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第一章 18歳の誕生パーティー
1.国を挙げてのパーティー
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朝から花火が打ち上げられ、楽隊を率いて盛大なパレードが行われた。
この日のために特注されたオープンタイプの馬車の中から手を振る俺の姿を一目見ようと、沿道には多くの人々が集まっている。
「シュライフェ王子、おめでとうございます」
「きゃああ、なんて素敵なのかしら」
「シュライフェさまぁ♡」
沿道の人混みから黄色い歓声が上がる。
「王子様、おめでとう!」
手にした小さな国旗や横断幕を振って、老若男女問わずみんなが必死に俺に祝いの言葉を伝えている。
国王家の長男として生まれた俺は、王太子にしてこの国唯一の王子だ。
サラサラな金髪と宝石のような水色の瞳、整った目鼻立ち、剣術や乗馬で鍛えた肉体は、自分で見ても美しいと思う。だからみんながこうして騒ぐのも無理はないのだ。
夜になると城の中で国中の重鎮たちを招いての晩餐会が行われた。
遠方から来た著名な政治家の一人が俺に笑顔を向けた。
「王国全土が飲めや歌えのお祭り騒ぎです。シュライフェ様の人気ぶりが窺えますな」
一人しかいない大事な王子がこの国の成人である18歳になったのだから、そりゃ国を挙げてのお祝いになるだろう。
会場内は和やかな雰囲気だった。普段は厳しい国王である父上が嬉しそうに祝いの言葉を述べ、豪華な料理と酒を振舞った。
参加者たちは代わる代わる俺のところへやってきて、どんどん酒を勧めた。
「いやあ、もう酒は十分だ」
「そうおっしゃらず。めでたい日ですから。ささ、もう一杯」
18歳になって酒を飲めるようになったばかりだから、俺はまだそんなにアルコールが得意ではなかった。でも遥々やってきた父上の古くからの知人たちにワインを注がれると、飲まないなんて失礼はできない。
次期国王であるという自覚をいかなるときも心に置いて行動するよう、幼い頃から徹底的に教育されてきた俺は、例え酒一杯の事でも格好悪い振る舞いはしたくなかったのだ。
あっという間に俺は慣れない酒を飲み過ぎて、気付いたときには目の前がふらふらとしていた。
「肩を貸せ。少し夜風に当たりたい」
背後に控えている従者のルークに耳打ちした。
「大丈夫ですか、シュライフェ様」
支えられて歩き、誰もいないバルコニーへ出た。ベンチにもたれて、美しい星空を眺めた。火照った体に外の涼しい空気が心地いい。
「お水をお持ちしましょう」
ルークがすぐに水を取ってきて、俺にゆっくりと飲ませてくれた。
「ご気分はいかがですか?」
「フン、このくらいの酔いなんて、すぐに醒める」
ツンとそっぽを向いて返事をしたのは、俺が以前からこいつに対して嫉妬心を持っているからだ。
城内で定期的に行われる剣術大会。名声欲しさに国中の猛者が集まるが、幼い頃から剣術・馬術の英才教育を受けていた俺に敵う者は長年現れず、いつも俺が優勝していた。ところが半年前の剣術大会でこの俺を負かして優勝したのが、このルークだった。
名のある剣士の家系に生まれ、師匠である祖父と共に山に籠って、ひたすら修行に励んできたのだという。すらりと背が高くて容姿端麗な黒髪の美男子なもんだから、これまで俺に夢中だった城内のメイドたちがきゃあきゃあ言っていた。
俺からしたらいけ好かないこの男を、父上は腕前を気に入ったと言って、俺の従者として雇ってしまったのだ。
「あまりご無理をされない方が……」
いつでも冷静なコイツからしたら大酒を飲んで浮かれる俺の姿はバカげて見えることだろう。でも俺にとって今日という日は特別な日なのだ。
「うるさいな。知ったような口をきくな! 剣士のお前に俺の気持ちなどわかるわけないだろう」
王位継承順位一位の王子という立場に、これまで俺自身がどれほどプレッシャーを感じて生きてきたことか。
「ええ、おっしゃる通りです。シュライフェ様にも私の気持ちがおわかりにならないのと同じです……」
ルークは苦しそうにそう言った。こいつが俺に言い返すなんて珍しい。
それにどういう意味だ? ルークの気持ちだと……?
