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第一章 異世界転生
5.見知らぬ街
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気がつくと、見知らぬ街の広場みたいな場所にいた。
え、ここどこ……?
周囲を見回すとファンタジー作品なんかに出てきそうなヨーロッパっぽいメルヘンな街並みが広がっていた。レンガや石で作られた家や塔が並んでいて、教会の大きな鐘の音が聞こえて来る。
……まさか、本当に転生しちゃったの?
唖然として立ち尽くしていると、通りを行く背の高い青年二人組が僕の方をちらりと見た。街並みと同じく彼らの格好もファンタジーっぽい服装だ。
ひいいっ、もしやカツアゲされる!?
いじめられっ子気質が体に染みついている僕は二人と目を合わせないように下を向いた。
「おい、見ろよ」
何だあのデブ、と罵倒されるんじゃないかと身構えた。
「見かけない顔だが、とんでもない美男子じゃないか」
「本当だ、すごくイケメンだ」
なんだ、助かった。こっちを見たのかと思ったけど、二人の目的は僕じゃなかったみたいだ。
それよりとんでもない美男子がいるの? どこどこ? 僕も見たいっ!
振り返ってキョロキョロするけど、背後には噴水があるだけで誰もいない。恐る恐る青年たちの方を見ると彼らが見ているのは僕だった。
「え……?」
彼らの頭の上には先の折れた三角の耳が乗っていて、鼻の先がチョンと前を向いている。
僕が言うのもなんだけど、なんかブタっぽい……。
「やっとこっち見た。うは、なんてふくよかでキュートなんだ」
「ねえ君、俺らとお茶しようぜ」
二人組はそう言って、すぐそこのカフェを親指で示した。
「え、僕とお茶って? 何かの間違いでしょう?」
「何を言っているんだい? 警戒しなくて大丈夫だよ、俺らはただ美しい君と仲良くなりたいのさ」
「君のことが知りたいんだ。ゆっくり話そう。もちろんおごるよ、パフェでもケーキでも好きなものを食べるといい」
一体、何が起きたの?
二人ともちょっとぽっちゃりしていて僕の好みじゃないけど、こんなふうにナンパされるのは初めてだからちょっとドキドキしちゃう。
「ちょっと待った、俺が先だ」
近くの花売りの店から花束を抱えて走って来たこれまた小太りの男性が、僕の前に跪いた。
「俺と結婚してくれっ!」
うっとりした眼差しで僕を見つめる男性はやっぱり頭に豚耳がついていて鼻が前を向いている。体も顔もブタにしか見えない。
「おいおい、おっさん、何言ってんだ? この子は俺らとお茶するところだ。割り込んで来るなよ」
「割り込むってどっちがだっ! お前らより俺が先に目をつけて一世一代のプロポーズのために大急ぎでこの子に似合う花を買いに行っていたんだ」
男性は青年たちを押し退けて、真っ赤なバラの花束を差し出した。
「君は俺が探し求めていた運命の人だ。ほら、きれいだろう。君の美しさには敵わないけどね、フッ」
丸くて小さい目と二重あごの豚顔でキザなセリフを囁かれても、僕の面食いな乙女心は全くときめかない。
「おっさん、いきなりプロポーズなんてするなよ、ドン引きしてんじゃん!」
「何を!? この子は嬉しさのあまり固まっているだけだ! そもそも困らせているのはお前らの方だ、二人がかりでナンパして、卑怯だと思わないのか」
青年たちと男性はとうとう言い争いを始めてしまった。
「や、やめて、僕を巡って争わないでっ……」
騒ぎになった広場にはどんどん人が集まって来た。
誰かこのどうしようもない喧嘩を止めてくれればいいのに、人々はじろじろと僕を見るばかりだ。
「あ、本当だ、すごく豊満で美しい」
「ははあ、これは確かに絶世の美人だな」
この世界、おかしい。どうなっているんだろう。
もしかして、転生と同時に神様から類まれな美しさを授けられたってこと!?
