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06.確かに楽しいかもしれない
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はあ、はあ、と忙しなく息が漏れる。
ぺちゃ、ぺちゃ、と舌が背を這う音を追って、ぞくぞくと不思議な感覚が背骨を駆け上がっていく。
なけなしの胸を弄られながら、マイリスは長椅子の座面に突っ伏すように蹲った。その背後から、王の身体がマイリスの身体を抱え込む。背の翼も、マイリスをすっぽりと覆い隠すように包み込んでいる。
どうにも動けず、かといって、自分はどうしたらいいのかもよくわからずに、マイリスは王にされるがままだ。
部屋着もすっかりはだけられ、脱がされてしまった。
「狭い」
ぽそりと王が呟いた途端、周囲の風景が変わった。
狭くて固い長椅子の座面から、一瞬できれいに整えたふかふかのベッドの上に移動していたのだ。これも、王の使える竜の魔法なのだろうか。
蹲っていたマイリスの身体がひっくり返されて、そこに王がのしかかる。
「は、へい……」
「クスティだ」
「あ、あの、クスティ様」
「ん」
王の翠玉の瞳はどことなく蕩けているが、それでも緑の炎のように爛々と輝いている。その目にじっと見つめられて、マイリスは、蛇に睨まれたカエルというのはこんな心持ちになるのだろうかと思う。
恐ろしさより、森を映し込んだ深い湖を思わせる色に吸い込まれてしまいそうで、思わず震えてしまう。
「怖いか?」
「いえ……」
顔をぺろりと舐めて、王が問う。反射的に否定して、それから少し考える。
「へい……クスティ様の目の色が、宝石のようで……あまりに深くて、囚われてしまいそうだなと」
マイリスの言葉に、王はくすりと笑った。
笑うと、やはり王の顔は柔らかくなる。
「俺の目に捕らえておくというのは、いいな」
「はい?」
「目に入れておけば、何かに盗られる心配もない」
「はあ……あっ」
今度は耳を齧られて、マイリスの身体が浮き上がる。軽く甘噛みされるだけで、どうしてこうも身体が動いてしまうのか。
それに、“盗られる”とは。王はいったい何を心配しているのか。
その間にも顔のあちこちを啄まれて、マイリスの息がどんどん荒くなっていく。
近衛騎士は男ばかりだし、王国騎士団も九割がた男だった。
近衛に来てからはともかく、王国騎士だった時は、猥談なんて日常的に耳にしていた。男女の絡みのことだって、なんとなくレベルではあるが理解している。毎日のように娼館に通い詰める者だって何人もいたし、少ない女騎士同士で情報の交換をすることもあった。
けれど、聞くと経験するとではまるで勝手が違う。
「へっ、あの、クスティ様、あの、何か、変では、ないですか」
「何がだ」
「いえ、あの、何か、です」
ちゅ、ちゅ、と音を立てて肌を吸われ、マイリスは身悶える。その姿を見下ろして、王は小さく首を捻る。
「そのようなことを訊かれても、他に比べる対象など知らないぞ」
「え」
「おかしいところなどないと思えばいい。たぶんこういうものだからな」
「え」
「いいから黙っていろ」
「はい……」
王が変でないというなら構わない……んじゃないだろうか。
マイリスは軽く息を吐く。
初めては痛いとか、男性のサイズがどうとかこうとか、奥に届くとああだとか、肝心なところは本当にふんわりしかわからない。経験のある者から聞いた時だって、詳しい部分はどうにもふんわりだったのだ。
がぶり、と今度は少し強めに首を噛まれた。
この、首を噛むという行為にも何か意味があるのだろうか。
「クスティ様、あの、どうして、首を噛むのでしょうか」
「――ん」
舐めたり噛んだりは、そんなに楽しいのだろうか。
胸を触ったり揉んだりというのはよく聞いたけれど、首を噛むというのは聞いたことがない。王が半竜であることに、関係しているのか。
「お前は、余分なことばかり考えすぎるようだ」
「そんな、つもりは……あっ」
お腹のあたりに熱を感じる。熱くて固くて……ああ、これが、と思う。
押し当てられて、擦り付けられて、王の息もだんだんと荒くなっていく。
ぎゅうと抱き寄せられて、皮膚とは違う触感が気持ちいいと思う。
相変わらず熱は押し当てられたままで、どうにも直視はできなくて、けれど、お腹ではなくもっと別な場所に当てて欲しくて、身体を捩らせてしまう。
王がとろりと蕩けるような笑みを浮かべる。ピシリと音を立てて、王の尾がシーツを強く打った。
「もっと欲しがれ」
「は……あの……」
つつつ、と王の指先が身体をなぞる。
欲しがれと言われても、何を……と考えたところで、いきなりそこに触れられた。びくんと何かが脳天へと突き抜けて、大きく身体が跳ねる。
「ああっ!」
口をついて甲高い声が上がって、思わず王の身体にしがみついてしまう。
王がにまにまと笑って、そこを押しつぶしつつ指を前後する。
