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第十一章 鏡の秘密
94.ハンナという女
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目が覚めると朝だった。自分の部屋のいつものベッドで眠っていた。きちんとパジャマも着ている。
ルークの部屋の鏡のことを思い出して、顔が火を噴きそうなほど熱くなった。過去の自慰行為の全てをルークに見られていたと思うとやっぱり恥ずかしくていたたまれない。
椅子のひじ掛けへ両足をひっかけて張型を挿入した自分の姿を思い出して、俺は自分の金髪を両手でぐしゃっと握った。
「……くっ……」
問いただしたときのルークの開き直った表情も許しがたい。いつもは素直に謝るくせに。
俺の身の安全のためとは言っていたものの、こっそり部屋を覗くなんてどう考えてもあんまりだ。そうならそうと前もって言っておいてくれればよかったものを。
次期国王として恥じぬよう、いついかなるときも人目を気にして生きてきた俺にとって、耐えがたい屈辱だ。
父上にあの鏡のことを話してしまおう。プライバシーを侵害されたと訴えれば、ルークはクビにされるかもしれない。ルークだって職を失っては困るだろうから、クビにされまいときっとあの鏡のことを俺に詫びるだろう。
「そうだ、そうしようっ!」
この俺に恥をかかせるとどうなるか思い知らせてやろうっ!
いつものように鏡の前でパジャマを脱ごうとして躊躇った。見られているかもしれないとわかった今、これまで通りに鏡の前で着替えるのは気が引ける。服を持ってバスルームの脱衣場で着替えを済ませた。
父上の元へ言いつけに行こうと城の中を歩いていると、中庭でルークの姿を見つけてドキッとした。一人のメイドと木陰で何やら身を寄せ合っているのだ。
俺は気づかれないように廊下の陰に身を隠しながら二人の様子を見た。本を見ながら何やらひそひそと話しており、ルークは笑みを浮かべた。
二人の距離はずいぶんと近かった。
ルークはメイドとあんなに仲がよかっただろうか? 見てくれのいいルークは以前からメイドたちからきゃあきゃあ言われてはいたが、特別親しい者がいたなんて……。
俺にとっては名前も知らない下級使用人である編み込み頭のそのメイドのことが頭から離れなかった。ルークが彼女に向けた微笑みも。
父上の元へ行くのを諦めて、廊下を引き返した。ワインセラーを覗いて上級使用人に声をかけた。
「なあ、ちょっと教えてくれ」
「シュライフェ様……、いかがいたしましたか?」
俺が来ると思っていなかったのだろう、使用人は驚いていた。
「長い髪を編み込みにしていて、若くて痩せていて、頬に少しそばかすのあるメイドの名はなんと言う」
「ハンナでございましょうか? ハンナが何か粗相を?」
「いや。別に何でもない」
何事かとぎょっとする使用人にそれだけ言い、俺はワインセラーを出た。
ルークの部屋の鏡のことを思い出して、顔が火を噴きそうなほど熱くなった。過去の自慰行為の全てをルークに見られていたと思うとやっぱり恥ずかしくていたたまれない。
椅子のひじ掛けへ両足をひっかけて張型を挿入した自分の姿を思い出して、俺は自分の金髪を両手でぐしゃっと握った。
「……くっ……」
問いただしたときのルークの開き直った表情も許しがたい。いつもは素直に謝るくせに。
俺の身の安全のためとは言っていたものの、こっそり部屋を覗くなんてどう考えてもあんまりだ。そうならそうと前もって言っておいてくれればよかったものを。
次期国王として恥じぬよう、いついかなるときも人目を気にして生きてきた俺にとって、耐えがたい屈辱だ。
父上にあの鏡のことを話してしまおう。プライバシーを侵害されたと訴えれば、ルークはクビにされるかもしれない。ルークだって職を失っては困るだろうから、クビにされまいときっとあの鏡のことを俺に詫びるだろう。
「そうだ、そうしようっ!」
この俺に恥をかかせるとどうなるか思い知らせてやろうっ!
いつものように鏡の前でパジャマを脱ごうとして躊躇った。見られているかもしれないとわかった今、これまで通りに鏡の前で着替えるのは気が引ける。服を持ってバスルームの脱衣場で着替えを済ませた。
父上の元へ言いつけに行こうと城の中を歩いていると、中庭でルークの姿を見つけてドキッとした。一人のメイドと木陰で何やら身を寄せ合っているのだ。
俺は気づかれないように廊下の陰に身を隠しながら二人の様子を見た。本を見ながら何やらひそひそと話しており、ルークは笑みを浮かべた。
二人の距離はずいぶんと近かった。
ルークはメイドとあんなに仲がよかっただろうか? 見てくれのいいルークは以前からメイドたちからきゃあきゃあ言われてはいたが、特別親しい者がいたなんて……。
俺にとっては名前も知らない下級使用人である編み込み頭のそのメイドのことが頭から離れなかった。ルークが彼女に向けた微笑みも。
父上の元へ行くのを諦めて、廊下を引き返した。ワインセラーを覗いて上級使用人に声をかけた。
「なあ、ちょっと教えてくれ」
「シュライフェ様……、いかがいたしましたか?」
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「ハンナでございましょうか? ハンナが何か粗相を?」
「いや。別に何でもない」
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