え、ここどこ……?
周囲を見回すとファンタジー作品なんかに出てきそうなヨーロッパっぽいメルヘンな街並みが広がっていた。レンガや石で作られた家や塔が並んでいて、教会の大きな鐘の音が聞こえて来る。
……まさか、本当に転生しちゃったの?
唖然として立ち尽くしていると、通りを行く背の高い青年二人組が僕の方をちらりと見た。街並みと同じく彼らの格好もファンタジーっぽい服装だ。
ひいいっ、もしやカツアゲされる!?
いじめられっ子気質が体に染みついている僕は二人と目を合わせないように下を向いた。
「おい、見ろよ」
何だあのデブ、と罵倒されるんじゃないかと身構えた。
「見かけない顔だが、とんでもない美男子じゃないか」
「本当だ、すごくイケメンだ」
なんだ、助かった。こっちを見たのかと思ったけど、二人の目的は僕じゃなかったみたいだ。
それよりとんでもない美男子がいるの? どこどこ? 僕も見たいっ!
振り返ってキョロキョロするけど、背後には噴水があるだけで誰もいない。恐る恐る青年たちの方を見ると彼らが見ているのは僕だった。
「え……?」
彼らの頭の上には先の折れた三角の耳が乗っていて、鼻の先がチョンと前を向いている。
僕が言うのもなんだけど、なんかブタっぽい……。
「やっとこっち見た。うは、なんてふくよかでキュートなんだ」
「ねえ君、俺らとお茶しようぜ」
二人組はそう言って、すぐそこのカフェを親指で示した。
「え、僕とお茶って? 何かの間違いでしょう?」
「何を言っているんだい? 警戒しなくて大丈夫だよ、俺らはただ美しい君と仲良くなりたいのさ」
「君のことが知りたいんだ。ゆっくり話そう。もちろんおごるよ、パフェでもケーキでも好きなものを食べるといい」
一体、何が起きたの?
二人ともちょっとぽっちゃりしていて僕の好みじゃないけど、こんなふうにナンパされるのは初めてだからちょっとドキドキしちゃう。
「ちょっと待った、俺が先だ」
近くの花売りの店から花束を抱えて走って来たこれまた小太りの男性が、僕の前に跪いた。
「俺と結婚してくれっ!」
うっとりした眼差しで僕を見つめる男性はやっぱり頭に豚耳がついていて鼻が前を向いている。体も顔もブタにしか見えない。
「おいおい、おっさん、何言ってんだ? この子は俺らとお茶するところだ。割り込んで来るなよ」
「割り込むってどっちがだっ! お前らより俺が先に目をつけて一世一代のプロポーズのために大急ぎでこの子に似合う花を買いに行っていたんだ」
男性は青年たちを押し退けて、真っ赤なバラの花束を差し出した。
「君は俺が探し求めていた運命の人だ。ほら、きれいだろう。君の美しさには敵わないけどね、フッ」
丸くて小さい目と二重あごの豚顔でキザなセリフを囁かれても、僕の面食いな乙女心は全くときめかない。
「おっさん、いきなりプロポーズなんてするなよ、ドン引きしてんじゃん!」
「何を!? この子は嬉しさのあまり固まっているだけだ! そもそも困らせているのはお前らの方だ、二人がかりでナンパして、卑怯だと思わないのか」
青年たちと男性はとうとう言い争いを始めてしまった。
「や、やめて、僕を巡って争わないでっ……」
騒ぎになった広場にはどんどん人が集まって来た。
誰かこのどうしようもない喧嘩を止めてくれればいいのに、人々はじろじろと僕を見るばかりだ。
「あ、本当だ、すごく豊満で美しい」
「ははあ、これは確かに絶世の美人だな」
この世界、おかしい。どうなっているんだろう。
もしかして、転生と同時に神様から類まれな美しさを授けられたってこと!?
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