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第一章 異世界転生
9.シャンの素顔
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「ま、待って。盗んだのは違う人です。シャンは悪いおじさんからあなたのネックレスを取り返したんです」
あまりにひどい展開だったから、僕は黙っていられなくなって声を上げた。
「おや、これはこれはっ……、なんて麗しい」
シャンの後ろにいる僕に気づいた小太りの男はさっきまでの怖い表情を一変させて感じのいい笑顔を僕に向けてきた。
「なんだ、そうなんですね。……だったら最初からそう言えよ。紛らわしい」
僕にはニコニコ、シャンにはしかめっ面で表情をコロコロ変える。
それを胸くそ悪いって感じるのは、僕が前の世界でシャン側の対応を散々されていたからだ。学校の同級生や先輩、先生、両親までもが僕にはいつも厳しいのに、僕じゃない誰かには驚くほど優しかった。そういうのを目の当たりにしたとき、心が凍り付くほどの寂しさを感じていた。
「そちらのお方に免じて警察への通報は勘弁してやろう」
男はシャンの手から宝石たっぷりの首飾りを奪うように取った。
「待って、約束の懸賞金は?」
「フン、バケモノにやる懸賞金などないっ!」
バケモノってどっちがだよ! と僕は心の中で小太りに突っ込みを入れずにいられない。
「ところであなたは、初めてお目にかかりましたが、もしやどこかの国の高貴なお方ですか?」
小太りは頬を赤く染めて、僕にうやうやしく尋ねた。
「ええ、まあ、僕は別の場所から来ましたけど……、それより懸賞金をかけていたなら見つけてくれた人にきちんと払うのが筋というものじゃないですか? そうしないと僕が目撃者としてあなたを警察に通報しますよ。あなたが指定の額を彼に渡すまで僕がここで見てますから」
僕は勇気を振り絞って、精一杯の虚勢を張った。
「え、ええ。まあそうですね、あはは、言われてみれば、確かに。あなたは物好きだ……こんな奴に優しくすることないのに」
参ったなぁと苦笑いしながら、小太りは家の中へ戻ってすぐに通貨の入った袋を取って来た。
「くそ、二度と俺に顔を見せるなよ!」
戻って来た小太りはコインの入った袋と食べ終えたリンゴの芯をシャンへ投げつけ、ドアをバタンッ! と壊れそうなほど乱暴に閉めた。
「どう? ちゃんとある?」
袋の中身の金貨を数えていたシャンに尋ねた。
「うん、大丈夫、確かにあるよ。はいこれ、半分は君の取り分だ」
彼は懐から出した袋に金貨を半分移して僕に差し出した。
「え、もらえないよ、だって僕は何もっ……」
「もらってくれよ。俺は君に味方されて嬉しかった。こんな気持ち初めてだ」
シャンは心底幸せそうに笑って、目から下を覆っていた布をはらりと外した。
「俺はこんなに醜い顔をしているんだ。だからさっきみたいにバケモノと罵られたり、ひどい目に遭ったりするのが日常なんだよ。両親にも捨てられて、友達もいない。いつも一人ぼっちなんだ。だから君に味方してもらえたのがどれほど嬉しかったか」
彼の素顔はものすごくイケメンだった。男性アイドルか韓国の俳優かと思うぐらいに。きりっとした目鼻立ちに透き通るような肌、すっきりとシャープなあごの輪郭に色っぽい唇……。なんていい男だろう……。
あまりにひどい展開だったから、僕は黙っていられなくなって声を上げた。
「おや、これはこれはっ……、なんて麗しい」
シャンの後ろにいる僕に気づいた小太りの男はさっきまでの怖い表情を一変させて感じのいい笑顔を僕に向けてきた。
「なんだ、そうなんですね。……だったら最初からそう言えよ。紛らわしい」
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それを胸くそ悪いって感じるのは、僕が前の世界でシャン側の対応を散々されていたからだ。学校の同級生や先輩、先生、両親までもが僕にはいつも厳しいのに、僕じゃない誰かには驚くほど優しかった。そういうのを目の当たりにしたとき、心が凍り付くほどの寂しさを感じていた。
「そちらのお方に免じて警察への通報は勘弁してやろう」
男はシャンの手から宝石たっぷりの首飾りを奪うように取った。
「待って、約束の懸賞金は?」
「フン、バケモノにやる懸賞金などないっ!」
バケモノってどっちがだよ! と僕は心の中で小太りに突っ込みを入れずにいられない。
「ところであなたは、初めてお目にかかりましたが、もしやどこかの国の高貴なお方ですか?」
小太りは頬を赤く染めて、僕にうやうやしく尋ねた。
「ええ、まあ、僕は別の場所から来ましたけど……、それより懸賞金をかけていたなら見つけてくれた人にきちんと払うのが筋というものじゃないですか? そうしないと僕が目撃者としてあなたを警察に通報しますよ。あなたが指定の額を彼に渡すまで僕がここで見てますから」
僕は勇気を振り絞って、精一杯の虚勢を張った。
「え、ええ。まあそうですね、あはは、言われてみれば、確かに。あなたは物好きだ……こんな奴に優しくすることないのに」
参ったなぁと苦笑いしながら、小太りは家の中へ戻ってすぐに通貨の入った袋を取って来た。
「くそ、二度と俺に顔を見せるなよ!」
戻って来た小太りはコインの入った袋と食べ終えたリンゴの芯をシャンへ投げつけ、ドアをバタンッ! と壊れそうなほど乱暴に閉めた。
「どう? ちゃんとある?」
袋の中身の金貨を数えていたシャンに尋ねた。
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彼は懐から出した袋に金貨を半分移して僕に差し出した。
「え、もらえないよ、だって僕は何もっ……」
「もらってくれよ。俺は君に味方されて嬉しかった。こんな気持ち初めてだ」
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「俺はこんなに醜い顔をしているんだ。だからさっきみたいにバケモノと罵られたり、ひどい目に遭ったりするのが日常なんだよ。両親にも捨てられて、友達もいない。いつも一人ぼっちなんだ。だから君に味方してもらえたのがどれほど嬉しかったか」
彼の素顔はものすごくイケメンだった。男性アイドルか韓国の俳優かと思うぐらいに。きりっとした目鼻立ちに透き通るような肌、すっきりとシャープなあごの輪郭に色っぽい唇……。なんていい男だろう……。
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