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第二章 満月の夜
12.シャンの家
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家には電気が通っていないから部屋の明かりはランタンだった。蛍光灯やLEDの照明と比べると薄暗いけど、ゆらゆらと揺らぐ炎の明かりは温かみがあっていい雰囲気だ。
すぐ近くの小川から水を引いてあって水道からちゃんと水が出た。こんな森の中の一軒家だけど案外快適に生活できそうだ。
「よかったら、先にシャワー使っていいよ」
キッチンで洗い物をしていたシャンが家の中を探索している僕に気づいて声をかけた。
「え、いいの?」
僕って前の世界では友達もいなかったから、誰かの家にお泊りとか初めてでどう振舞えばいいかわからずおろおろしてしまう。
「もちろんだよ」
気温が暖かいから、水のシャワーでも心地良い。
体を洗うときに不意に自分の腰から尻に手を伸ばしたら、何か柔らかなものに触れて驚いた。
「えっ!? なにこれ!?」
もしかしてと思って、浴室の鏡に自分の背面を映すと……。
「うわ、ブタのしっぽがある……」
くるんと丸まった肌色のしっぽが尻の割れ目の上に生えている。指先で掴んでみると、確かにそこに触れている感覚があって、それは間違いなく僕の体の一部だった。
ぼってり出ているお腹や頭の上の豚耳とマッチして、僕はどこからどう見ても完璧なブタだ。
そういえば、ブタのおちんちんってドリルみたいだって昔、漫画か何かで見た。情けない話だけど僕は腹部の脂肪が邪魔で見下ろしても自分の性器を見ることができないのだ。鏡越しに見ると皮に包まれた小ぶりなそれは人間の頃のままみたいだ。
「タクヤ、ここに着替えとタオル置いておくから使ってね」
急にドアの向こうからシャンの声が聞こえて僕はビクッとした。
「う、うん、ありがとう!」
タオルで体を拭いて、脱衣所のかごに入っている着替えを見た。
スタイルがよくて背の高いシャンの衣類をデブの僕が着られるのか心配だったけど、下着はふんどしっぽいタイプのものだし、服もだぼっとした生成りのシャツとウエストを紐で結ぶタイプの緩めのズボンだったのでサイズに関係なく着られそうだ。
下着だけは新品を出してくれたけど、シャンもこういう下着を穿いているんだと思うとちょっとドキドキする。
「お風呂ありがとう、下着と服も着られたよ」
脱衣所から出ていくとシャンは壁に貼られたカレンダーを眺めていた。
「よかった、ふふ、似合うね」
僕が着ている生成りのシャツとカーキ色のズボンを見てシャンは嬉しそうに言った。
「タクヤはベッド使ってね」
「え、でもシャンのベッドでしょう?」
「いいんだよ。違う世界から来て疲れているだろうから、ベッド使ってゆっくり眠って。俺は長椅子で寝るよ」
シャンは愛おしそうに微笑んで、当たり前のように言った。
「え、でも……」
「気にしないで。こんな狭い家だけど好きなだけいていいからね」
え、ずっとここにいていいって!?
恋愛作品によくあるイケメンと一つ屋根の下で暮らすことになって巻き起こる、バラ色の同棲生活のイメージが頭を過った。
ドタイプのイケメンと一緒に暮らすことになるなんて。おまけにめちゃくちゃ優しくされているし……。
僕の戸惑いは止まらない。
すぐ近くの小川から水を引いてあって水道からちゃんと水が出た。こんな森の中の一軒家だけど案外快適に生活できそうだ。
「よかったら、先にシャワー使っていいよ」
キッチンで洗い物をしていたシャンが家の中を探索している僕に気づいて声をかけた。
「え、いいの?」
僕って前の世界では友達もいなかったから、誰かの家にお泊りとか初めてでどう振舞えばいいかわからずおろおろしてしまう。
「もちろんだよ」
気温が暖かいから、水のシャワーでも心地良い。
体を洗うときに不意に自分の腰から尻に手を伸ばしたら、何か柔らかなものに触れて驚いた。
「えっ!? なにこれ!?」
もしかしてと思って、浴室の鏡に自分の背面を映すと……。
「うわ、ブタのしっぽがある……」
くるんと丸まった肌色のしっぽが尻の割れ目の上に生えている。指先で掴んでみると、確かにそこに触れている感覚があって、それは間違いなく僕の体の一部だった。
ぼってり出ているお腹や頭の上の豚耳とマッチして、僕はどこからどう見ても完璧なブタだ。
そういえば、ブタのおちんちんってドリルみたいだって昔、漫画か何かで見た。情けない話だけど僕は腹部の脂肪が邪魔で見下ろしても自分の性器を見ることができないのだ。鏡越しに見ると皮に包まれた小ぶりなそれは人間の頃のままみたいだ。
「タクヤ、ここに着替えとタオル置いておくから使ってね」
急にドアの向こうからシャンの声が聞こえて僕はビクッとした。
「う、うん、ありがとう!」
タオルで体を拭いて、脱衣所のかごに入っている着替えを見た。
スタイルがよくて背の高いシャンの衣類をデブの僕が着られるのか心配だったけど、下着はふんどしっぽいタイプのものだし、服もだぼっとした生成りのシャツとウエストを紐で結ぶタイプの緩めのズボンだったのでサイズに関係なく着られそうだ。
下着だけは新品を出してくれたけど、シャンもこういう下着を穿いているんだと思うとちょっとドキドキする。
「お風呂ありがとう、下着と服も着られたよ」
脱衣所から出ていくとシャンは壁に貼られたカレンダーを眺めていた。
「よかった、ふふ、似合うね」
僕が着ている生成りのシャツとカーキ色のズボンを見てシャンは嬉しそうに言った。
「タクヤはベッド使ってね」
「え、でもシャンのベッドでしょう?」
「いいんだよ。違う世界から来て疲れているだろうから、ベッド使ってゆっくり眠って。俺は長椅子で寝るよ」
シャンは愛おしそうに微笑んで、当たり前のように言った。
「え、でも……」
「気にしないで。こんな狭い家だけど好きなだけいていいからね」
え、ずっとここにいていいって!?
恋愛作品によくあるイケメンと一つ屋根の下で暮らすことになって巻き起こる、バラ色の同棲生活のイメージが頭を過った。
ドタイプのイケメンと一緒に暮らすことになるなんて。おまけにめちゃくちゃ優しくされているし……。
僕の戸惑いは止まらない。
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