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第二章 まだ明かせない僕の気持ち(蓮side)
8.もう、マッサージは……
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しばらく快感の余韻で体をピクピクさせていた朋美さんが落ち着きを取り戻してきたタイミングで、僕は彼女の目を覆っていたホットタオルを退けた。
「本日は以上になります……」
彼女は虚ろな目をしていたが、僕と目が合うと頬をかぁっと赤く染めた。
「肩の凝り、どうですか。軽くなっているんじゃないですか?」
施術台から起き上がった彼女に僕が微笑みかけると、彼女はああそうだった、と思い出したように肩を回した。
「軽くなってる……、けど……」
「けど……?」
彼女はちょっと下を向き、目を泳がせた。
「よかったら次回の分のサービスチケット、また使ってください」
僕の差し出した無料チケットを受け取らずに彼女は、
「蓮くん……、私もうマッサージは……」
と拒絶の言葉を口にした。
嘘だろう……。だって彼女は肩こりに悩んでいるし、吸うやつを買っちゃうぐらい欲求不満だったはずなのに……。
僕に極上のマッサージをされて、あんなに気持ちよさそうにとろとろになっていたじゃないか。
「どうして……? 今日のマッサージで何か嫌な部分ありました?」
「ううん、そうじゃないけど……」
よかった。あんなのマッサージじゃない、性的暴行だ、なんて言われたらどうしようかと思った。
「……実は私ね、……男性が、とても苦手で……。ちょっとトラウマがあって、男性恐怖症なの」
「え……?」
男性恐怖症……?
「そのせいで恋人なんてできたことがないようなものだし、極力男性と関わらないようにして生きてきたの。だから男性に対して免疫がないから……こんな裸みたいな格好で触られて、蓮くんのこと変に意識しちゃって……」
マッサージ中に乱れて絶頂したことを彼女はすごく恥じているみたいだった。そんなの僕が用意した催淫作用のあるオイルのせいと、僕がわざとエッチなマッサージをしたせいなのに。
「だからもう、マッサージは……」
彼女はバスタオルで体を包み、首をふるふると左右へ振った。
もちろんここで、はい、そうですか。と簡単に引き下がる僕じゃない。
「男性恐怖症なのに、朋美さんは僕とはこれまで普通に会話してくれていましたよね? 僕のこと毛嫌いしているようには感じませんでした」
「それは蓮くんがすごく話しやすい人だから……」
僕がにこっと笑顔を浮かべると、朋美さんの目元がぽっと赤くなった。
「それって僕ならその辺の男より少しマシってことですよね? だったら、僕で男性に慣れる練習をしてみるのはどうですか?」
「ええっ……!?」
「もし朋美さんが今後、パートナーや家族が欲しいって思っているのなら、男性恐怖症は少しずつでも克服しておいた方がいいと思います」
彼女が友達の出産を羨ましく思って、部屋で一人「いいなぁ、幸せそうで……」と、ため息をついていたのも、後日出産祝いを贈る相談で他の友達へ電話しているときの会話も、僕は全て盗聴していた。
僕なら喜んで朋美さんと結婚しますよ、とこの場でプロポーズしたいところだけど、男性を怖いと思っている彼女に僕が過去の知り合いだとか、ずっと会いたくて探していたとか、そんなストーカー行為とも取れる重たい気持ちを明かすにはまだ早すぎる気がする。
男性に対する警戒心は人一倍強いんだろうから慎重にいかないと……。
「僕、医療系の専門学校を出てるんですけど、僕たちマッサージ師ってセラピストですから、心理学もよく勉強するんですよ。だから朋美さんが抱いている男性への恐怖心を軽くするためのお手伝いができる気がします」
「え、そうなの……?」
彼女は僕の提案に興味を持ち始めた様子だった。
もう一押し必要か、と思って僕はここで切り札を出した。
「それに、まだ僕は壊してしまった朋美さんのマッサージ器分の仕事ができていませんから、ここで僕のマッサージを受けるのをやめたいというのならやはり弁償しないとなりませんね。……あのマッサージ器、どこのサイトでなんて言う名称で検索すると出てきますか?」
彼女はギクッと肩を震わせた。
「だ、ダメ! あのマッサージ器のことはもういいからっ!」
「だったら、これからも僕のマッサージ受けてくださいね」
「うん……」
