131 / 142
第十三章 現実逃避のバカンス
131.逃走
しおりを挟む
翌朝、日の出前の朝焼けに、水平線に近い空がオレンジ色に染まっていた。
お灸を据えられて腫れていた胸の先へ恐る恐る指を這わせる。昨日はヒリヒリしていた乳輪や乳頭に触れても痛みや違和感がない。ルークが丹念に薬を塗り込んでくれていたおかげだろうか。
部屋の中は薄暗いので明かりをつけて鏡の前に立つと、乳首とクリトリスがすっかり元に戻っていた。
よかった。元々透き通るほど肌が白いせいで不自然に赤くなっていた両胸は目立って仕方がなく、外を歩くのに気が引けていたのだ。
「シュライフェ様、おはようございます」
使用人の控室のドアが開いて、ルークが部屋に入ってきた。
「すぐに朝食の支度を……」
「いや、朝食などいい。それより早く」
俺はルークの手を引いてコテージを出た。
日の出前でまだ他の利用者は寝ているのだろう、辺りは静まり返っている。数棟のコテージを繋ぐ桟橋を足早に歩いて浜辺を目指した。
「一体どうしたというのです?」
ルークは戸惑いながらも俺に手を引かれながら歩いていた。
「今日もまた島民が迎えに来て、癒しだ健康だと妙なことをさせられるだろう? その前に逃げるんだっ!」
連日、ほとんど丸裸の格好でヨガだのお灸だのさせられて、もうこりごりだった。
「逃げるって、そんなことをして怒られないでしょうか?」
島民たちは言うことを聞かないと全裸ではりつけにすると脅かしてくるが、ヨガやお灸をさせられ人が見ているという中で局部丸出しにしておしっこを漏らしたり潮を吹いたりと痴態を晒す方がよっぽど恥ずかしい。
「全裸ではりつけの刑なら、そっちのがマシだっ!」
桟橋を渡り切り、浜辺へ着いた。早朝だというのに散歩や体操をしている人たちがちらほらといる。みんな前掛け一枚の格好でよくくつろいで過ごせるものだ。
辺りはどんどん明るくなる。水平線から太陽が出始めた。よかったこれなら林へ入り込める。
ルークの手を引いて、草木の生い茂る林の中を進んだ。岩壁にぽっかりと開いた洞窟があって、俺たちはそこへ隠れた。
「ふぅ……、ここなら見つかるまい」
近くには滝があり、周囲の木々には南国らしい果物が実っている。水や食べ物に困ることもないだろう。
ルークを振り返ると、照れてはにかんだような、妙な表情をしていた。
「なんだよ、その顔は?」
「いえ、私も連れてきてくださったことが嬉しくて……」
ああ、そうか。逃げるならとっとと一人で逃げればよかったのか。ルークに言われてから気がついた。
「……別に、深い意味はないっ、使用人がいないと不便だからだっ!」
お灸を据えられて腫れていた胸の先へ恐る恐る指を這わせる。昨日はヒリヒリしていた乳輪や乳頭に触れても痛みや違和感がない。ルークが丹念に薬を塗り込んでくれていたおかげだろうか。
部屋の中は薄暗いので明かりをつけて鏡の前に立つと、乳首とクリトリスがすっかり元に戻っていた。
よかった。元々透き通るほど肌が白いせいで不自然に赤くなっていた両胸は目立って仕方がなく、外を歩くのに気が引けていたのだ。
「シュライフェ様、おはようございます」
使用人の控室のドアが開いて、ルークが部屋に入ってきた。
「すぐに朝食の支度を……」
「いや、朝食などいい。それより早く」
俺はルークの手を引いてコテージを出た。
日の出前でまだ他の利用者は寝ているのだろう、辺りは静まり返っている。数棟のコテージを繋ぐ桟橋を足早に歩いて浜辺を目指した。
「一体どうしたというのです?」
ルークは戸惑いながらも俺に手を引かれながら歩いていた。
「今日もまた島民が迎えに来て、癒しだ健康だと妙なことをさせられるだろう? その前に逃げるんだっ!」
連日、ほとんど丸裸の格好でヨガだのお灸だのさせられて、もうこりごりだった。
「逃げるって、そんなことをして怒られないでしょうか?」
島民たちは言うことを聞かないと全裸ではりつけにすると脅かしてくるが、ヨガやお灸をさせられ人が見ているという中で局部丸出しにしておしっこを漏らしたり潮を吹いたりと痴態を晒す方がよっぽど恥ずかしい。
「全裸ではりつけの刑なら、そっちのがマシだっ!」
桟橋を渡り切り、浜辺へ着いた。早朝だというのに散歩や体操をしている人たちがちらほらといる。みんな前掛け一枚の格好でよくくつろいで過ごせるものだ。
辺りはどんどん明るくなる。水平線から太陽が出始めた。よかったこれなら林へ入り込める。
ルークの手を引いて、草木の生い茂る林の中を進んだ。岩壁にぽっかりと開いた洞窟があって、俺たちはそこへ隠れた。
「ふぅ……、ここなら見つかるまい」
近くには滝があり、周囲の木々には南国らしい果物が実っている。水や食べ物に困ることもないだろう。
ルークを振り返ると、照れてはにかんだような、妙な表情をしていた。
「なんだよ、その顔は?」
「いえ、私も連れてきてくださったことが嬉しくて……」
ああ、そうか。逃げるならとっとと一人で逃げればよかったのか。ルークに言われてから気がついた。
「……別に、深い意味はないっ、使用人がいないと不便だからだっ!」
89
お気に入りに追加
400
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
双葉病院小児病棟
moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。
病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。
この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。
すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。
メンタル面のケアも大事になってくる。
当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。
親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。
【集中して治療をして早く治す】
それがこの病院のモットーです。
※この物語はフィクションです。
実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。
こども病院の日常
moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。
18歳以下の子供が通う病院、
診療科はたくさんあります。
内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc…
ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。
恋愛要素などは一切ありません。
密着病院24時!的な感じです。
人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。
※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。
歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?
すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。
お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」
その母は・・迎えにくることは無かった。
代わりに迎えに来た『父』と『兄』。
私の引き取り先は『本当の家』だった。
お父さん「鈴の家だよ?」
鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」
新しい家で始まる生活。
でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。
鈴「うぁ・・・・。」
兄「鈴!?」
倒れることが多くなっていく日々・・・。
そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。
『もう・・妹にみれない・・・。』
『お兄ちゃん・・・。』
「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」
「ーーーーっ!」
※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。
※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。
※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる