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続編 第四章 ヌーディストビーチで告白 (龍之介side)
続36.僕らの計画
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怜一郎さんが染川さんと浮気したことを僕はちっとも怒っていない。なぜなら怜一郎さんが染川さんと再会したことは偶然なんかじゃなく、僕らが仕組んだことだからだ。
今でももちろん僕は怜一郎さんのことが好きで好きでたまらない。ニューヨークに来てから、結婚してそばにいられるだけで毎日本当に幸せだ。だけど、僕はずっと小さな悩みを抱えていた。それは怜一郎さんから未だに一度も「好きだ」って言われたことがないということだ。
怜一郎さんはクールだから、「一緒にいる」ということがもう「好き」ということなのかもしれない。でも、やっぱり僕は愛する怜一郎さんの口から「好きだ」って言葉を聞きたいのだ。
ニューヨークに来てから怜一郎さんは来る日も来る日も自宅でピアノばかり弾いて過ごしていた。演奏に熱中する彼の横顔を見るのは好きだけど、僕は二人でデートもしたいしもっと思いっきりイチャイチャしたかった。なのに、彼はピアノの練習が忙しいからと僕を拒絶し、ピアニストとして働きに出たいと繰り返した。
怜一郎さんから離れるつもりなんて全くないけど、彼に嫉妬してほしくて僕は怜一郎さんにわざと聞こえるようにエリカさんと連絡を取っていた。ヤキモチを妬いてほしくて……。僕は寂しかったんだ。
染川天真さんに仕事の依頼を受けたのはそんな時だった。
日本からの輸入品を多く取り扱う僕の噂を聞いて連絡をくれたのだとメールに記されていた。
街中のカフェで僕は染川さんに会った。
「新たに購入した日本風のアトリエの照明器具や家具を探しているんだ。費用はいくらかかっても構わないから職人が作った上等なものを日本から取り寄せてもらえるかな?」
金に糸目をつけないなんて、さすがは世界的芸術家だと僕は感心した。
インテリアのイメージを詳細に聞き、
「では後日カタログをお持ちしますので。今日はありがとうございました」
僕が席を立ったとき、彼は突然、
「ねえ、あの豪華客船でランウェイを歩いていたのは宝条怜一郎だろう?」
と言い出したのだ。
耳を疑った。驚いて固まっている僕に染川さんはフフと笑顔を見せた。
「そんなに驚くなよ。知り合いのデザイナーのショーだったから招待されて最前列で見ていたんだ。まさか昔の教え子をあんな場所で見かけるなんてね」
「教え子……?」
染川さんは背中に冷や汗を伝わせている僕を楽しそうに見ていた。
「座って。コーヒーのお代わりを注文したまえよ」
染川さんは怜一郎さんの芸術的美のポテンシャルを最大限に引き出して自分の作品にしたいのだと言った。
「昔からそうだ、怜一郎は僕の感性をガンガン刺激する唯一の人間なんだ……20年ぶりに再会して思い知ったよ」
「怜一郎さんをどうしたいと思っているのですか?」
僕の大事な人を奪い取ろうとしているのか、と僕は警戒した。けれどよく聞くと染川さんは怜一郎さんを自分の作品へ使用したいだけで、それ以上の感情はないのだとわかった。
きれいな顔でニタニタ笑う染川さんに僕は底知れない恐怖を感じていた。怜一郎さんを危険な目に合わせることはしたくないから、その場では迂闊な返事はせずにまた後日会いましょうと言って別れた。
今でももちろん僕は怜一郎さんのことが好きで好きでたまらない。ニューヨークに来てから、結婚してそばにいられるだけで毎日本当に幸せだ。だけど、僕はずっと小さな悩みを抱えていた。それは怜一郎さんから未だに一度も「好きだ」って言われたことがないということだ。
怜一郎さんはクールだから、「一緒にいる」ということがもう「好き」ということなのかもしれない。でも、やっぱり僕は愛する怜一郎さんの口から「好きだ」って言葉を聞きたいのだ。
ニューヨークに来てから怜一郎さんは来る日も来る日も自宅でピアノばかり弾いて過ごしていた。演奏に熱中する彼の横顔を見るのは好きだけど、僕は二人でデートもしたいしもっと思いっきりイチャイチャしたかった。なのに、彼はピアノの練習が忙しいからと僕を拒絶し、ピアニストとして働きに出たいと繰り返した。
怜一郎さんから離れるつもりなんて全くないけど、彼に嫉妬してほしくて僕は怜一郎さんにわざと聞こえるようにエリカさんと連絡を取っていた。ヤキモチを妬いてほしくて……。僕は寂しかったんだ。
染川天真さんに仕事の依頼を受けたのはそんな時だった。
日本からの輸入品を多く取り扱う僕の噂を聞いて連絡をくれたのだとメールに記されていた。
街中のカフェで僕は染川さんに会った。
「新たに購入した日本風のアトリエの照明器具や家具を探しているんだ。費用はいくらかかっても構わないから職人が作った上等なものを日本から取り寄せてもらえるかな?」
金に糸目をつけないなんて、さすがは世界的芸術家だと僕は感心した。
インテリアのイメージを詳細に聞き、
「では後日カタログをお持ちしますので。今日はありがとうございました」
僕が席を立ったとき、彼は突然、
「ねえ、あの豪華客船でランウェイを歩いていたのは宝条怜一郎だろう?」
と言い出したのだ。
耳を疑った。驚いて固まっている僕に染川さんはフフと笑顔を見せた。
「そんなに驚くなよ。知り合いのデザイナーのショーだったから招待されて最前列で見ていたんだ。まさか昔の教え子をあんな場所で見かけるなんてね」
「教え子……?」
染川さんは背中に冷や汗を伝わせている僕を楽しそうに見ていた。
「座って。コーヒーのお代わりを注文したまえよ」
染川さんは怜一郎さんの芸術的美のポテンシャルを最大限に引き出して自分の作品にしたいのだと言った。
「昔からそうだ、怜一郎は僕の感性をガンガン刺激する唯一の人間なんだ……20年ぶりに再会して思い知ったよ」
「怜一郎さんをどうしたいと思っているのですか?」
僕の大事な人を奪い取ろうとしているのか、と僕は警戒した。けれどよく聞くと染川さんは怜一郎さんを自分の作品へ使用したいだけで、それ以上の感情はないのだとわかった。
きれいな顔でニタニタ笑う染川さんに僕は底知れない恐怖を感じていた。怜一郎さんを危険な目に合わせることはしたくないから、その場では迂闊な返事はせずにまた後日会いましょうと言って別れた。
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