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第一章 恥ずかしすぎる誤配事件(朋美side)

4.彼の部屋

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 私は自分の部屋にカギをかけて彼の部屋の中へ入った。
「どうぞ、ちょっと散らかっていますけど」
 一人暮らしの男性宅へ入ったのは初めてだった。
 散らかっているなんて言っていたのに、きれいに掃除されているし、物が少なくて私の部屋よりよっぽど片付いていた。
 心地良いアロマの香りが漂い、オーディオからリラクゼーション音楽が流れていた。
 少し開いている窓から風が入りカーテンを揺らしている。

「冷たいハーブティーちょっと飲みませんか?」
 彼は冷蔵庫から取り出したボトルの液体をグラスに注ぎ、渡してきた。
「ありがとう……」
 そういえばお風呂上がりで喉が渇いていたんだと思い出した。
「美味しい……」
「ふふ、気に入ってくれてよかったです」

 小宮くんはテーブルの椅子を部屋の中央に持ってきて、私に座るように言った。
 そういえば短パンで来てしまって恥ずかしいなと思っていたら、彼がさり気なくブランケットを差し出してくれた。
「よかったら、使います? 寒かったら窓閉めますから言ってくださいね」
「ありがとう」
 こういう対応は仕事で慣れているんだろうなと思った。

「失礼しますね……」
 彼の手がそっと私の肩へ触れた。
 私の上半身はキャミソールに薄手のカーディガン一枚で、薄い布越しにしっとりと温かな彼の手を感じる。
 人の体に触り慣れているプロの指先だからか、男性に触られているというのに、嫌だとか怖いとかそんなこと全然思わない。

「力加減いかがですか、痛くありませんか?」
 耳元で優しい声で囁かれて私は背筋をぞくっとさせた。
「うん、大丈夫……」
 すごく気持ちいい……。ああ、ほぐれる……。
 硬く凝り固まっている肩を彼はクイクイと揉みほぐしていく。

「……んっ」
 思わず声が漏れてしまい私は恥ずかしく思った。
「この辺ちょっと痛いですかね、だいぶ筋肉が固まっていますね」
 彼の甘い声に、服の下で私の乳首がきゅっと硬くなるのを感じた。
 すっかり忘れていたけど、私のキャミソールの下はノーブラでカーディガン越しにも胸の先が透けているんじゃないかと心配になった。
 ちらりと下を見ると微かに乳首が布を押し上げているのが見て取れる。

 でも彼は気づかないのか、全く気にしていない様子で、
「デスクワークされている方はどうしても目が疲れちゃいますよね。この辺ほぐすと、どうですか、少し楽になりますか」
 と首の付け根から後頭部を指圧した。
「うん、いいかも……」
「お風呂入って血行が良くなっているときとかにご自身で押すのもおすすめです。でも朋美さんは僕がこうしてほぐしてあげますから大丈夫ですね……」
「あれ、名前……。どうして知って……?」
 今まで笹原さんと呼んでいたのに急に下の名前で呼ばれた私はドキッとして彼の方を振り向いた。
「あっ……、ごめんなさい。……えっと、さっきの荷物の伝票を見て知ったんです。僕の下の名前は、蓮です。よかったら蓮って呼んでください。今日から僕は朋美さんの担当マッサージ師ですから」
 彼は感じのいい笑顔でそう言った。

 そっか、こんなに爽やかでイケメンの彼は私と違って、女性慣れしてるんだ……。
 下の名前呼ばれたぐらいでこんな大げさな反応をしていたら、いい歳して男性に免疫ありませんって言ってるようなものじゃないか。
 私は恥ずかしくなって、
「ふふ、気持ちだけでも嬉しいわ。蓮くん」
 と余裕ぶって言ってみた。

「今日は5分の約束でしたもんね、これぐらいで終わりにしましょうか」
 彼は私に自分の勤務するリラクゼーションサロンの無料サービスチケットをくれた。
「職場ならもっと色々な施術ができますので、是非来てください。僕が働いているところはスタッフ全員が国家資格を持っている安心安全なお店ですから」
 なんだ一回無料で受けさせて営業する気か、商売上手だなぁ……、と思いながらも、年下のイケメンくんといい時間が過ごせたし、肩が驚くほど軽くなっていて、私はルンルンと部屋へ戻って行った。
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