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続編 第二章 大人のプールパーティ (天真side)

続11.リボンの目隠し

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 子供の頃の怜一郎は何をさせても卒なくこなす優等生のお坊ちゃまだった。独特の美貌と自信に満ちた気高い顔つきをしていた。
 ピアノを教えていても上達が早い。元々才能がある上に彼は努力家で予習と復習をかかさないのだ。
でも僕が彼に惹かれたのは優秀だからという理由じゃない。いつでも自信たっぷりの彼の笑顔の奥に、満たされていない影の部分があると僕は勘づいて、そこに惹かれていたのだ。

 一緒にパーティーへ向かうために指定しておいた待ち合わせ場所に怜一郎は来た。僕が思った通りだ。
 幼い頃から人の目を気にして品行方正に生きてきた彼は、何かむしゃくしゃすることがあるとタガが外れて欲望に正直になる。プライドの高い彼は意中の男が元妻の元へ行ってしまい、今そうとう鬱憤が溜まっているに違いないのだ。
 ピアノを教えていた頃、罰と称していたずらをすると彼はうっとりととろけるような顔を見せた。自覚はないようだが、彼は昔からドMなのだ。

「来てくれて嬉しいよ、怜一郎。僕と一緒に変態のパーティーへ参加してくれるんだね。約束通り天国を見せてあげるよ」
「な、こんなところでっ……」
 怜一郎は顔を真っ赤にして周囲を見た。目の前を通っていく人々に変に思われていないか気が気じゃないようだ。
 そんな心配しなくても、この異国の地で日本語がわかる人間なんてそうそういないのに。

「そんな冗談を。本当は普通のパーティーなんですよね、俺はピアニストとしての天真さんを尊敬しているから同行したいと思っただけです」
 そんな言い訳を用意してこなくていいのに、と僕は微笑みながら彼を会場へ案内した。

 店の入口に立つ強面の男に会員証を見せると、彼は「ようこそ」と言ってドアを開けてくれた。
「ここがパーティー会場?」
 暗い店内に足を踏み入れることを躊躇う彼の背中を僕は優しく押した。
「そうだよ、さあ早く入って」

「いらっしゃいませ」
 そこは舞台裏みたいな空間で、僕たちに挨拶したスタッフが僕たちの荷物を受け取った。それから光沢のあるサテンの黒いリボンを僕たちの目元につけ、後頭部でしっかりと縛った。
「え、目隠し……?」
「ふふ、そうじゃないよ、仮面代わりのリボンだよ。ここから先は正体を隠して思い切りはめを外せる世界だからね」
 リボンには目の部分に切れ込みが入っていて、前が見られる。
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