この日のために特注されたオープンタイプの馬車の中から手を振る俺の姿を一目見ようと、沿道には多くの人々が集まっている。
「シュライフェ王子、おめでとうございます」
「きゃああ、なんて素敵なのかしら」
「シュライフェさまぁ♡」
沿道の人混みから黄色い歓声が上がる。
「王子様、おめでとう!」
手にした小さな国旗や横断幕を振って、老若男女問わずみんなが必死に俺に祝いの言葉を伝えている。
国王家の長男として生まれた俺は、王太子にしてこの国唯一の王子だ。
サラサラな金髪と宝石のような水色の瞳、整った目鼻立ち、剣術や乗馬で鍛えた肉体は、自分で見ても美しいと思う。だからみんながこうして騒ぐのも無理はないのだ。
夜になると城の中で国中の重鎮たちを招いての晩餐会が行われた。
遠方から来た著名な政治家の一人が俺に笑顔を向けた。
「王国全土が飲めや歌えのお祭り騒ぎです。シュライフェ様の人気ぶりが窺えますな」
一人しかいない大事な王子がこの国の成人である18歳になったのだから、そりゃ国を挙げてのお祝いになるだろう。
会場内は和やかな雰囲気だった。普段は厳しい国王である父上が嬉しそうに祝いの言葉を述べ、豪華な料理と酒を振舞った。
参加者たちは代わる代わる俺のところへやってきて、どんどん酒を勧めた。
「いやあ、もう酒は十分だ」
「そうおっしゃらず。めでたい日ですから。ささ、もう一杯」
18歳になって酒を飲めるようになったばかりだから、俺はまだそんなにアルコールが得意ではなかった。でも遥々やってきた父上の古くからの知人たちにワインを注がれると、飲まないなんて失礼はできない。
次期国王であるという自覚をいかなるときも心に置いて行動するよう、幼い頃から徹底的に教育されてきた俺は、例え酒一杯の事でも格好悪い振る舞いはしたくなかったのだ。
あっという間に俺は慣れない酒を飲み過ぎて、気付いたときには目の前がふらふらとしていた。
「肩を貸せ。少し夜風に当たりたい」
背後に控えている従者のルークに耳打ちした。
「大丈夫ですか、シュライフェ様」
支えられて歩き、誰もいないバルコニーへ出た。ベンチにもたれて、美しい星空を眺めた。火照った体に外の涼しい空気が心地いい。
「お水をお持ちしましょう」
ルークがすぐに水を取ってきて、俺にゆっくりと飲ませてくれた。
「ご気分はいかがですか?」
「フン、このくらいの酔いなんて、すぐに醒める」
ツンとそっぽを向いて返事をしたのは、俺が以前からこいつに対して嫉妬心を持っているからだ。
城内で定期的に行われる剣術大会。名声欲しさに国中の猛者が集まるが、幼い頃から剣術・馬術の英才教育を受けていた俺に敵う者は長年現れず、いつも俺が優勝していた。ところが半年前の剣術大会でこの俺を負かして優勝したのが、このルークだった。
名のある剣士の家系に生まれ、師匠である祖父と共に山に籠って、ひたすら修行に励んできたのだという。すらりと背が高くて容姿端麗な黒髪の美男子なもんだから、これまで俺に夢中だった城内のメイドたちがきゃあきゃあ言っていた。
俺からしたらいけ好かないこの男を、父上は腕前を気に入ったと言って、俺の従者として雇ってしまったのだ。
「あまりご無理をされない方が……」
いつでも冷静なコイツからしたら大酒を飲んで浮かれる俺の姿はバカげて見えることだろう。でも俺にとって今日という日は特別な日なのだ。
「うるさいな。知ったような口をきくな! 剣士のお前に俺の気持ちなどわかるわけないだろう」
王位継承順位一位の王子という立場に、これまで俺自身がどれほどプレッシャーを感じて生きてきたことか。
「ええ、おっしゃる通りです。シュライフェ様にも私の気持ちがおわかりにならないのと同じです……」
ルークは苦しそうにそう言った。こいつが俺に言い返すなんて珍しい。
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