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続編 第三章 思い違いと筆責め (怜一郎side)
続35.お詫びの印
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「本当にすまない、龍之介。言い訳にもならないが、俺はお前が日本へエリカと子供に会いに行くんだと勘違いして、それが辛くてたまらなかったんだ……」
それで嫉妬していたところで偶然にも昔の恩師の天真さんと再会し、むしゃくしゃして結局あんなことになったなんて、説明するのも格好悪い。でも俺は恥を忍んで正直に伝えた。
「え、僕がエリカさんと子供に? 会いに行くわけないじゃないですか。エリカさんが産んだ子供はエリカさんと菜々美さんが二人で育てている、二人の子供なんですよ。そりゃ日本ではまだそれが許されない部分があるから、何か困っていないか連絡することはありますが、会うとかそんなこと、しようとも思っていないです。……そんなことしたら菜々美さんも怜一郎さんも傷つけることになるじゃないですか」
そうだ、こいつがそんな軽はずみな行動をするなんてあり得ないじゃないか。少し考えればわかりそうなことだった。俺はありもしないことで勝手に嫉妬の炎をめらめらと燃やしていたことを悔やんだ。
「僕にとっては血の繋がった子供よりも、怜一郎さんの方が大事なんです……」
「龍之介っ……」
怒りもせずに甘い言葉を囁かれ、俺の胸はキュンとした。
「でも怜一郎さん、僕がエリカさんと子供に会いに行くと思ってヤキモチ妬いてくれたの……それ、すごく嬉しいです」
龍之介はニヤニヤしながら俺の目を見た。
「日本へ行く前に怜一郎さんにエリカさんと子供に会って来ればって言われて、それもいいですね、なんて返事したのは僕の意地悪でした。……仕事で京都へ行くことが決まったときについでに二人でロマンチックな古都でデートできるって僕は浮かれていたのに、怜一郎さんがあまりに無関心だから悔しくって」
龍之介はフフ……と笑って言ったが、その後の顔が寂しそうだった。いくらこいつが優しい男だからとはいえ、浮気現場を見たのはショックだったに違いない。
意識を失った俺を連れ帰ってあのペイントを洗い流してくれたのはきっとこいつだ。どんな気持ちで……と思うと胸が痛む。
「すまなかった……。全部俺が悪いんだ……」
言葉による謝罪なんて意味がないだろうけど、俺は謝らずにはいられなかった。
痛感したんだ。俺は天真さんじゃなくて龍之介のことが好きだと。タイプじゃないとか、龍之介の方から好き好き言ってニューヨークまで追いかけて来たから一緒にいるとかそんなの全部言い訳だったんだ。
「……もういいですよ。染川さんはこれからしばらくイタリアへ行くって言っていました。怜一郎さんが染川さんにもう会ったりしないなら、僕はもうそのことを水に流しますよ」
龍之介が俺の肩を軽く撫でた。いっそのこと俺を思い切り殴ればいいのにと思ってしまう。
「でも……」
「そんなに謝りたいのなら、じゃあ、お詫びの印に僕とバカンスへ出かけてくれませんか?」
「……バカンス!?」
話が急展開すぎて、俺は口をポカンと開けた。
「だって僕、怜一郎さんと京都でデートしたかったのに、それが叶わず一人で寂しく日本まで行ってきたんですよ。ほら、僕たち新婚旅行もまだじゃないですかっ! ピアノ演奏のアルバイトだって毎日じゃないんですよね?」
確かに龍之介の言う通りだけれど……。
それで嫉妬していたところで偶然にも昔の恩師の天真さんと再会し、むしゃくしゃして結局あんなことになったなんて、説明するのも格好悪い。でも俺は恥を忍んで正直に伝えた。
「え、僕がエリカさんと子供に? 会いに行くわけないじゃないですか。エリカさんが産んだ子供はエリカさんと菜々美さんが二人で育てている、二人の子供なんですよ。そりゃ日本ではまだそれが許されない部分があるから、何か困っていないか連絡することはありますが、会うとかそんなこと、しようとも思っていないです。……そんなことしたら菜々美さんも怜一郎さんも傷つけることになるじゃないですか」
そうだ、こいつがそんな軽はずみな行動をするなんてあり得ないじゃないか。少し考えればわかりそうなことだった。俺はありもしないことで勝手に嫉妬の炎をめらめらと燃やしていたことを悔やんだ。
「僕にとっては血の繋がった子供よりも、怜一郎さんの方が大事なんです……」
「龍之介っ……」
怒りもせずに甘い言葉を囁かれ、俺の胸はキュンとした。
「でも怜一郎さん、僕がエリカさんと子供に会いに行くと思ってヤキモチ妬いてくれたの……それ、すごく嬉しいです」
龍之介はニヤニヤしながら俺の目を見た。
「日本へ行く前に怜一郎さんにエリカさんと子供に会って来ればって言われて、それもいいですね、なんて返事したのは僕の意地悪でした。……仕事で京都へ行くことが決まったときについでに二人でロマンチックな古都でデートできるって僕は浮かれていたのに、怜一郎さんがあまりに無関心だから悔しくって」
龍之介はフフ……と笑って言ったが、その後の顔が寂しそうだった。いくらこいつが優しい男だからとはいえ、浮気現場を見たのはショックだったに違いない。
意識を失った俺を連れ帰ってあのペイントを洗い流してくれたのはきっとこいつだ。どんな気持ちで……と思うと胸が痛む。
「すまなかった……。全部俺が悪いんだ……」
言葉による謝罪なんて意味がないだろうけど、俺は謝らずにはいられなかった。
痛感したんだ。俺は天真さんじゃなくて龍之介のことが好きだと。タイプじゃないとか、龍之介の方から好き好き言ってニューヨークまで追いかけて来たから一緒にいるとかそんなの全部言い訳だったんだ。
「……もういいですよ。染川さんはこれからしばらくイタリアへ行くって言っていました。怜一郎さんが染川さんにもう会ったりしないなら、僕はもうそのことを水に流しますよ」
龍之介が俺の肩を軽く撫でた。いっそのこと俺を思い切り殴ればいいのにと思ってしまう。
「でも……」
「そんなに謝りたいのなら、じゃあ、お詫びの印に僕とバカンスへ出かけてくれませんか?」
「……バカンス!?」
話が急展開すぎて、俺は口をポカンと開けた。
「だって僕、怜一郎さんと京都でデートしたかったのに、それが叶わず一人で寂しく日本まで行ってきたんですよ。ほら、僕たち新婚旅行もまだじゃないですかっ! ピアノ演奏のアルバイトだって毎日じゃないんですよね?」
確かに龍之介の言う通りだけれど……。
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