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第十二章 本音の薬
111.ライアの提案
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翌日、ライアが城にやって来た。
「おい、貴様のせいで大変な目に遭ったぞっ!」
応接間のドアを勢いよく開けて、俺は白黒頭に怒鳴りつけた。
「何が、飲めば楽になるだっ!」
騙しやがって! あの薬のせいで俺はルークに恥ずかしいことを散々口走ってしまったじゃないか。
「おや、そのご様子だと薬がしっかり効いたみたいですね。よかったじゃないですか」
俺がすごい剣幕で迫っているというのに、ライアはソファーにゆったりと身を沈めたままのんびりとした口調でそう言った。
「よかっただと!?」
「本心を言えずに心が爆発しそうだったのですから、すっきりして楽になれたでしょう?」
「ら、楽にだと!?」
そんなこと思ってもみなかった。俺の言動で自分自身がどういう感情になるかなんてこれまで考えてこなかった。ただ周囲にどう思われるかばかり気にして生きてきたから。
「最愛の従者に想いを伝えられてよかったじゃないですか」
「でもっ、ルークと気持ちが通じたところで、それが何になると言うのだっ!? 俺はもうすぐカトリーナと結婚しなければならない身の上だぞっ!」
好きだとか、ずっとそばにいてほしいとか伝えてしまったが、ルークに淡い期待を持たせて、後々傷つけることになってしまうのではないだろうか。国中の大きな期待を受けて育った俺は、誰かの期待を裏切ってがっかりさせることが嫌なのだ。
「隣国の王女となんて結婚しなければいいのに。自分で嫌だって言ってたじゃないですか」
「な、何を言っている、カトリーナは許嫁だぞ。俺は彼女と結婚しなければならないんだ」
カトリーナと結婚しないなんて選択肢は俺の人生にはないのだ。
「どうして?」
「どうしてって……、この国のためだ。軍事力の弱いこの国が今後も他国に攻め込まれずに存続するためには隣国との強い結びつきが必要だからだ」
「それで、王女と結婚さえすればこの国は絶対安全になるとでもお考えですか?」
ライアは心底不思議そうに首を傾げていた。こいつのクマの濃い奇妙な顔を見ていると、俺は次第に幼い頃から言い聞かせられていたことへの違和感を覚え始めた。
カトリーナと結婚したら隣国との国交は今よりさらに盛んになるだろう。それによりきっといい面も悪い面も生じることだろう。
「むしろ、守ってもらうつもりが、この国を乗っ取られたりして」
「……っ!」
頭の中を何度もかすめてはいたものの、決して考えないようにしていたことをライアにずばりと言われて、俺は息を呑んだ。
「あはは、それはさすがに冗談です。でも結婚したくないなら、しなくてもいいんじゃないですか」
「……しないなどという選択肢は俺にはない」
俺だってしないで済むならしたくないのだが。
「ありますよ、自分で望めば。自分の人生は自分のものなんですから」
「……っ」
ライアの怪しい笑顔に俺は眉をひそめた。
「あなたにプライドを捨てる覚悟さえあれば、隣国の王女との結婚をなしにしてあげられますよ」
「プライドを捨てる覚悟だと……!? まさか、俺のあそこが女性器だと公表しろと言うんじゃないだろうな!?」
そんなことは絶対に嫌だ。
「はは、それでもいいかもしれませんが、そうじゃありません」
一瞬考えた後、俺は決意した。
「そうじゃないなら、プライドを捨てる覚悟はある」
「おい、貴様のせいで大変な目に遭ったぞっ!」
応接間のドアを勢いよく開けて、俺は白黒頭に怒鳴りつけた。
「何が、飲めば楽になるだっ!」
騙しやがって! あの薬のせいで俺はルークに恥ずかしいことを散々口走ってしまったじゃないか。
「おや、そのご様子だと薬がしっかり効いたみたいですね。よかったじゃないですか」
俺がすごい剣幕で迫っているというのに、ライアはソファーにゆったりと身を沈めたままのんびりとした口調でそう言った。
「よかっただと!?」
「本心を言えずに心が爆発しそうだったのですから、すっきりして楽になれたでしょう?」
「ら、楽にだと!?」
そんなこと思ってもみなかった。俺の言動で自分自身がどういう感情になるかなんてこれまで考えてこなかった。ただ周囲にどう思われるかばかり気にして生きてきたから。
「最愛の従者に想いを伝えられてよかったじゃないですか」
「でもっ、ルークと気持ちが通じたところで、それが何になると言うのだっ!? 俺はもうすぐカトリーナと結婚しなければならない身の上だぞっ!」
好きだとか、ずっとそばにいてほしいとか伝えてしまったが、ルークに淡い期待を持たせて、後々傷つけることになってしまうのではないだろうか。国中の大きな期待を受けて育った俺は、誰かの期待を裏切ってがっかりさせることが嫌なのだ。
「隣国の王女となんて結婚しなければいいのに。自分で嫌だって言ってたじゃないですか」
「な、何を言っている、カトリーナは許嫁だぞ。俺は彼女と結婚しなければならないんだ」
カトリーナと結婚しないなんて選択肢は俺の人生にはないのだ。
「どうして?」
「どうしてって……、この国のためだ。軍事力の弱いこの国が今後も他国に攻め込まれずに存続するためには隣国との強い結びつきが必要だからだ」
「それで、王女と結婚さえすればこの国は絶対安全になるとでもお考えですか?」
ライアは心底不思議そうに首を傾げていた。こいつのクマの濃い奇妙な顔を見ていると、俺は次第に幼い頃から言い聞かせられていたことへの違和感を覚え始めた。
カトリーナと結婚したら隣国との国交は今よりさらに盛んになるだろう。それによりきっといい面も悪い面も生じることだろう。
「むしろ、守ってもらうつもりが、この国を乗っ取られたりして」
「……っ!」
頭の中を何度もかすめてはいたものの、決して考えないようにしていたことをライアにずばりと言われて、俺は息を呑んだ。
「あはは、それはさすがに冗談です。でも結婚したくないなら、しなくてもいいんじゃないですか」
「……しないなどという選択肢は俺にはない」
俺だってしないで済むならしたくないのだが。
「ありますよ、自分で望めば。自分の人生は自分のものなんですから」
「……っ」
ライアの怪しい笑顔に俺は眉をひそめた。
「あなたにプライドを捨てる覚悟さえあれば、隣国の王女との結婚をなしにしてあげられますよ」
「プライドを捨てる覚悟だと……!? まさか、俺のあそこが女性器だと公表しろと言うんじゃないだろうな!?」
そんなことは絶対に嫌だ。
「はは、それでもいいかもしれませんが、そうじゃありません」
一瞬考えた後、俺は決意した。
「そうじゃないなら、プライドを捨てる覚悟はある」
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