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第一章 異世界転生
7.イケメンの登場
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「うわ、すごいな、この首飾り……」
大男の後ろから別の男の声が聞こえた。
口元を布で隠したすらりと背の高い青年が色々な宝石のあしらわれた金色の首飾りを手にしていた。
「あ、お前それっ!」
おじさんはひどく慌てていた。どうやら大男が僕を捕まえるために地面に置いた袋から青年が首飾りを取り出したようだった。
「なに勝手に触ってるんだ、返せっ!」
おじさんが怒鳴って奪い返そうとしても青年は身軽な動きでかわして捕まらない。
「ルビーにサファイヤ、エメラルドまでついててすごいね、でもこれって懸賞金のかけられた盗品でしょ?」
わざと大声でみんなに悪事をばらすかのように言いふらした。
「うるさい、お前には関係ないだろうっ」
ぐぬぬぬぬ……っと呻き、激昂したおじさんが傍らにあった鉄パイプのようなものを掴んで振りかぶり、青年目掛けて力いっぱい叩きつけようとした。
「危ないっ!」
ハラハラして僕は叫んだ。
青年はパイプをかわして、ひょいと商店のひさしの上へ乗ってしまった。代わりにパイプは金属製の街灯の柱へヒットしておじさんの腕はじいいいん……っと痺れてうずくまった。
「うおおお……手がっ……」
「おーい、俺はこっちだよ。悔しかったら捕まえてみなよ」
「くうう。もう許さんっ! おい、追えっ! 奴から首飾りを取り返せっ!」
おじさんが大男に命令した。僕はようやく大男の手から解放された。
「お前はここで待っていろよっ!」
おじさんはそう言い残して大男と一緒に広場の噴水の方へ走って行った青年を追いかけた。
さっきの人は何者だろうか。すらりと背が高くて、顔を隠していてもイケメンのオーラがすごかった。機敏な身のこなしにもドキドキした。うう、格好良かったなぁ……。
もう一目見たくて、彼の消えた噴水の方を見ていたら、背後から声がした。
「ねえ、君?」
「うああっ」
振り向くと逆さまになった彼の顔があって、びっくりした。
商店のひさしのところへ足を引っかけているのだろう。彼はそこからくるりと宙返りして降りて、僕の手を引いた。
「逃げよう。早くこっちへっ!」
彼に引っ張られて石畳の狭い路地を走った。
「待って、……膝が、痛くて……っ、あと、呼吸も……っ」
情けないけど太りすぎているせいで長くは走れない。
「ごめん、じゃあここに隠れて」
路地裏の樽や木箱の積まれた物陰へ隠れた。
彼は僕の体に密着して、ぜいぜい、はあはあ、ブヒブヒ、うるさい僕の口を彼の細くてきれいな手が覆って音が漏れないようにしてくれていた。
こんなことされるの初めてだから、走って息が苦しい上に余計にドキドキくらくらしちゃう。
追っ手を気にして木箱の隙間から背後を振り返っている彼の凛々しい横顔にも、僕はときめきを感じずにいられない。布から出ているクールな目元だけでももうドタイプ……。
大男の後ろから別の男の声が聞こえた。
口元を布で隠したすらりと背の高い青年が色々な宝石のあしらわれた金色の首飾りを手にしていた。
「あ、お前それっ!」
おじさんはひどく慌てていた。どうやら大男が僕を捕まえるために地面に置いた袋から青年が首飾りを取り出したようだった。
「なに勝手に触ってるんだ、返せっ!」
おじさんが怒鳴って奪い返そうとしても青年は身軽な動きでかわして捕まらない。
「ルビーにサファイヤ、エメラルドまでついててすごいね、でもこれって懸賞金のかけられた盗品でしょ?」
わざと大声でみんなに悪事をばらすかのように言いふらした。
「うるさい、お前には関係ないだろうっ」
ぐぬぬぬぬ……っと呻き、激昂したおじさんが傍らにあった鉄パイプのようなものを掴んで振りかぶり、青年目掛けて力いっぱい叩きつけようとした。
「危ないっ!」
ハラハラして僕は叫んだ。
青年はパイプをかわして、ひょいと商店のひさしの上へ乗ってしまった。代わりにパイプは金属製の街灯の柱へヒットしておじさんの腕はじいいいん……っと痺れてうずくまった。
「うおおお……手がっ……」
「おーい、俺はこっちだよ。悔しかったら捕まえてみなよ」
「くうう。もう許さんっ! おい、追えっ! 奴から首飾りを取り返せっ!」
おじさんが大男に命令した。僕はようやく大男の手から解放された。
「お前はここで待っていろよっ!」
おじさんはそう言い残して大男と一緒に広場の噴水の方へ走って行った青年を追いかけた。
さっきの人は何者だろうか。すらりと背が高くて、顔を隠していてもイケメンのオーラがすごかった。機敏な身のこなしにもドキドキした。うう、格好良かったなぁ……。
もう一目見たくて、彼の消えた噴水の方を見ていたら、背後から声がした。
「ねえ、君?」
「うああっ」
振り向くと逆さまになった彼の顔があって、びっくりした。
商店のひさしのところへ足を引っかけているのだろう。彼はそこからくるりと宙返りして降りて、僕の手を引いた。
「逃げよう。早くこっちへっ!」
彼に引っ張られて石畳の狭い路地を走った。
「待って、……膝が、痛くて……っ、あと、呼吸も……っ」
情けないけど太りすぎているせいで長くは走れない。
「ごめん、じゃあここに隠れて」
路地裏の樽や木箱の積まれた物陰へ隠れた。
彼は僕の体に密着して、ぜいぜい、はあはあ、ブヒブヒ、うるさい僕の口を彼の細くてきれいな手が覆って音が漏れないようにしてくれていた。
こんなことされるの初めてだから、走って息が苦しい上に余計にドキドキくらくらしちゃう。
追っ手を気にして木箱の隙間から背後を振り返っている彼の凛々しい横顔にも、僕はときめきを感じずにいられない。布から出ているクールな目元だけでももうドタイプ……。
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