【R-18】僕のえっちな狼さん

第五章 泥浴びプレイ

３７．ピンクのラブホテル

　商店の立ち並ぶエリアを抜けて、バーやスナックのような小さな店が並ぶ裏路地へやってきた。
　お酒でも飲むつもりだろうか？　と思ったけど、昼間だからどの店もシャッターが閉まっていて営業していない。人通りもほとんどなくて、何か物音がしたと思って見ると、カラスが店裏のごみ箱を漁っているだけだった。

　そもそもシャンがお酒を飲んでいるところなんて見たことがない。森の家の台所には小瓶のワインがあるけど、煮込み料理に使うためにあるものだった。

「ここなんだけど……」
　目の前には派手なピンクの建物。「休憩・宿泊」の料金が大きく書かれた看板。

　ここって、ラブホテルじゃん！？
　まさかこんなところがシャンのずっと行ってみたかった場所だなんて……。

　戸惑う僕の手をシャンの長い指先が掴んで、通りから見えないように長いカーテンのようなものがかかった入口へ連れて行かれた。
　狼化したドＳのシャンならともかく、普段の優しい豚人のシャンが僕をこんな場所へ誘うなんて……。もちろん、嫌じゃない。むしろ僕はキュンキュンしてたまらない気持ちだった。

　部屋を選ぶパネルのボタンをシャンが押して、エレベーターで部屋へ向かった。
　狭いエレベーターの中でシャンが顔を近づけてきたから、キスされるのかと思ってドキッとしたけど、彼は僕の耳元で囁いただけだった。
「よかった、目当ての部屋が空いていたよ」
　目当ての部屋ってなんだろう、と思っているうちに部屋に着いた。


　部屋にはソファーと大きなベッドがあった。
　うわー、ここがラブホ……。漫画なんかで見たことはあったけど、来たのは初めてだ。
　セックスするための空間だと思うと、それだけでドキドキが止まらない。

「ここなら人目を気にしなくて大丈夫だから……」
　今まで豚人のシャンは僕とセックスしなかったけど、それって今まで誰かに家を覗かれていることに気づいていたから！？
　じゃあ、新月の夜に一緒に外で五右衛門風呂に入ったのは何だったんだろう……？　クレス卿に僕たちの仲の良さを見せつけてやるつもりだったのかな？

　僕があれこれ考えを巡らせると、シャンが部屋の奥のドアを開けた。
「じゃーん！　この部屋には大きいお風呂があるから人気なんだ！　空いていてラッキーだったよ」

　森の家の五右衛門風呂とは比べものにならない、きれいで広々とした浴室がある。
　前から思っていたけどシャンは風呂が好きみたいだ。このホテルに来たのも思いっきり入浴するためなのか。

　さっそく蛇口をひねってバスタブにお湯を溜め始めた。風呂場には灰色の粉の入った袋が置かれていた。
「ふふ、ずっとこれがやりたかったんだよね。後処理が大変だから自宅ではできないし」
　シャンは袋を破いてさらさらとした灰色のパウダーをお湯へ入れ、袖をまくった腕でかき混ぜた。