0
お気に入りに追加
239
あなたにおすすめの小説
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
冷徹上司の、甘い秘密。
青花美来
恋愛
うちの冷徹上司は、何故か私にだけ甘い。
「頼む。……この事は誰にも言わないでくれ」
「別に誰も気にしませんよ?」
「いや俺が気にする」
ひょんなことから、課長の秘密を知ってしまいました。
※同作品の全年齢対象のものを他サイト様にて公開、完結しております。
お知らせ有り※※束縛上司!~溺愛体質の上司の深すぎる愛情~
ひなの琴莉
恋愛
イケメンで完璧な上司は自分にだけなぜかとても過保護でしつこい。そんな店長に秘密を握られた。秘密をすることに交換条件として色々求められてしまう。 溺愛体質のヒーロー☓地味子。ドタバタラブコメディ。
2021/3/10
しおりを挟んでくださっている皆様へ。
こちらの作品はすごく昔に書いたのをリメイクして連載していたものです。
しかし、古い作品なので……時代背景と言うか……いろいろ突っ込みどころ満載で、修正しながら書いていたのですが、やはり難しかったです(汗)
楽しい作品に仕上げるのが厳しいと判断し、連載を中止させていただくことにしました。
申しわけありません。
新作を書いて更新していきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
お詫びに過去に書いた原文のママ載せておきます。
修正していないのと、若かりし頃の作品のため、
甘めに見てくださいm(__)m
【R18】深層のご令嬢は、婚約破棄して愛しのお兄様に花弁を散らされる
奏音 美都
恋愛
バトワール財閥の令嬢であるクリスティーナは血の繋がらない兄、ウィンストンを密かに慕っていた。だが、貴族院議員であり、ノルウェールズ侯爵家の三男であるコンラッドとの婚姻話が持ち上がり、バトワール財閥、ひいては会社の経営に携わる兄のために、お見合いを受ける覚悟をする。
だが、今目の前では兄のウィンストンに迫られていた。
「ノルウェールズ侯爵の御曹司とのお見合いが決まったって聞いたんだが、本当なのか?」」
どう尋ねる兄の真意は……
地味女で喪女でもよく濡れる。~俺様海運王に開発されました~
あこや(亜胡夜カイ)
恋愛
新米学芸員の工藤貴奈(くどうあてな)は、自他ともに認める地味女で喪女だが、素敵な思い出がある。卒業旅行で訪れたギリシャで出会った美麗な男とのワンナイトラブだ。文字通り「ワンナイト」のつもりだったのに、なぜか貴奈に執着した男は日本へやってきた。貴奈が所属する博物館を含むグループ企業を丸ごと買収、CEOとして乗り込んできたのだ。「お前は俺が開発する」と宣言して、貴奈を学芸員兼秘書として側に置くという。彼氏いない歴=年齢、好きな相手は壁画の住人、「だったはず」の貴奈は、昼も夜も彼の執着に翻弄され、やがて体が応えるように……
二人の甘い夜は終わらない
藤谷藍
恋愛
*この作品の書籍化がアルファポリス社で現在進んでおります。正式に決定しますと6月13日にこの作品をウェブから引き下げとなりますので、よろしくご了承下さい*
年齢=恋人いない歴28年。多忙な花乃は、昔キッパリ振られているのに、初恋の彼がずっと忘れられない。いまだに彼を想い続けているそんな誕生日の夜、彼に面影がそっくりな男性と出会い、夢心地のまま酔った勢いで幸せな一夜を共に––––、なのに、初めての朝チュンでパニックになり、逃げ出してしまった。甘酸っぱい思い出のファーストラブ。幻の夢のようなセカンドラブ。優しい彼には逢うたびに心を持っていかれる。今も昔も、過剰なほど甘やかされるけど、この歳になって相変わらずな子供扱いも! そして極甘で強引な彼のペースに、花乃はみるみる絡め取られて……⁈ ちょっぴり個性派、花乃の初恋胸キュンラブです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる