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33.公開プロポーズ
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そのとき、ステージ上の彼と目が合った。
「皆さんにお知らせしたいことがあります。私は森の中の屋敷で衛兵として暮らしていたのですが、そこで知り合った女性をご紹介したいのです。ワイザー公爵家のシャルロッテ。ステージの上へ」
とよく通る声で言った。
「えっ!」
皆に紹介するだなんて……聞いてない、と私はドキッとしながら席を立った。
「どういうことなの、シャルロッテ」
隣の席にいたお母様は驚きながら私を見た。
「……さぁ?」
私はお母様に首を傾げ、ステージに上がった。
実はもうこの子は悪女じゃないんです、別人のようにいい子に生まれ変わったのです、とでもみんなの前で言ってくれるのだろうか。
大勢の人が見守る中、私たちはステージの上で見つめ合った。
彼は目元をぽっと赤く染めて、私の前で片ヒザを着いて、
「今まで伝えることができなかったが、この通り俺はこの国の王太子のアレクサンダーだ。俺の仮面の下はひどい火傷だと聞かされていたはずなのに、心の清らかな君は俺を愛してくれた。俺が誤解からひどい仕打ちをしてもそばにいてくれた。そんな君に俺は心から惹かれてしまった。結婚してほしい」
そう言ってとんでもなく大きなダイヤモンドのついた指輪を彼は差し出した。
えっ!? これってプロポーズっ!?
こんなことされると思っていなくて、私はボロボロと涙を流した。
「ダメかな?」
と彼は不安そうにこちらを見た。
私は首を振り、
「もちろん、喜んでっ!」
と指輪を受け取った。
「ははっ、ダメなのかと思った。サプライズの公開プロポーズだったんで」
彼は大きな声で参列者に言い、会場に笑いが起きた。
「おめでとうっ!」
「素敵っ、感動したわ」
「お幸せに」
二人を祝福するたくさんの拍手が沸き起った。
「どうしてこうなるのよ、納得いかないわっ!」
怒りにハンカチを食いちぎり、その辺にあった椅子を蹴飛ばしながらビアンカが言った。
彼女は完全に気が狂っていた。
「旅に出た両親の船が難破したって情報をいち早く入手したから、闇の人身売買の男を金で雇ってシャルロッテを使用人として売りに出したっていうのにっ! なんであいつが王太子妃になんのよ、こんなの納得いかないっ!」
大声を出しながら、彼女はきれいにセットされていた自分の髪を掻きむしった。
「え? 人身売買の男を金で雇った?」
暴れるビアンカを止めようと、背後まで近づいていたルイス王子が彼女に尋ねた。
ビアンカはハッと我に返って、蹴り飛ばした椅子とぐしゃぐしゃの髪をどうにかしようとしたがどうにもならない。
「ビアンカ、悪いけど君との婚約は破棄させてもらう」
「……な、なんですって! ぐぬぬっ……、いいわ、王太子じゃなくなったルイス様になんか興味がないものっ」
ビアンカは城の外へ走って行った。
式典が終わると私は真っ先に、
「あのときのおケガは?」
とアレクサンダー王子に一番気になっていたことを尋ねた。
「ああ、お前の部屋から出て行った朝の銃声か。あれには驚いたな。俺はてっきりお前の親にでも撃たれたかと思ったが、銃弾は森の木に当たっていた。猟の流れ弾だろう。俺を狙ったのなら下手すぎだ」
彼がそう言ったので、私ももう黙っていることにした。
今まで仮面をつけていたのでわからなかったが、彼は私と目が合うといつも目元に近い頬の上の方をぽっと赤く染めていたのだ。
クールな印象だった彼を少し可愛く思えた。
「皆さんにお知らせしたいことがあります。私は森の中の屋敷で衛兵として暮らしていたのですが、そこで知り合った女性をご紹介したいのです。ワイザー公爵家のシャルロッテ。ステージの上へ」
とよく通る声で言った。
「えっ!」
皆に紹介するだなんて……聞いてない、と私はドキッとしながら席を立った。
「どういうことなの、シャルロッテ」
隣の席にいたお母様は驚きながら私を見た。
「……さぁ?」
私はお母様に首を傾げ、ステージに上がった。
実はもうこの子は悪女じゃないんです、別人のようにいい子に生まれ変わったのです、とでもみんなの前で言ってくれるのだろうか。
大勢の人が見守る中、私たちはステージの上で見つめ合った。
彼は目元をぽっと赤く染めて、私の前で片ヒザを着いて、
「今まで伝えることができなかったが、この通り俺はこの国の王太子のアレクサンダーだ。俺の仮面の下はひどい火傷だと聞かされていたはずなのに、心の清らかな君は俺を愛してくれた。俺が誤解からひどい仕打ちをしてもそばにいてくれた。そんな君に俺は心から惹かれてしまった。結婚してほしい」
そう言ってとんでもなく大きなダイヤモンドのついた指輪を彼は差し出した。
えっ!? これってプロポーズっ!?
こんなことされると思っていなくて、私はボロボロと涙を流した。
「ダメかな?」
と彼は不安そうにこちらを見た。
私は首を振り、
「もちろん、喜んでっ!」
と指輪を受け取った。
「ははっ、ダメなのかと思った。サプライズの公開プロポーズだったんで」
彼は大きな声で参列者に言い、会場に笑いが起きた。
「おめでとうっ!」
「素敵っ、感動したわ」
「お幸せに」
二人を祝福するたくさんの拍手が沸き起った。
「どうしてこうなるのよ、納得いかないわっ!」
怒りにハンカチを食いちぎり、その辺にあった椅子を蹴飛ばしながらビアンカが言った。
彼女は完全に気が狂っていた。
「旅に出た両親の船が難破したって情報をいち早く入手したから、闇の人身売買の男を金で雇ってシャルロッテを使用人として売りに出したっていうのにっ! なんであいつが王太子妃になんのよ、こんなの納得いかないっ!」
大声を出しながら、彼女はきれいにセットされていた自分の髪を掻きむしった。
「え? 人身売買の男を金で雇った?」
暴れるビアンカを止めようと、背後まで近づいていたルイス王子が彼女に尋ねた。
ビアンカはハッと我に返って、蹴り飛ばした椅子とぐしゃぐしゃの髪をどうにかしようとしたがどうにもならない。
「ビアンカ、悪いけど君との婚約は破棄させてもらう」
「……な、なんですって! ぐぬぬっ……、いいわ、王太子じゃなくなったルイス様になんか興味がないものっ」
ビアンカは城の外へ走って行った。
式典が終わると私は真っ先に、
「あのときのおケガは?」
とアレクサンダー王子に一番気になっていたことを尋ねた。
「ああ、お前の部屋から出て行った朝の銃声か。あれには驚いたな。俺はてっきりお前の親にでも撃たれたかと思ったが、銃弾は森の木に当たっていた。猟の流れ弾だろう。俺を狙ったのなら下手すぎだ」
彼がそう言ったので、私ももう黙っていることにした。
今まで仮面をつけていたのでわからなかったが、彼は私と目が合うといつも目元に近い頬の上の方をぽっと赤く染めていたのだ。
クールな印象だった彼を少し可愛く思えた。
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