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22.暗闇の中、仮面を外した彼※
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私はその夜、シュヴァルツ様の寝室をノックした。
彼に呼びつけられたのではなく、自分から彼の寝室へやって来たのは初めてだった。
「どうした……?」
仮面をつけたままベッドで本を読んでいた彼は、何の用だと私を見た。
「今日は本当に助けていただいてありがとうございました」
「わざわざそんなことを言いに来たのか?」
彼は本を閉じてそれをベッドサイドへ置いて身を起こした。
「ずっとシュヴァルツ様に隠していたことがあるんです。実は私は本物のシャルロッテじゃないんです」
「……は? 貴様、何を言っている?」
「こんなことを言って信じてもらえるかわかりませんが、正直にお話しすると私は他の世界に生きていた人間で、ルイス王子に婚約破棄される公爵令嬢の夢を見たと思ったら、今この世界にこの姿でいたのです」
急にこんなことを聞いて、信じられるはずもない。
頭がおかしくなったと思ったのだろうか、彼は黙って私を見ていた。
「だからシュヴァルツ様とシャルロッテの過去について私は何も知らないのですが、それでも私はシュヴァルツ様のことが好きなんです。以前、森で崖から落ちて足を痛めていたところを助けていただいたときからずっと……」
仮面をつけている彼の感情は読み取れない。
ただ驚いているのは確かだ。ベッドのふちに座ってこちらを見たまま、彼はまだ何も答えない。
やっぱり言わない方がよかったのではないかと少し後悔した。
私は彼の前の床へ両ヒザをついて彼のヒザへ頬擦りした。
「シュヴァルツ様のそばにいたくて今まで言い出せませんでした。本物のシャルロッテじゃないと言えば、もうそばに置いてもらえないのではないかと思って……私はシュヴァルツ様のそばにいたいのです」
彼は右手を伸ばし、私の頬にそっと触れた。
「……俺も薄々、勘づいていたんだ」
「え……?」
「稀代の悪女であるはずのお前が明るく素直だし、ずいぶんとしおらしくておかしいなと思ったんだ。でもそれは本物の悪女であるが故の演技なのではないかとも思った。自分の都合で人に毒を盛って殺してしまうような悪女には、自分をよく見せるための演技など容易いことなんじゃないかと」
私の手を引いて、彼は私をベッドへ誘い込んだ。
ランプの明かりを消して、私をそっと押し倒した。
「俺は今朝、お前がいなくなっているとマリーから聞いて、お前が俺から逃げ出したんだと思った。ショックだったんだ。もう二度と会えないんじゃないかと思った」
暗闇の中、彼がするりと紐を解いて仮面を外し、それをベッドサイドの棚へ置いた音がした。
彼の左手が仰向けに寝ている私の顔のすぐ横のマットレスへ置かれた感覚がした。そして右手であごを掴まれたと思ったら、私の唇へ彼の唇が重なった。
キス、されてる……。
考えてみれば彼とのキスはこれが初めてだった。ぬるりと唇を割って温かな舌がぬるりと入り込んだ。私の舌に絡みつき、彼の口内へと導かれ、ちゅうちゅうと吸われた。
そうしている間に彼の右手は私のブラウスのボタンを外し、私の背中へ手を忍ばせてブラジャーのホックを外した。彼の唇が私の唇から離れた。
「ずっとこうしたかった……」
私の肌に微かに触れる前髪が徐々に下へ移動して私の胸へ顔を押しつけた。
嫌でも全神経が乳房に集中する。柔らかな胸の上に彼の長いまつ毛、滑らかな頬や鼻梁が触れるのを感じた。
やっぱり彼は火傷なんてしていないのかも……。彼の温かな息が胸に触れて、心臓が激しく脈打った。
彼に呼びつけられたのではなく、自分から彼の寝室へやって来たのは初めてだった。
「どうした……?」
仮面をつけたままベッドで本を読んでいた彼は、何の用だと私を見た。
「今日は本当に助けていただいてありがとうございました」
「わざわざそんなことを言いに来たのか?」
彼は本を閉じてそれをベッドサイドへ置いて身を起こした。
「ずっとシュヴァルツ様に隠していたことがあるんです。実は私は本物のシャルロッテじゃないんです」
「……は? 貴様、何を言っている?」
「こんなことを言って信じてもらえるかわかりませんが、正直にお話しすると私は他の世界に生きていた人間で、ルイス王子に婚約破棄される公爵令嬢の夢を見たと思ったら、今この世界にこの姿でいたのです」
急にこんなことを聞いて、信じられるはずもない。
頭がおかしくなったと思ったのだろうか、彼は黙って私を見ていた。
「だからシュヴァルツ様とシャルロッテの過去について私は何も知らないのですが、それでも私はシュヴァルツ様のことが好きなんです。以前、森で崖から落ちて足を痛めていたところを助けていただいたときからずっと……」
仮面をつけている彼の感情は読み取れない。
ただ驚いているのは確かだ。ベッドのふちに座ってこちらを見たまま、彼はまだ何も答えない。
やっぱり言わない方がよかったのではないかと少し後悔した。
私は彼の前の床へ両ヒザをついて彼のヒザへ頬擦りした。
「シュヴァルツ様のそばにいたくて今まで言い出せませんでした。本物のシャルロッテじゃないと言えば、もうそばに置いてもらえないのではないかと思って……私はシュヴァルツ様のそばにいたいのです」
彼は右手を伸ばし、私の頬にそっと触れた。
「……俺も薄々、勘づいていたんだ」
「え……?」
「稀代の悪女であるはずのお前が明るく素直だし、ずいぶんとしおらしくておかしいなと思ったんだ。でもそれは本物の悪女であるが故の演技なのではないかとも思った。自分の都合で人に毒を盛って殺してしまうような悪女には、自分をよく見せるための演技など容易いことなんじゃないかと」
私の手を引いて、彼は私をベッドへ誘い込んだ。
ランプの明かりを消して、私をそっと押し倒した。
「俺は今朝、お前がいなくなっているとマリーから聞いて、お前が俺から逃げ出したんだと思った。ショックだったんだ。もう二度と会えないんじゃないかと思った」
暗闇の中、彼がするりと紐を解いて仮面を外し、それをベッドサイドの棚へ置いた音がした。
彼の左手が仰向けに寝ている私の顔のすぐ横のマットレスへ置かれた感覚がした。そして右手であごを掴まれたと思ったら、私の唇へ彼の唇が重なった。
キス、されてる……。
考えてみれば彼とのキスはこれが初めてだった。ぬるりと唇を割って温かな舌がぬるりと入り込んだ。私の舌に絡みつき、彼の口内へと導かれ、ちゅうちゅうと吸われた。
そうしている間に彼の右手は私のブラウスのボタンを外し、私の背中へ手を忍ばせてブラジャーのホックを外した。彼の唇が私の唇から離れた。
「ずっとこうしたかった……」
私の肌に微かに触れる前髪が徐々に下へ移動して私の胸へ顔を押しつけた。
嫌でも全神経が乳房に集中する。柔らかな胸の上に彼の長いまつ毛、滑らかな頬や鼻梁が触れるのを感じた。
やっぱり彼は火傷なんてしていないのかも……。彼の温かな息が胸に触れて、心臓が激しく脈打った。
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