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続編 第一章 初恋と再会 (怜一郎side)
続2.俺のモヤモヤ
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俺たちは日本にいる頃、龍之介と俺の妹エリカ、そして俺はエリカの彼女である菜々美さんと契約結婚した。宝条ホールディングスの令息・令嬢だった俺とエリカが結婚もせずに同性の恋人を持つことなんて両親が認めてくれるはずもなく、仕方なくそうしたのだ。人工授精でエリカは龍之介の子供を身ごもり、菜々美さんと共に日本でその子を育てている。
俺が菜々美さんのことを何も知らず一切愛していないのと同じで龍之介もエリカに愛情なんてないと言っていたものの、実際のところはわからない。エリカと龍之介が愛し合っていないという証拠なんてどこにもないのだから……。
考えても仕方のないことを考えかけてしまい、俺は首を左右にフルフル振った。そしてピアノに向かい、夢中で弾き始めた。
いや、そうしていないと余計なことを考えてしまうので、とにかく頭を空にしてピアノを弾くことに集中しているしかなかった。
でも集中力が切れると、ついエリカと子供のことが頭に浮かんで、俺はソファーへ身を投げだして目を閉じた。
龍之介は優しい。けど俺にだけじゃなくみんなに優しいのだ。
エリカと子供のことはしっかり者の菜々美さんに任せていれば何も心配ないと俺には言いながら、龍之介自身はエリカのことを気遣ってたびたびネットのビデオ通話やメールでエリカや菜々美さんに連絡を取っているのを俺は知っている。
子供が無事に生まれたとか、生まれた子供は男の子で風雅という名前にしたとか、別に知りたくもないのに聞いてしまった。耳にした瞬間はモヤモヤするが、その都度感情を抑え込んできた。
元々俺は龍之介のことを特別好きというわけでもなかった。美形だとは認めるが、龍之介みたいな「やさお」は俺にとってタイプじゃない。エリカの作戦にはめられたのと、龍之介が俺のことを好きだ好きだと言うからここまでの関係になったのだ。
だから龍之介なんてどうでもいいじゃないか。龍之介の輸入代行の仕事と株の売買で築いた資産により、俺は毎日ピアノを弾くだけの生活をさせてもらっているのだから、龍之介がエリカや子供のことが気になって連絡を取ることぐらい大目に見よう、と目を瞑って来たのだ。
夕食ができたと龍之介が呼ぶので、食卓に着いた。
テーブルの上には軽くトーストされたバゲットとサラダがある。鍋からクリームシチューをよそって龍之介が持ってきてくれた。
俺がうまいと言ったから、龍之介は時間があるとクリームシチューを作ってくれる。
サラダの生ハムもドレッシングも俺の好みに合わせてくれている。こいつはいつだってそうだ。
「どうせ日本に行くならエリカと子供に会ってきたらどうだ?」
シチューの中のとろけるように柔らかなブロッコリーをすくって食べ、俺はつっけんどんに言った。
一瞬、龍之介は目を見開き、
「まあ、……それもいいかもしれませんね」
とへらっと笑った。
いいかもだと? なんだよ。
俺は内心イライラしていた。エリカと子供になんて会わないと言ってほしかった。
俺が菜々美さんのことを何も知らず一切愛していないのと同じで龍之介もエリカに愛情なんてないと言っていたものの、実際のところはわからない。エリカと龍之介が愛し合っていないという証拠なんてどこにもないのだから……。
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いや、そうしていないと余計なことを考えてしまうので、とにかく頭を空にしてピアノを弾くことに集中しているしかなかった。
でも集中力が切れると、ついエリカと子供のことが頭に浮かんで、俺はソファーへ身を投げだして目を閉じた。
龍之介は優しい。けど俺にだけじゃなくみんなに優しいのだ。
エリカと子供のことはしっかり者の菜々美さんに任せていれば何も心配ないと俺には言いながら、龍之介自身はエリカのことを気遣ってたびたびネットのビデオ通話やメールでエリカや菜々美さんに連絡を取っているのを俺は知っている。
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だから龍之介なんてどうでもいいじゃないか。龍之介の輸入代行の仕事と株の売買で築いた資産により、俺は毎日ピアノを弾くだけの生活をさせてもらっているのだから、龍之介がエリカや子供のことが気になって連絡を取ることぐらい大目に見よう、と目を瞑って来たのだ。
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テーブルの上には軽くトーストされたバゲットとサラダがある。鍋からクリームシチューをよそって龍之介が持ってきてくれた。
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