【R-18】私を乱す彼の指~お隣のイケメンマッサージ師くんに溺愛されています~【完結】

衣草 薫

文字の大きさ
上 下
2 / 69
第一章 恥ずかしすぎる誤配事件(朋美side)

1.お隣のイケメンくん

しおりを挟む
 私が彼のマッサージを受けることになったのは、ある恥ずかしい事件がきっかけだった。
 話は数日前にさかのぼる……。

 ある日の仕事帰り、マンションの入口で声をかけられた。
「こんばんは、笹原ささはらさん。今帰りですか」
 長い指先でエレベーターのボタンを押し、私に微笑みかけた彼の笑顔の何ときれいなことか……。

 眼福……。ああもう、疲れが吹き飛んじゃう……。
 このすらりと背が高くてとても人当たりのいいイケメンは、私の部屋のお隣に引っ越してきた小宮こみや蓮くんだ。

 私はキュンと甘く胸を痺れさせながら、コンビニで買ってきた缶ビールと食品の入ったエコバッグを体の後ろへ隠した。
「ええ、今日も残業で……」
 男性と話すのが苦手な独身喪女の私が苦笑いすると彼も困ったように笑ってくれた。
「月末ですもんね。お疲れ様です」

「小宮くんも今帰り?」
 開いたエレベーターのドアへ手を添えて、自然なしぐさで私をエスコートしながら彼は答えた。
「僕も仕事が終わって帰ってきたところです」
 社会人だったんだ? てっきり学生だと思っていた。
 だって彼がスーツを着ているところなんて一度も見たことないから。今だってラフな普段着だ。
「言ってませんでしたっけ? 僕、マッサージ師なんです」
 私の思考を読み取ったかのように彼が答えた。
「へー、そうなんだ」

「あ、そうだ。今日、お客さんからライトをもらったんですけど、どうしようかなって困っていたところなんです。嫌でなければもらっていただけませんか……」
 彼はカバンから可愛らしいクマの形をしたフットライトを取り出した。
 寝室の足元なんかによく使うコンセントに刺すタイプのライトだった。
「可愛い……。もらっていいの?」
「是非。僕の部屋に置くにはちょっと可愛すぎますから。なんか押しつけるようで、すみません」
 確かに可愛らしいクマの形は小宮くんのイメージには合わない。
「ありがとう、大事にします」

 小宮くんは安堵したようににこっと笑った。
 それぞれの部屋のドアを開け、私たちは、
「おやすみなさい」
 と言って別れた。


「隣に越して来ました、小宮です」
 と彼が挨拶に来てくれたのは一ヶ月ほど前のことだった。
 一人暮らし用のワンルームマンションではそういう挨拶回りをする人って少ないから、律儀なんだなぁと驚いた。
 それ以来、会えばこうやって挨拶程度の会話をする仲になった。

 私にとって彼は退屈な日常の中の唯一の癒しと言っても過言ではない特別な存在だけど、彼の方は私のことなんて何とも思っていないだろう。
 きっと彼はこのマンションに住む全員にあんな風に感じよく接しているのだろうし。

 さっそく私は彼からもらった可愛らしいクマのライトを部屋のコンセントへ刺してみた。なかなか可愛い。
 そしてコンビニで買ってきた缶ビールなどを冷蔵庫へ入れた。

 シャワーを浴びて火照った体へ、冷たいビールを流し込む。
 ……ああ、幸せ。
 枝豆とベビーチーズをつまみながら、スマホを開いた。

「お久しぶり。本日、長女が誕生しました」
 学生時代の友達からそんなメッセージと共に生まれたてのしわくちゃな赤ちゃんの写真が届いていた。
 確か一昨年、結婚式には呼ばれたけど、しばらく会っていなかった間に妊娠してたんだ?
 それすら知らなかった……。

「おめでとう。とっても可愛いね! 母子ともに元気でよかった」
 いつも送るテンプレ返信を淡々と入力し、素早く送信した。

 今年28歳。友達や会社の同期など私の周りには今、結婚と出産の大波が来ている。
 毎月のように結婚式に呼ばれてご祝儀は払う一方。

 現在、私には彼氏すらいない。
 過去には一度だけ男性と交際したことがあるけど……。
 高校時代に初めてできた一歳年上の彼氏。
 彼に暴力を振るわれて以来、私はすっかり男性が怖くなってしまい、男性との関わりを極力避けて生きてきた。

 でも私、ずっとこのまま一人でいいのかな?
 心の奥底じゃ、友達や同僚が優しい彼氏や旦那さんに溺愛されているエピソードを聞いてはとても羨ましく思っている……。
 私だって格好良くて優しい彼氏や旦那さんに愛されたいんだ。誰かとイチャイチャしたい。

 そのためには何か行動を起こさなきゃ、と思いながらも仕事に追われて毎日があっという間に過ぎていく……。
 そうじゃなくても会社とマンションの往復だけの毎日に出会いなんてないし。
 年々職場で任される仕事の責任は重くなって、休日もサービス出勤ばかりでプライベートな時間なんてろくに取れない……。
「はあ……」
 そう思うと大きなため息が出た。

 憂鬱な気持ちを紛らわすために冷蔵庫から新しい缶ビールを取り出してプシュッと開けた。
 私も優しい彼氏がほしい。誰かに甘えたい……。
 色々な焦りとかストレスとかで、なんかもう押しつぶされそう……。
「うう……、癒されたい……」
 そんな調子で私はこの日、お酒を飲み過ぎた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

今日の授業は保健体育

にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり) 僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。 その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。 ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...