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第一章 異世界転生
1.奇跡の両想い
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体育館の横へ回り込んで、部活の時間は大体いつも開いている扉から、こっそり中を覗いた。ドム、ドム、と重たく響くバスケットボールの音がしてこないし、体育館の中にバスケ部の姿はなかった。
今日の練習はもう終わったのかな、一目でいいから桜庭先輩の顔を見たかったんだけど……。
バスケ部エースの桜庭先輩は僕が密かに想いを寄せる相手で、しびれるほどの美男子だ。すらっと背が高くて筋肉質で、運動神経抜群。おまけに男性アイドルみたいなきれいな顔をしていて、雑誌のモデルにスカウトされたって噂まである。
僕は先輩を見ると胸がキュンキュンして、嫌なこと全部忘れられるんだ。
そそくさとその場を去ろうとしたとき、背後から近づいてきたバスケ部の3年生に呼びかけられた。
「ねえ、君」
ギクッとした。運動部でもないのに体育館の中を盗み見ていたことを怒られるのかと身構えた。
「ちょっと来て。桜庭が君のことを呼んでいるんだ」
耳を疑った。一方的に桜庭先輩への恋心を募らせているだけで、実は桜庭先輩とは今まで一度も話したことがないから。
「え、桜庭先輩が僕を……!?」
「うん、話があるから、君がここを通ったら呼んできてほしいって頼まれて。……桜庭は君に話があるみたいだよ」
嘘みたい……。憧れの桜庭先輩の顔を一目見たくて、少し遠回りだけど毎日こっそりここを通って帰っていた。今まで一度も話をしたことがないし、そもそも僕みたいな内気な太っちょは、快活で誰からも好かれるバスケ部エースの桜庭先輩とは正反対の生き物だ。だから彼から話があるなんて言われるなんて、夢にも思っていなかった……。
僕は舞い上がるような気持ちで体育館の裏へ向かった。
練習用ユニホームの桜庭先輩がそこにいた。今日も格好いい。
「福原琢也くんだよね……?」
僕の名前を呼んだ。先輩の爽やかな声で呼ばれるとそれだけで嬉しくて、頭がくらくらする。
「は、……は、はいっ!」
いつも遠くからこっそり見ていただけだから、こんなに近いのも初めてだ。
一体何の用だろう。もう本当に心臓が口から飛び出ちゃいそうなぐらい胸がドキドキ騒いでいる。
先輩は眉尻を下げて躊躇いがちに話し始めた。
「急にごめんね。……実は俺、君のことが好きなんだ。だから、……よかったら俺と付き合ってほしいんだけど」
う、嘘でしょう……。入学してすぐに一目惚れしてずっと恋焦がれていた先輩に、告白されてしまうなんて……。これは都合のいい夢だろうか……?
「えっ、……あ、はい、……喜んでっ……!」
知らなかった、先輩も僕と同じゲイだったんだ? 今まで一度も話したことがなかったけど、僕のことを知っていたの? 地味でどんくさい僕は、先輩みたいな人から好かれる要素なんてないと思うけど……。
色々な疑問も浮かんでくるけど、今は目の前で困ったような表情をして僕を見ている先輩のきれいな顔を、見ることで精一杯だった。やっぱりうっとりするほどイケメンだ……。
「嬉しいです……。僕、ずっと先輩のことが……」
感情が高ぶりすぎて涙が溢れて来た。
昔からクラスメイトからもバカにされることが多くて、小学・中学はいじめられっ子だった。高校に入学してからも友達なんていないし、正直つらいことばかりで学校へ来たくないって思うことも多かったけど、それでも大好きな先輩見たさに学校へ来ていてよかった。こんなにいいことがあるなんて……。
今日の練習はもう終わったのかな、一目でいいから桜庭先輩の顔を見たかったんだけど……。
バスケ部エースの桜庭先輩は僕が密かに想いを寄せる相手で、しびれるほどの美男子だ。すらっと背が高くて筋肉質で、運動神経抜群。おまけに男性アイドルみたいなきれいな顔をしていて、雑誌のモデルにスカウトされたって噂まである。
僕は先輩を見ると胸がキュンキュンして、嫌なこと全部忘れられるんだ。
そそくさとその場を去ろうとしたとき、背後から近づいてきたバスケ部の3年生に呼びかけられた。
「ねえ、君」
ギクッとした。運動部でもないのに体育館の中を盗み見ていたことを怒られるのかと身構えた。
「ちょっと来て。桜庭が君のことを呼んでいるんだ」
耳を疑った。一方的に桜庭先輩への恋心を募らせているだけで、実は桜庭先輩とは今まで一度も話したことがないから。
「え、桜庭先輩が僕を……!?」
「うん、話があるから、君がここを通ったら呼んできてほしいって頼まれて。……桜庭は君に話があるみたいだよ」
嘘みたい……。憧れの桜庭先輩の顔を一目見たくて、少し遠回りだけど毎日こっそりここを通って帰っていた。今まで一度も話をしたことがないし、そもそも僕みたいな内気な太っちょは、快活で誰からも好かれるバスケ部エースの桜庭先輩とは正反対の生き物だ。だから彼から話があるなんて言われるなんて、夢にも思っていなかった……。
僕は舞い上がるような気持ちで体育館の裏へ向かった。
練習用ユニホームの桜庭先輩がそこにいた。今日も格好いい。
「福原琢也くんだよね……?」
僕の名前を呼んだ。先輩の爽やかな声で呼ばれるとそれだけで嬉しくて、頭がくらくらする。
「は、……は、はいっ!」
いつも遠くからこっそり見ていただけだから、こんなに近いのも初めてだ。
一体何の用だろう。もう本当に心臓が口から飛び出ちゃいそうなぐらい胸がドキドキ騒いでいる。
先輩は眉尻を下げて躊躇いがちに話し始めた。
「急にごめんね。……実は俺、君のことが好きなんだ。だから、……よかったら俺と付き合ってほしいんだけど」
う、嘘でしょう……。入学してすぐに一目惚れしてずっと恋焦がれていた先輩に、告白されてしまうなんて……。これは都合のいい夢だろうか……?
「えっ、……あ、はい、……喜んでっ……!」
知らなかった、先輩も僕と同じゲイだったんだ? 今まで一度も話したことがなかったけど、僕のことを知っていたの? 地味でどんくさい僕は、先輩みたいな人から好かれる要素なんてないと思うけど……。
色々な疑問も浮かんでくるけど、今は目の前で困ったような表情をして僕を見ている先輩のきれいな顔を、見ることで精一杯だった。やっぱりうっとりするほどイケメンだ……。
「嬉しいです……。僕、ずっと先輩のことが……」
感情が高ぶりすぎて涙が溢れて来た。
昔からクラスメイトからもバカにされることが多くて、小学・中学はいじめられっ子だった。高校に入学してからも友達なんていないし、正直つらいことばかりで学校へ来たくないって思うことも多かったけど、それでも大好きな先輩見たさに学校へ来ていてよかった。こんなにいいことがあるなんて……。
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