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第六章 連れ去らわれて

40.一緒に暮らそう

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 ここで一緒に暮らそうだって!?
 思いもよらない提案に、俺は面食らった。

「ローレンスがなかなか逃げ帰って来ないから、人食い辺境伯の元から連れ戻してやろうと僕は色々考えたんだ」

「私のことを本気で心配してくださっていたのですね」
 感激した。俺の方は何にも言わずに伯爵家を出て来てしまったというのに……。

「当然だ。僕はローレンスが大事なんだ」

 ドグマ様はフランシス様が心配しているような人食いではない。けれどドグマ様の屋敷に行ってからは俺は散々な目にあった。アソコを女性器に変えられて、耐えがたい仕打ちをされ、俺のストレスは限界だった。

 けれど、ドグマ様にバレないだろうかと、それが一番心配だった。
 魔族は独占欲が強いと言っていたから、俺がかつての主人の元で暮らしていると知ったらドグマ様から何をされるかわからない。

「しかし、ドグマ様にバレたら、フランシス様にまでご迷惑が……」
「大丈夫。バレやしないさ。僕を信じてくれ」

 ドグマ様の屋敷からずっと離れた場所にあるこのログハウスには、ウェルズリー伯爵家から連れてきた雑用係のばあやがいるだけで、その他にここを知るのは体の弱いフランシス様のために定期的に往診にやって来る主治医だけだという。

「僕とここで暮らしてくれるだろう?」
 一度言い出すと他の者の意見など絶対に聞かないフランシス様は俺がはいと言うまで拘束を解かないつもりらしかった。

 不思議な力を持つ魔族のドグマ様は俺がここにいることなんてお見通しかもしれない。けれどドグマ様が魔族ということは口外してはならないから、俺はとりあえず首を縦に振るより他になかった。
「はい、フランシス様……」

「嬉しいよ、ローレンス」
 フランシス様は俺の両手を縛っていたものを解いてくれた。自分の思い通りになると表情を一転させて美しい笑顔でニコニコ笑う。フランシス様はいつもそうだ。

***

 フランシス様はベッドで一日中寝ている日もあるが、体調がいいとヴァイオリンを弾いたり、本を読んだりして過ごしていた。

 ある日の午後、バルコニーで読書をするフランシス様の元へ俺はお茶を運んだ。
「フランシス様、紅茶とスコーンをお持ちいたしました」

 フランシス様の一番好きな茶葉、俺の手作りしたスコーンにはホイップクリームとブルーベリージャム。
 長年お仕えしているからこそ知っているフランシス様の好物だ。

「えー、紅茶かぁ……。紅茶よりハーブティーが飲みたい気分。それに今はスコーンよりキャロットケーキが食べたいんだけど……」
 本から視線を上げたフランシス様はムッと口をへの字にした。

「大変失礼いたしました、すぐにご用意いたします」
「早くして」
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