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第四章 僕の気持ち (龍之介side)
33.告白
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僕は慌てて駆け寄り、怜一郎さんの腰を抱きしめて引っ張った。
「おい、放せっ!」
彼は強引に手すりに足をかけて海の方へ飛び出そうとする。
手すりの向こうはすぐに海で、この手を放せば彼は海へ落ちてしまう。
「だ、だめっ、絶対に放しませんっ! 死んじゃダメ、だったら僕が代わりに死にますっ!」
どうにかヒザを乗り出そうと暴れる彼を夢中で柵から引きずり下ろした。
デッキの床へ押し倒した彼に馬乗りになって、僕は彼の両手を押さえつけた。
はあ、はあ、はあ、と僕たちは軽く汗ばみ乱れた呼吸を整えながら見つめ合った。
「……なんでだよっ! 俺がいなくなればお前はそれで満足だろう。大嫌いで憎んでいる俺が消える上に、宝条ホールディングスも手に入るんだから」
「違いますっ! 本当のことを言うと、僕は宝条ホールディングスにもエリカさんにも興味がないんです」
「……なんだって!?」
怜一郎さんはひどく驚いていた。
「どういうことだ、だってお前は……。じゃあどうしてエリカと結婚したんだよっ! 宝条の婿にまでなって。……まさか財産目当てか?」
「いえ、僕の家もそれほどお金に困っていませんから、財産目当てなんてことはありません。実は僕、彼女の計画に協力して偽装結婚したのです」
「計画っ!? 偽装結婚っ!?」
真面目な怜一郎さんは本気で僕とエリカさんのことを愛し合う夫婦だと思っていたようだ。
彼は目を丸くして、すっかり落ち着きを取り戻した。
「とりあえず、退けよ……」
馬乗りで彼を押さえつけていた僕を退かせると、彼は立ち上がってガウンの汚れを払った。
「詳しく説明しろよ……」
「僕が興味あるのは義兄さんだけなのです」
「えっ……」
いつでも堂々としている彼が驚きのあまりまごついている。
「中等部の入学式で僕はあなたに一目惚れし、告白なんてできないままでしたが、その後も僕はあなたのことを忘れられませんでした。半年ほど前、僕がやっていた個人輸入の仕事を通じてエリカさんと知り合ったのは偶然でした。会話の中で僕が義兄さんに恋していることを見破られて、それで彼女と偽装結婚すれば、義兄さんと……その、恋仲にさせてあげると言われて……。実は彼女もまた同性愛者ですから、僕に興味はないんです。僕はずっとあなたのことが好きでした。学園の中等部の頃から、ずっと……」
本当は性的関係を持たせてあげると言われたのだが、それではまるで体目当てで怜一郎さんに近づいたと誤解されそうだから、恋仲という言葉を使って説明した。
だって、僕の怜一郎さんへの想いはそんなものじゃないから。
「ちょっと待ってくれ。俺のこと好きだったなんて、そんなはずは……。だってお前は今まで俺のことを脅して……、昨日だってあんな……」
「それはエリカさんの指示なんです。義兄さんを堕とすにはストレートに告白したんじゃダメだから弱みに付け込めって……。この船に乗ることも昨日のファッションショーに出ることもエリカさんの提案なんです」
「くそっ、アイツまた……」
彼は悔しそうに眉をひそめた。
「……義兄さん。僕はずっとあなたのことが好きでした。学園の中等部の頃から、ずっと……」
僕は大事な部分をはぐらかされたくなくて真剣にそう告げると、怜一郎さんは瞳の奥を揺らして頬を染め表情をとろけさせ、どうしたらいいかわからず困ったという様子で目を泳がせた。
まんざらでもないんだ……、こんなに照れて嬉しそうな顔をするなんて。
可愛い反応に僕の胸はキュンキュンした。
「おい、放せっ!」
彼は強引に手すりに足をかけて海の方へ飛び出そうとする。
手すりの向こうはすぐに海で、この手を放せば彼は海へ落ちてしまう。
「だ、だめっ、絶対に放しませんっ! 死んじゃダメ、だったら僕が代わりに死にますっ!」
どうにかヒザを乗り出そうと暴れる彼を夢中で柵から引きずり下ろした。
デッキの床へ押し倒した彼に馬乗りになって、僕は彼の両手を押さえつけた。
はあ、はあ、はあ、と僕たちは軽く汗ばみ乱れた呼吸を整えながら見つめ合った。
「……なんでだよっ! 俺がいなくなればお前はそれで満足だろう。大嫌いで憎んでいる俺が消える上に、宝条ホールディングスも手に入るんだから」
「違いますっ! 本当のことを言うと、僕は宝条ホールディングスにもエリカさんにも興味がないんです」
「……なんだって!?」
怜一郎さんはひどく驚いていた。
「どういうことだ、だってお前は……。じゃあどうしてエリカと結婚したんだよっ! 宝条の婿にまでなって。……まさか財産目当てか?」
「いえ、僕の家もそれほどお金に困っていませんから、財産目当てなんてことはありません。実は僕、彼女の計画に協力して偽装結婚したのです」
「計画っ!? 偽装結婚っ!?」
真面目な怜一郎さんは本気で僕とエリカさんのことを愛し合う夫婦だと思っていたようだ。
彼は目を丸くして、すっかり落ち着きを取り戻した。
「とりあえず、退けよ……」
馬乗りで彼を押さえつけていた僕を退かせると、彼は立ち上がってガウンの汚れを払った。
「詳しく説明しろよ……」
「僕が興味あるのは義兄さんだけなのです」
「えっ……」
いつでも堂々としている彼が驚きのあまりまごついている。
「中等部の入学式で僕はあなたに一目惚れし、告白なんてできないままでしたが、その後も僕はあなたのことを忘れられませんでした。半年ほど前、僕がやっていた個人輸入の仕事を通じてエリカさんと知り合ったのは偶然でした。会話の中で僕が義兄さんに恋していることを見破られて、それで彼女と偽装結婚すれば、義兄さんと……その、恋仲にさせてあげると言われて……。実は彼女もまた同性愛者ですから、僕に興味はないんです。僕はずっとあなたのことが好きでした。学園の中等部の頃から、ずっと……」
本当は性的関係を持たせてあげると言われたのだが、それではまるで体目当てで怜一郎さんに近づいたと誤解されそうだから、恋仲という言葉を使って説明した。
だって、僕の怜一郎さんへの想いはそんなものじゃないから。
「ちょっと待ってくれ。俺のこと好きだったなんて、そんなはずは……。だってお前は今まで俺のことを脅して……、昨日だってあんな……」
「それはエリカさんの指示なんです。義兄さんを堕とすにはストレートに告白したんじゃダメだから弱みに付け込めって……。この船に乗ることも昨日のファッションショーに出ることもエリカさんの提案なんです」
「くそっ、アイツまた……」
彼は悔しそうに眉をひそめた。
「……義兄さん。僕はずっとあなたのことが好きでした。学園の中等部の頃から、ずっと……」
僕は大事な部分をはぐらかされたくなくて真剣にそう告げると、怜一郎さんは瞳の奥を揺らして頬を染め表情をとろけさせ、どうしたらいいかわからず困ったという様子で目を泳がせた。
まんざらでもないんだ……、こんなに照れて嬉しそうな顔をするなんて。
可愛い反応に僕の胸はキュンキュンした。
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