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続編 第一章 初恋と再会 (怜一郎side)

続4.運命の再会 

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 店の窓からはマンハッタンの夜景が見える。その絶景を楽しんでもらうためなのか店内の照明は控えめで、ムーディーな雰囲気の中で彼らは料理や酒を楽しんでいる。
 店の奥のステージに置かれた白いアンティークのグランドピアノで俺は店主に指定されていた曲をゆったりと奏でていた。
 ピアノを弾くことに熱中している間は嫌なこと全て忘れられる。子供の頃もそうだったなぁ、と俺は懐かしい気持ちになっていた。

 店内の客たちにとってピアノの演奏はただのBGMでしかない。
 談笑する声や食事する音、椅子を引く音が店内に溢れている。
 誰も熱心に俺の演奏を聴いていない。だからこそ俺も心地良く弾けるのだった。

 閉店間際、賑わっていた店内もだいぶ空席も目立ってきた頃だった。ある曲が終わって俺が手を止めたタイミングで、一人の男が拍手をしながら歩み寄ってきた。
「素晴らしい……。どうも聞き覚えのある演奏だと思ったら、やっぱり怜一郎じゃないか……」

 その言葉が日本語だったから驚いたが、その人物の顔を見て俺は息を止めるほどの衝撃を受けた。
「天真さん……」
 重めに作った前髪から覗く作り物みたいな笑顔を見た瞬間、心の奥で眠っていた幼少期の記憶が一気に蘇った。


 5歳の頃に祖父母にねだってピアノを買ってもらったことをきっかけに俺はピアノを始めた。最初は近所のピアノ教室へ通っていたが、上達が早い俺は小学校へ上がる頃にはその教室のレッスンの内容にすっかり飽きてしまった。

「才能があるみたいだから、怜一郎にはもっとレベルの高い先生をつけてあげましょうね」
 母は俺の優秀さが嬉しかったようで、鼻高々にそう言った。

 そして週に一度俺の家までピアノを教えに来るようになったのが天真さんだった。当時、彼は高校生で、確か俺の父か母の知人の息子だと聞いていた。
 10歳上の彼は覚えがよくて自主練習も欠かさない俺のことを天真さんも気に入ってとても可愛がってくれ、よく母の前で俺のことを褒めてくれた。

 俺には男兄弟がいなかったからまるで兄ができたようで嬉しかった。彼はピアノがうまくていつもお面のようなきれいな作り笑顔を浮かべていた。いつでも堂々と姿勢を伸ばし、凛とした表情を崩さない彼に俺は心から憧れていた。
 俺はますますピアノに熱中するようになった。
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