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第五章 踏みにじられた俺の心 (怜一郎side)
38.エリカの懐妊
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荷物を持って自宅の門をくぐるとお手伝いさんが駆け寄って来た。
「お帰りなさいませ、怜一郎様。龍之介様とはご一緒ではなかったのですか?」
俺の荷物を受け取りながら、彼女が尋ねた。
「ああ、一緒だったが、母親が入院したらしく、あいつは病院に寄ってから帰ってくるよ」
「左様でございますか。奥様に怜一郎様と龍之介様が帰られたらすぐに知らせるよう申し付けられておりましたので」
「え、何の用だろう……」
仕事は無断欠勤ではなくちゃんと有給を申請していたはずだから、母親に何か言われるようなことはしていないはずだった。
「それよりエリカはいるか?」
俺があの船のファッションショーで恥部を丸出しでステージを歩いたのはエリカの提案だったと龍之介が言っていた。だから俺は一刻も早く彼女を問い詰めたかった。偽装結婚の件も。とにかく聞きたいことだらけだ。
「エリカ様はリビングにいらっしゃいます」
荷物をお手伝いさんに任せ、俺は廊下を進みリビングのドアを開けた。
「おい、エリカっ! 今度という今度はさすがに……」
リビングのソファーでエリカは母親と一緒にいた。
「何です、怜一郎。大声を出して」
とエリカびいきの母親は俺を睨みつけた。
くそ、母が一緒にいるなんて。タイミングが悪かった……。
母親に擁護されて得意げな表情のエリカにイラっとした。
お前のせいで俺はとんでもない目にあったんだぞ、と怒鳴りたいが、母のいる前ではそんなことできない。
あの船でのことが両親にバレたら大変だ。
「怜一郎、龍之介さんは一緒じゃないの? ちょうどあなたたちに重大発表があるのよ」
「龍之介はちょっと用があって後から帰って来ます。……重大発表って何です?」
俺は母親に作り笑顔を向けた。
「ふふ、エリカがおめでたなの」
「……っ!」
お、おめでた……!?
俺は驚きのあまり声も出せなかった。
「本当はお兄様より龍之介さんに先に伝えたかったんだけど」
お腹に手を当てたエリカがそう言って微笑む。
「……そ、それは、龍之介の子……なのか……?」
震える声で尋ねた俺に、母親とエリカが笑った。
「そんなの当たり前でしょう」
「いやだわ……なんてことおっしゃるの、お兄様ったら」
エリカと龍之介は夫婦関係にないって、偽装結婚なんだって、昨日聞いたばかりだったのに……。龍之介のその言葉に俺はどれほど安堵したことか。
俺は騙されたのか? 気持ちまであいつに弄ばれたのか……?
「……う、嘘だろう……」
あまりのショックに俺はめまいを感じ、気が遠くなってくらくらと倒れそうになるような錯覚を覚えた。
絶望して立ち尽くす俺に母親は、
「嘘じゃないわ。怜一郎、あなたも早く結婚して子供を作りなさいね。宝条家の長男としてもっとしっかりと自覚をもってちょうだい」
といつもの冷たい口調でピシャリと言った。
「お帰りなさいませ、怜一郎様。龍之介様とはご一緒ではなかったのですか?」
俺の荷物を受け取りながら、彼女が尋ねた。
「ああ、一緒だったが、母親が入院したらしく、あいつは病院に寄ってから帰ってくるよ」
「左様でございますか。奥様に怜一郎様と龍之介様が帰られたらすぐに知らせるよう申し付けられておりましたので」
「え、何の用だろう……」
仕事は無断欠勤ではなくちゃんと有給を申請していたはずだから、母親に何か言われるようなことはしていないはずだった。
「それよりエリカはいるか?」
俺があの船のファッションショーで恥部を丸出しでステージを歩いたのはエリカの提案だったと龍之介が言っていた。だから俺は一刻も早く彼女を問い詰めたかった。偽装結婚の件も。とにかく聞きたいことだらけだ。
「エリカ様はリビングにいらっしゃいます」
荷物をお手伝いさんに任せ、俺は廊下を進みリビングのドアを開けた。
「おい、エリカっ! 今度という今度はさすがに……」
リビングのソファーでエリカは母親と一緒にいた。
「何です、怜一郎。大声を出して」
とエリカびいきの母親は俺を睨みつけた。
くそ、母が一緒にいるなんて。タイミングが悪かった……。
母親に擁護されて得意げな表情のエリカにイラっとした。
お前のせいで俺はとんでもない目にあったんだぞ、と怒鳴りたいが、母のいる前ではそんなことできない。
あの船でのことが両親にバレたら大変だ。
「怜一郎、龍之介さんは一緒じゃないの? ちょうどあなたたちに重大発表があるのよ」
「龍之介はちょっと用があって後から帰って来ます。……重大発表って何です?」
俺は母親に作り笑顔を向けた。
「ふふ、エリカがおめでたなの」
「……っ!」
お、おめでた……!?
俺は驚きのあまり声も出せなかった。
「本当はお兄様より龍之介さんに先に伝えたかったんだけど」
お腹に手を当てたエリカがそう言って微笑む。
「……そ、それは、龍之介の子……なのか……?」
震える声で尋ねた俺に、母親とエリカが笑った。
「そんなの当たり前でしょう」
「いやだわ……なんてことおっしゃるの、お兄様ったら」
エリカと龍之介は夫婦関係にないって、偽装結婚なんだって、昨日聞いたばかりだったのに……。龍之介のその言葉に俺はどれほど安堵したことか。
俺は騙されたのか? 気持ちまであいつに弄ばれたのか……?
「……う、嘘だろう……」
あまりのショックに俺はめまいを感じ、気が遠くなってくらくらと倒れそうになるような錯覚を覚えた。
絶望して立ち尽くす俺に母親は、
「嘘じゃないわ。怜一郎、あなたも早く結婚して子供を作りなさいね。宝条家の長男としてもっとしっかりと自覚をもってちょうだい」
といつもの冷たい口調でピシャリと言った。
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