【本編完結】ゲイバレ御曹司 ～ハッテン場のゲイバーで鉢合わせちゃった義弟に脅されています～

続編 第五章 浜辺の産卵プレイ (怜一郎side)

続５８．帰りの機内（１）

　翌日、やっと帰りの飛行機に乗れて、俺は心底安堵した。ちゃんと衣服を着ていられる、ただそれだけのことがありがたく感じられる。常に全裸なんてもう懲り懲りだ。

「いやあ、楽しかったですね、ヌーディストビーチ。恥じらいながらもフルチンで大自然を満喫する怜一郎さん、最高でした」
　隣の座席で機内サービスのシャンパンを片手ににっこりと笑う龍之介に怒りを感じた。

「ふざけるなっ、俺は最低な気分の三日間だったんだぞ」
　まずヌーディストビーチなんて聞いてなかったし、人前で散々恥じをかかされた。おかしなマッサージを受けさせられるし、あそこへフルーツや洗浄剤をねじ込まれ腹の中をぱんぱんにされて砂浜で産卵のように排出させられるし、おまけに手足を拘束されて水槽へ放り込まれたときは本気で死を覚悟したのだ。

「金輪際、お前とは旅行なんてしないからなっ！」
「まあまあ、そう言わず。今度は一緒に京都へ行きたいですね。この前、生八つ橋に宇治茶でお茶したら、やっぱり本場のお抹茶が飲みたいなって思ったんですよね」
「行くわけないだろっ！　俺は日本へなんて二度と行けないんだ」

　他の乗客や客室乗務員に日本人らしき人はいなさそうだけど、俺は念のため声のボリュームを下げて龍之介に言った。
「……お前も知っているだろう、天真さんのアトリエで裸にされて柱に縛りつけられて、あそこに恥ずかしいボディーペインティングをされた、その一部始終をネット配信されていたんだ。宝条ホールディングスの従業員に見られたんだよ。……どんな顔をして日本へ行けと言うんだっ！」
　今思い出しても震え上がるほど恥ずかしい。屈辱のあまり俺は自分の両腕で上半身を包み込んだ。

「ああ、あれを気にしているんですか？　ネット配信なんてされていませんよ？　さすがにそれはやりすぎでしょう？」
「え……？　……だって、あのとき、カメラが……」
　あのとき、俺の目の前に置かれていたカメラは確かに赤いランプが点灯していた。
「安心してください、あのカメラの映像を見ていたのは別の部屋にいた僕だけですから。パソコンの画面に映っていた宝条ホールディングスの従業員たちの映像は別件の集会のときの映像ですよ」
「そうだったのか……」

　よかった……、という気持ちと共に、疑問が湧いてきた。
「お前はあのとき俺を助けに来たんじゃないのか？　……そういえば、お前は天真さんを訪ねて来た風だったな。天真さんといつから知り合いだったんだよ！？」
　龍之介は「あ、しまった……」と目を見開いてから、愛想笑いを浮かべた。

「おい、どういうことか説明しろよ、お前は天真さんといつどこで知り合ったんだ！？」
　問い詰めると、龍之介は観念して天真さんと知り会った経緯から話し始めた。
　天真さんと俺が再会したことは偶然じゃなく仕組まれたことだと知って唖然とした。鏡だらけの天真さんの部屋でのこともプールパーティーでの痴態も龍之介が見ていただなんて……。