ようやく首を縦に振った朋美さんに僕は微笑んだ。
大人しくサービスチケットを受け取り、彼女がサロンから帰って行くのを見送りながら僕は、よしよし、うまくいったぞ、とにやりと笑った。
「本日は以上になります……」
彼女は虚ろな目をしていたが、僕と目が合うと頬をかぁっと赤く染めた。
「肩の凝り、どうですか。軽くなっているんじゃないですか?」
施術台から起き上がった彼女に僕が微笑みかけると、彼女はああそうだった、と思い出したように肩を回した。
「軽くなってる……、けど……」
「けど……?」
彼女はちょっと下を向き、目を泳がせた。
「よかったら次回の分のサービスチケット、また使ってください」
僕の差し出した無料チケットを受け取らずに彼女は、
「蓮くん……、私もうマッサージは……」
と拒絶の言葉を口にした。
嘘だろう……。だって彼女は肩こりに悩んでいるし、吸うやつを買っちゃうぐらい欲求不満だったはずなのに……。
僕に極上のマッサージをされて、あんなに気持ちよさそうにとろとろになっていたじゃないか。
「どうして……? 今日のマッサージで何か嫌な部分ありました?」
「ううん、そうじゃないけど……」
よかった。あんなのマッサージじゃない、性的暴行だ、なんて言われたらどうしようかと思った。
「……実は私ね、……男性が、とても苦手で……。ちょっとトラウマがあって、男性恐怖症なの」
「え……?」
男性恐怖症……?
「そのせいで恋人なんてできたことがないようなものだし、極力男性と関わらないようにして生きてきたの。だから男性に対して免疫がないから……こんな裸みたいな格好で触られて、蓮くんのこと変に意識しちゃって……」
マッサージ中に乱れて絶頂したことを彼女はすごく恥じているみたいだった。そんなの僕が用意した催淫作用のあるオイルのせいと、僕がわざとエッチなマッサージをしたせいなのに。
「だからもう、マッサージは……」
彼女はバスタオルで体を包み、首をふるふると左右へ振った。
もちろんここで、はい、そうですか。と簡単に引き下がる僕じゃない。
「男性恐怖症なのに、朋美さんは僕とはこれまで普通に会話してくれていましたよね? 僕のこと毛嫌いしているようには感じませんでした」
「それは蓮くんがすごく話しやすい人だから……」
僕がにこっと笑顔を浮かべると、朋美さんの目元がぽっと赤くなった。
「それって僕ならその辺の男より少しマシってことですよね? だったら、僕で男性に慣れる練習をしてみるのはどうですか?」
「ええっ……!?」
「もし朋美さんが今後、パートナーや家族が欲しいって思っているのなら、男性恐怖症は少しずつでも克服しておいた方がいいと思います」
彼女が友達の出産を羨ましく思って、部屋で一人「いいなぁ、幸せそうで……」と、ため息をついていたのも、後日出産祝いを贈る相談で他の友達へ電話しているときの会話も、僕は全て盗聴していた。
僕なら喜んで朋美さんと結婚しますよ、とこの場でプロポーズしたいところだけど、男性を怖いと思っている彼女に僕が過去の知り合いだとか、ずっと会いたくて探していたとか、そんなストーカー行為とも取れる重たい気持ちを明かすにはまだ早すぎる気がする。
男性に対する警戒心は人一倍強いんだろうから慎重にいかないと……。
「僕、医療系の専門学校を出てるんですけど、僕たちマッサージ師ってセラピストですから、心理学もよく勉強するんですよ。だから朋美さんが抱いている男性への恐怖心を軽くするためのお手伝いができる気がします」
「え、そうなの……?」
彼女は僕の提案に興味を持ち始めた様子だった。
もう一押し必要か、と思って僕はここで切り札を出した。
「それに、まだ僕は壊してしまった朋美さんのマッサージ器分の仕事ができていませんから、ここで僕のマッサージを受けるのをやめたいというのならやはり弁償しないとなりませんね。……あのマッサージ器、どこのサイトでなんて言う名称で検索すると出てきますか?」
彼女はギクッと肩を震わせた。
「だ、ダメ! あのマッサージ器のことはもういいからっ!」
「だったら、これからも僕のマッサージ受けてくださいね」
「うん……」
ようやく首を縦に振った朋美さんに僕は微笑んだ。
大人しくサービスチケットを受け取り、彼女がサロンから帰って行くのを見送りながら僕は、よしよし、うまくいったぞ、とにやりと笑った。
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