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第十三章 現実逃避のバカンス
112.カトリーナの駆け落ち
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カトリーナと結婚しなくていいだなんて、今まで想像すらしたことがなかった。俺にとってもカトリーナにとってもそれが最善であることは言うまでもない。
カトリーナと結婚しなくていいとなると、俺はずっとルークをそばにおいて生きていられるのか……。そう思うと気持ちが舞い上がって、プライドを捨てる覚悟があると言ってしまった。
プライドを捨てる覚悟が必要ということは多くの人前で恥をかくとか、自信を失うような屈辱的な展開が待っているということだろうか……。
ライアはどうやってカトリーナと俺の結婚を回避させるつもりだろうか。いくら魔術師とはいえ本当にそんなことができるのだろうか……。
「シュライフェ様っ、大変です」
いつになくルークが息を切らして取り乱した様子で部屋に入って来た。
「何だ?」
「カトリーナ様が……!」
行方をくらませた。聞けば、幼馴染みの軍人ニコラスと共に駆け落ちしたらしいとのことだった。
俺との婚前旅行のためだと言って準備していた荷物を持って、カトリーナはニコラスと共に城の者が誰も気付かぬ夜のうちに行方をくらませてしまったという。もちろん国王の命令で軍が国中をくまなく探したが、騒ぎになる頃にはもう国境を越えていたらしく、手掛かりすらもつかめないのだという。
俺としては最高に嬉しいニュースだった。このままカトリーナの行方がわからないままならば、もう俺は自由の身の上ではないか。
どうなるか、とハラハラしながら続報を待っていたが、数日経ってもカトリーナたちは見つからないままのようだった。
「シュライフェ様っ……」
俺にそのことを報告しに来たルークは心配そうに俺の顔を見ていた。
「なんて顔をしている、最高にいい知らせじゃないか。カトリーナがいなくなれば、俺はもう結婚の心配をしなくていいのだから」
ルークと一緒にいられるということだけではなく、アソコを男に戻さなければという焦りからも解放されるのだ。
せいせいしたという表情を俺が向けても、ルークの顔は晴れなかった。
「本当に気の毒よね」
「かわいそう……」
廊下を曲がったとき、何やらひそひそと噂話をしていた二人のメイドが俺の顔を見てギクッと飛びあがるほど驚いていた。
「なんだ? 驚かせたか?」
俺は悪かったなと声をかけた。
「いえ、何でもございません」
「違います、違うんですっ」
二人は異様なほど慌てふためいて逃げ出してしまった。
気の毒? かわいそう? それってまさか俺のことか!?
新聞や週刊誌を開いてみると、どこもかしこも俺のニュースだらけだ。
「な、なんだこれ!? シュライフェ王子、最愛の許嫁に婚約破棄される、だと!?」
カトリーナと結婚しなくていいとなると、俺はずっとルークをそばにおいて生きていられるのか……。そう思うと気持ちが舞い上がって、プライドを捨てる覚悟があると言ってしまった。
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ライアはどうやってカトリーナと俺の結婚を回避させるつもりだろうか。いくら魔術師とはいえ本当にそんなことができるのだろうか……。
「シュライフェ様っ、大変です」
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「何だ?」
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俺としては最高に嬉しいニュースだった。このままカトリーナの行方がわからないままならば、もう俺は自由の身の上ではないか。
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俺にそのことを報告しに来たルークは心配そうに俺の顔を見ていた。
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