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第六章 ありのままに生きる (龍之介side)

48.アナルプラグを入れたまま……☆

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 そのまま結婚式場内の教会で挙式が始まった。
 パイプオルガンの生演奏の中、入場した新郎姿の怜一郎さんをやっぱりきれいな人だなと僕は息を呑んで見つめた。
 続いてお父さんと一緒に入場した菜々美さんは演技なのか本当に泣いているのかわからないが、ベールの中に手を入れて手袋をした指先で涙を拭う素振りをしている。

「本当にお似合いの二人ね……」
 後ろの方からそんなささやきが聞こえて僕の胸はチクリと痛んだ。
 みんなが彼ら二人のために讃美歌を歌った。
 参列者みんなが彼らの結婚を祝福しているのだ。

 ……もし怜一郎さんの隣にいるのが菜々美さんじゃなく僕だったら、みんなはこんなふうに祝ってくれるだろうか。
 そんなこときっとない。同性婚は日本では認められていないし、それになにより怜一郎さんの隣にいうのにふさわしいのはああいう美人の女性だとみんな思うだろう。
 つまり僕の怜一郎さんへの気持ちは本来抱いてはいけないものなのだろう……結婚式の日が近づくにつれ僕はここのところそんなことばかり考えて陰鬱な気持ちになっていたが、実際に二人の晴れ姿を目の当たりにすると、僕は菜々美さんには敵わないという感情が心に溢れてめまいがした。

 牧師が誓いのキスを二人にするように言い、僕はハッと現実に引き戻された。
「大丈夫、しているように見えても寸止めよ。私たちのときのようにね」
 隣にいるエリカさんが僕に耳打ちした。
 別にキスぐらいしてもいい。でもそれをきっかけに菜々美さんって素敵だな……なんて彼が思い始めちゃったら僕はもうどうしたらいいか。
 キスをする直前、菜々美さんのベールをめくろうとして怜一郎さんは、
「うっ……」
 と肩を震わせていた。
「どうしたんです?」
 聞こえないけど菜々美さんはそう言って心配しているみたいだった。
「大丈夫、なんでもないよ」
 彼はふふ、と笑って見せてそう答えているに違いなかった。
 僕にはわかる。身をかがめたはずみでアナルプラグが彼の後孔のいい場所を刺激したのだろう。
 よしよし、いいぞ……と僕は人知れずほくそ笑んだ。

 会場を移り、披露宴が始まった。
 新郎新婦の挨拶が終わると、何やら長ったらしい挨拶や紹介へと続いた。
 座りにくいドレスの菜々美さんはスタッフに補助してもらい椅子に腰かけた。
 その隣で怜一郎さんもゆっくりと慎重に椅子に座った。
 座ることによってアナルプラグがぬぬっ……と奥まで入ったのだろう。
 柔らかな肉癖をかき分けて異物が侵入する感覚に彼は色っぽく顔を歪めて宙を見つめた。
 そのとろけるような表情は、今日という晴れの舞台に立てた喜びを噛みしめている顔に見えなくもない。

 しばらくすると彼は菜々美さんと何か小声で会話を始め、いい雰囲気で微笑み合っている。
「挙式のときのドレスも素敵でしたが、披露宴のドレスも素敵です」
 なんて彼女に言っているのだろうか、と僕はイライラした。

 テーブルの上の水か何かを口にしている怜一郎さんがビクッと肩を震わした。
 げふっ、げふっ……と飲み物を咽ている。
 実は今、僕が手元のリモコンで怜一郎さんの体内に挿入したプラグの電源を入れたのだ。
 電動アナルプラグはゆったりとした動きでズン、ズンと彼の肉壺を突き上げ始めた。

「どうしたんです、やっぱり体調が悪いのでは……?」
 と菜々美さんは心配している様子だった。
「いや、ちょっと。でも心配しないで」
 きっと彼は菜々美さんにそう言ったに違いない。

 それから二人は司会進行役に言われてゆっくりと立ち上がり、ウエディングケーキの前まで歩いた。
 途中で僕の方を睨み見たが、僕はニコッと笑って手を振ってやった。
 怜一郎さんは背筋を正して汗をかきながら、周囲に異変を知られることなくケーキ入刀をやってのけた。
 その後はビデオレターなどを見る時間になって、僕はリモコンのスイッチを弱から強へ切り替えた。
 席に戻って安堵していた彼は再びビクッと体を震わせた。
 スクリーンでは感動的なビデオが流れているため、下を向いて刺激に耐えている彼は傍から見れば涙をこらえているように見えたに違いない。
「……んっ、……んんっ」
 プラグの律動に感じて漏らしている声も嗚咽をこらえているように見えるだろう。

 学生時代の恩師からの手紙を司会進行が読み上げたタイミングで、僕は電動プラグのスイッチをMAXにした。
 きっと怜一郎さんの肉壺の中でプラグはグボ、グボ、グボ、と激しく上下運動していることだろう。
 会場内のBGMがそれをかき消していてきっとすぐそばにいる菜々美さんにも聞こえていないだろうけど。
 とうとう彼は下を向いて両手で顔を覆い、ビクビクッと肩を大きく震わせた。
 彼の下半身が大変なことになっているなんて僕以外には誰も知らない。
 恩師からの手紙にあんなに感動して……と周囲は温かい眼差しを彼に向けた。
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