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第四章 盗み飲んだワイン
21.ワインを盗み飲み
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忠誠を示せば性器を元に戻してくれると確かに言ったのに、俺のアソコは女性のままだ。
ドグマ様は完全に俺をからかっているのだ。
俺は手洗い場の鏡に映った自分の顔を見た。
アカデミーを首席で卒業し、優秀な執事であることに誇りを持って生きてきた。容姿もよくて周囲から憧れと尊敬の眼差しを集めてきたこの俺が、主人におもちゃにされてあられもない姿を晒しているなんて……。
「くそっ……」
悔しくて下唇を噛んだ。こぶしを握り締めて、涙目になった鏡の中の自分をドンと叩いた。
行き場のないストレスが俺の心の中で爆発しそうだった。
その日、ドグマ様は昼食を食べたあと出かけて行った。
「帰りは遅くなる」
「かしこまりました」
見送りを終えると、俺はいそいそと地下への階段を降りて、ワインセラーへ向かった。
いい状態でワインを貯蔵できるよういつも暗くてひんやりとしているこの空間は、管理を任されている俺以外の者が入ることを許されていない。
所狭しと並んでいるボトルでいっぱいの木棚の間を通り、奥へと進む。
特に希少価値の高い大事なワインが保管されている一番奥の棚の前で俺は足を止めた。
希少なワインのうちの一本、最高級の赤ワインのボトルを手に取る。
今にも爆発してしまいそうなストレスを解消するため、大事な高級ワインを飲んでしまおうとこの場に来たのだ。
胸をドキドキさせながら、栓を抜いた。
テイスティング用のグラスにトク、トクと音を立ててワインを注ぐ。グラスを傾けてその美しい深い色を眺めて極上の香りを嗅いだ。
これはドグマ様のワイン……。少しだけ後ろめたさを感じながらも、ここで引き返せるわけもなく、エイっとグラスに口をつけた。
まずは舌の上で転がして香りを堪能し、ごくりと飲み込む。何とも言い表せない甘く芳醇で複雑な味わいに脳が歓喜する。
うまい……。美味いに決まっている。
そのワインはドグマ様のために用意された至高のものだ。
ドグマ様にお出しするときに味見と毒見を兼ねていつも一口飲んでいるので、ドグマ様の飲む高級ワインが美味しいということは前から知っていた。こんなふうにワインセラーの中でこっそり飲んでしまうのは初めてのことだが。
ああ、たまらない。もっと飲みたい。
空になったテイスティング用のグラスにワインを注ぐ。
「……ふぅ……♡」
ごくりと飲むと、頭がふわっとする。
俺の中で溜まりに溜まっている鬱憤がどこかへ飛んで行ってしまう気さえした。
最高級ワインはたくさんあるのだ。少しぐらいボトルが減ってもバレるはずがない。そもそもまじめな俺がこんな行動に出てしまうのはドグマ様のせいなのだから。
ワインボトルはすぐに空になってしまった。
もう一本飲んでしまおうか。
どれがいいかと棚のワインを見ていると、階段の上が騒がしくなっていることに気がついた。
階段を少し上がって耳を澄ますと、メアリーや他のメイドたちの声が聞こえた。
「おかえりなさいませ、ドグマ様」
ドグマ様の帰りは遅くなるはずでは……。
ドグマ様は完全に俺をからかっているのだ。
俺は手洗い場の鏡に映った自分の顔を見た。
アカデミーを首席で卒業し、優秀な執事であることに誇りを持って生きてきた。容姿もよくて周囲から憧れと尊敬の眼差しを集めてきたこの俺が、主人におもちゃにされてあられもない姿を晒しているなんて……。
「くそっ……」
悔しくて下唇を噛んだ。こぶしを握り締めて、涙目になった鏡の中の自分をドンと叩いた。
行き場のないストレスが俺の心の中で爆発しそうだった。
その日、ドグマ様は昼食を食べたあと出かけて行った。
「帰りは遅くなる」
「かしこまりました」
見送りを終えると、俺はいそいそと地下への階段を降りて、ワインセラーへ向かった。
いい状態でワインを貯蔵できるよういつも暗くてひんやりとしているこの空間は、管理を任されている俺以外の者が入ることを許されていない。
所狭しと並んでいるボトルでいっぱいの木棚の間を通り、奥へと進む。
特に希少価値の高い大事なワインが保管されている一番奥の棚の前で俺は足を止めた。
希少なワインのうちの一本、最高級の赤ワインのボトルを手に取る。
今にも爆発してしまいそうなストレスを解消するため、大事な高級ワインを飲んでしまおうとこの場に来たのだ。
胸をドキドキさせながら、栓を抜いた。
テイスティング用のグラスにトク、トクと音を立ててワインを注ぐ。グラスを傾けてその美しい深い色を眺めて極上の香りを嗅いだ。
これはドグマ様のワイン……。少しだけ後ろめたさを感じながらも、ここで引き返せるわけもなく、エイっとグラスに口をつけた。
まずは舌の上で転がして香りを堪能し、ごくりと飲み込む。何とも言い表せない甘く芳醇で複雑な味わいに脳が歓喜する。
うまい……。美味いに決まっている。
そのワインはドグマ様のために用意された至高のものだ。
ドグマ様にお出しするときに味見と毒見を兼ねていつも一口飲んでいるので、ドグマ様の飲む高級ワインが美味しいということは前から知っていた。こんなふうにワインセラーの中でこっそり飲んでしまうのは初めてのことだが。
ああ、たまらない。もっと飲みたい。
空になったテイスティング用のグラスにワインを注ぐ。
「……ふぅ……♡」
ごくりと飲むと、頭がふわっとする。
俺の中で溜まりに溜まっている鬱憤がどこかへ飛んで行ってしまう気さえした。
最高級ワインはたくさんあるのだ。少しぐらいボトルが減ってもバレるはずがない。そもそもまじめな俺がこんな行動に出てしまうのはドグマ様のせいなのだから。
ワインボトルはすぐに空になってしまった。
もう一本飲んでしまおうか。
どれがいいかと棚のワインを見ていると、階段の上が騒がしくなっていることに気がついた。
階段を少し上がって耳を澄ますと、メアリーや他のメイドたちの声が聞こえた。
「おかえりなさいませ、ドグマ様」
ドグマ様の帰りは遅くなるはずでは……。
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