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3.悪役令嬢に転生!?

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 はっと目が覚めた。
 ふふ、異世界ファンタジーの夢を見ちゃった。悪役令嬢が婚約破棄されるお話ね。こういうの大好き。

 病室の白い天井がいつもと違って見えて、まだ寝ぼけているんだと思って目を擦った。
 けれど視線の先にはやっぱりレースの天蓋が見える。自宅の部屋とも明らかに雰囲気が違う。

 横を向いて手をついてみる。なんだか全身に力がみなぎっていて、信じられないほど容易に自分の体を起こすことが出来た。
 天蓋越しに見える室内はシャンデリアに猫足のソファーやチェスト、ドレッサーと、ずいぶんゴージャスだった。
 ここはどこかしら……?

「お嬢様、ご気分はいかがでございますか?」

 ベッドの横の椅子にいたメイド服の女性が慌てた様子で私の顔を覗き込んできた。
 お、お嬢様……?

「覚えていらっしゃらないんですか? シャルロッテ様は高熱をお出しになって寝込んでいらしたんですよ。ひどく汗をおかきでした。そうだ、すぐにお水をお持ち致しますね」

 と言って彼女は出て行った。

 私は一人になった部屋の中で素足のまま絨毯へ足を下ろした。
 体力の落ちたここ数年、移動は全て車いすだったから、自分の足で歩いたのは久しぶりだった。

 驚くほど体がスムーズに動いた。まだ病気の症状が軽くて学校へ通えていた頃のよう。
 ドレッサーの鏡に映った自分の姿を見て、私は驚いた。

「えええっ、誰っ?」

 美しい金色の髪に小さな顔には大きな青い瞳と高い鼻。白く抜けるようだけど決して病的ではない肌にぷっくりとした赤い唇。引き締まった細い腰や肩、大きな胸とお尻。なんとも蠱惑的な容姿になっていた。

「アイドル? お姫様? とにかくすごく可愛い……っ!」

 私、転生しちゃったんだっ! しかもこんなにきれいな女の子にっ!
 鏡に見とれているとさっきのメイドが戻って来たので、慌ててベッドへ腰かけた。

 確かに喉が渇いていたので、お水をもらって飲んだ。

「ありがとう」

 とお礼を言うと、彼女は黒いワンピースに上につけた白いエプロンに顔を擦り付けて、急にわーっと泣き出した。

「もっ、申し訳ございません、シャルロッテ様。うっ、うう……、わたくしハンナがっ、ルイス様の元へお供しながら、何のお役にも立てず……、婚約破棄という結果に……。う、うわああん……」

 ルイス様? 婚約破棄?
 それらは夢の話ではなかったのか。

「え、えっとハンナさん、泣かないでください……」

「いやですわ、お嬢様。ハンナさんだなんて……。いつものようにハンナとお呼びください。婚約破棄のショックで混乱されているのですね」

 彼女は泣き腫らして真っ赤になった目元で鼻をすすりながら言った。

「そ、そうだったわね、ハンナ。ルイス様ってルイス王子のことよね?私やっぱり婚約破棄されたのね?」

「ええ、誠に残念ながら……」

 泣き崩れる彼女の肩を支えながら、

「大丈夫、あなたのせいではないわ。泣かないで」

 と励ました。

 私の心はわくわくしてたまらなかった。
 私は異世界ファンタジーの悪役令嬢に転生したんだ。
 おまけに健康で自由に動き回ることの出来る体を手に入れた。こんな嬉しいことなんてない。

 婚約破棄なんて私にとっては問題ではなかった。
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