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第五章 泥浴びプレイ
36.久しぶりの町
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クレス卿が逮捕された翌日、僕たちは町へでかけた。
森で採取したトリュフを売って、そのお金で調味料や卵、バター、小麦粉などを買うのだ。
いつもはシャンが一人で町へ行き、僕は畑仕事などをして待っていたのだが、今日ならあのクレス卿が町にいないという安心感と、僕自身痩せて体力がついてきたので町まで歩ける自信があったので、今回はついていくことにしたのだ。
「正直、タクヤが来てから森の中や家にいるとき、妙な視線を感じることがあったんだよね。実害がないから放っておいていたけど、ずっと気にはなっていたんだ。まさかクレス卿が俺たちの生活を覗いていたなんてね」
町に向かって歩いている途中でシャンがそう呟いた。
「そうだったの? 僕は全然気づかなかったよ……」
昔からどんくさくて、鈍い自分が恥ずかしい。
それに引き換え、やっぱりシャンって頼りになるんだよな。今日だって本当は僕が半分荷物を持ってあげる気で来たのに、結局シャンが全部持ってくれている。
「これだけあればお金がたんまり手に入りそうだよ。タクヤが探すの上手いから、いつもの倍以上あるからね」
袋にはトリュフがずっしり入っている。
僕ってブタとしての能力が高いのか、鼻がいいのだ。鼻の先が潰れて前を向いているからだろうか。
市場の業者は僕たちのトリュフをいい値段で買い取ってくれた。
「これだけ金があればバターがたくさん買えるよ。タクヤが食べたがっていたアップルパイを焼こうか?」
シャンは僕が言った何気ない一言をこうやって覚えていてくれる。
「え、パイはいいかな、……太りそうだし。いつものパンで十分美味しいから」
せっかく痩せてきたので、ハイカロリーなものを食べてしまうのがもったいないと思った。
「タクヤは変わっているね。太りたくないだなんて」
この世界の基準では丸々太ったデブ、二重あごや前を向いて潰れた鼻が「素敵」なのだ。食べ過ぎや栄養バランスの偏りで顔が吹出物だらけでも誰も気にしない。
町を歩くとき、シャンは布で目から下を覆っている。シャンみたいなシュッとした目鼻立ちは「ブサイク」なのだ。粗食と日々の運動の賜物である彼の透き通るようなきれいな肌も人目につかぬよう隠しておく必要がある。
「何か欲しいものある? 今日なら好きなもの買ってあげられるよ」
「ううん、別に」
きっと以前の僕なら商店に並ぶポテチやコーラ、お菓子屋さんのケーキやシュークリームなどを手当たり次第に買ってほしいとねだっただろう。でも今は不思議とそんな気分にはならない。
「遠慮しなくていいのに……」
別に遠慮しているわけじゃない。シャンが少し残念そうで僕は何もいらないなんて言って逆に悪かったかなと少し胸が痛んだ。彼は僕を喜ばせたかったのだろう。
「じゃあさ、ずっと行ってみたかった場所があるんだ。今から一緒に行こうよ」
シャンがいたずらっぽい笑顔を見せた。
「うん、行こう。でもどこに?」
「ふふ、行ってからのお楽しみだよ」
森で採取したトリュフを売って、そのお金で調味料や卵、バター、小麦粉などを買うのだ。
いつもはシャンが一人で町へ行き、僕は畑仕事などをして待っていたのだが、今日ならあのクレス卿が町にいないという安心感と、僕自身痩せて体力がついてきたので町まで歩ける自信があったので、今回はついていくことにしたのだ。
「正直、タクヤが来てから森の中や家にいるとき、妙な視線を感じることがあったんだよね。実害がないから放っておいていたけど、ずっと気にはなっていたんだ。まさかクレス卿が俺たちの生活を覗いていたなんてね」
町に向かって歩いている途中でシャンがそう呟いた。
「そうだったの? 僕は全然気づかなかったよ……」
昔からどんくさくて、鈍い自分が恥ずかしい。
それに引き換え、やっぱりシャンって頼りになるんだよな。今日だって本当は僕が半分荷物を持ってあげる気で来たのに、結局シャンが全部持ってくれている。
「これだけあればお金がたんまり手に入りそうだよ。タクヤが探すの上手いから、いつもの倍以上あるからね」
袋にはトリュフがずっしり入っている。
僕ってブタとしての能力が高いのか、鼻がいいのだ。鼻の先が潰れて前を向いているからだろうか。
市場の業者は僕たちのトリュフをいい値段で買い取ってくれた。
「これだけ金があればバターがたくさん買えるよ。タクヤが食べたがっていたアップルパイを焼こうか?」
シャンは僕が言った何気ない一言をこうやって覚えていてくれる。
「え、パイはいいかな、……太りそうだし。いつものパンで十分美味しいから」
せっかく痩せてきたので、ハイカロリーなものを食べてしまうのがもったいないと思った。
「タクヤは変わっているね。太りたくないだなんて」
この世界の基準では丸々太ったデブ、二重あごや前を向いて潰れた鼻が「素敵」なのだ。食べ過ぎや栄養バランスの偏りで顔が吹出物だらけでも誰も気にしない。
町を歩くとき、シャンは布で目から下を覆っている。シャンみたいなシュッとした目鼻立ちは「ブサイク」なのだ。粗食と日々の運動の賜物である彼の透き通るようなきれいな肌も人目につかぬよう隠しておく必要がある。
「何か欲しいものある? 今日なら好きなもの買ってあげられるよ」
「ううん、別に」
きっと以前の僕なら商店に並ぶポテチやコーラ、お菓子屋さんのケーキやシュークリームなどを手当たり次第に買ってほしいとねだっただろう。でも今は不思議とそんな気分にはならない。
「遠慮しなくていいのに……」
別に遠慮しているわけじゃない。シャンが少し残念そうで僕は何もいらないなんて言って逆に悪かったかなと少し胸が痛んだ。彼は僕を喜ばせたかったのだろう。
「じゃあさ、ずっと行ってみたかった場所があるんだ。今から一緒に行こうよ」
シャンがいたずらっぽい笑顔を見せた。
「うん、行こう。でもどこに?」
「ふふ、行ってからのお楽しみだよ」
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