「あ、あ、陛下、へい……何か、あっ、あっ」
「クスティと呼べと言っているだろう」
かすかだった水音が、だんだんとはっきり聞こえるようになっていく。
王が鼻をひくりと動かして、小さく吐息を漏らす。
「昔はこれの何が楽しいのかと思ったが、確かに楽しいものだな。真っ赤になったお前は妙にかわいいし、匂いも強くなった」
「何、を……ああっ、だめ、だめです、陛下」
「クスティだ。呼ぶまでやめてやらん」
「そん、あ、だめ、だめです」
「何がだめなんだ?」
「わ、わからない、ですけど、だめ……」
口を塞がれて、ぬるりと舌が入ってきた。
人のそれとは違った形の、尖った舌先で口の中を擽られて、マイリスの身体の奥にも熱が溜まっていく。
声が鼻に抜けて、んふ、と吐息交じりに漏れていく。
ぐちゅぐちゅという音が自分の口と脚の間の両方から聞こえて、とてもじゃないが、王の顔を正視できない。
恥ずかしくて目が開けられない。
なのに、今度は、指で擽られている場所よりももう少し下に熱を感じて、思わず目を開けてしまった。王の翠玉とまともに目が合って、顔に血が上る。
押し付けられているのは、王のモノだろう。
ぐりぐりぐちゅぐちゅ、こね回すように動かしている。
「ん、んっ」
王の熱が、まるで感染してしまったようだ。
マイリスの身体も、熱くて熱くて堪らなくなってしまう。
「あ……っ、へい、か、ああっ」
唇が外れて仰け反るマイリスの喉に、また王が口を寄せる。
「クスティだ」
「は、だめ……だめです、もう」
「何が、だめなんだ」
「私、変で……あ、どこか、行って……あっ」
王の腰をもっと押し当てるようにと、脚を絡めてしまう。あちこち齧りながら、王の頭が下がっていく。
頭の中がぐちゃぐちゃだ。
国のため、王のため……なんて考えていたはずなのに、そんなもの、どこか遠くへ飛んでいってしまった。
王から与えられるものが、マイリスの何もかもを持って行ってしまう。
急にひっくり返されて、腰を持ち上げられた。背中に覆い被った王の翼に包まれて、尾で絡め取られて、たちまち身動きが取れなくなってしまう。
「あ、陛下、あ、ああ……」
襟元を噛まれて、腰にあてがわれたものがゆっくりと入り込んでくる。
ピリッとした痛みはあったが、思っていたほどではない。けれど、圧迫感はかなりのもので、少し苦しい。
「ん、あ……陛下……」
は、は、と荒く短い息が、背後から聞こえる。時折強く噛まれて、けれど、痛みはぞくりとする感覚に変わって、また声が出てしまう。
「く……っ、ふ」
「は、あ……ぅ」
王の入り込んだ場所が、ひくんひくんと痙攣する。奥までしっかりと入り込んだまま留まって、微妙な痛みと、強い圧迫感と、それから未知のうっとりするような感覚をマイリスに送り込む。
ぼうっとして、考えが定まらない。
じっと留まったままの王を包むそこが、大きく引き攣れるように動きを変えて行く。だんだん物足りなさが募ったマイリスが甘えるように背を擦り付けると、王の手がさらりと腹を撫でて、敏感な場所をくすぐった。
「は、ぁん……陛下……」
「クスティと呼べと言ってるのに、強情なやつだ」
「申し訳……ですが、恐れ多く、て」
「だめだ、クスティと呼べ……でなきゃ、動いてやらん」
はあはあと、忙しなく息を吐く王の顔から、ポタリと汗がしたたり落ちる。その、ぽとりという小さな刺激にも、ぴくりと反応してしまう。
「あ、あっ……陛……」
「クスティだ」
「く、クスティ、様……」
「ん」
今度は、肩を噛まれる。
押し込まれるように腰が動いて、マイリスの背がびくんと反応してしまう。ん、と背中で微かに声がして、大きく息を吐く気配がする。
身体に回された腕に、力がこもる。
「マイリス」
「は、はい」
「約束だ、動いてやろう」
「え……あぅ」
囁いて、王が急に動き出した。
円を描くように、擦りつけるように、抉るように……パン、と肌の打ち合う音がして、マイリスの身体の芯を、今度こそはっきりした快楽が走り抜ける。
「は、あ、あん、へい、あっ」
「名を、呼べ。お前は、案外、物覚えが、悪い」
「あ、あ、クスティ、さま」
「ん」
は、は、と悶えるマイリスの手は既に身体を支えられなくなっている。上体を突っ伏したまま腰だけを高く掲げたところに、王がのし掛かっている体勢だ。
翼は相変わらずしっかりとマイリスを包み込んだまま、脚に絡められた尾の先が、ときおりシーツをぴしりと打つ。
ふたりの背に汗が浮かび、つ、と伝い落ちる。
ぐちゅぐちゅ、ぱんぱんという音と、忙しなく空気を求める呼吸音と、高く喘ぐ声だけが部屋に響く。
「あ、あ……へい、クスティ、様、私……」
「ん、いく、ぞ……」
ひと際強く穿たれて、マイリスの身体が跳ね上がり、ぐっと反らされる。
それをしっかりと抱きとめて、王は最奥に押し付けるようにしてぴたりと動きを止めた。どくんと震えるように脈打つ王から、マイリスの身体の中に熱が広がっていく。
はあ、と大きく息を吐くマイリスの身体が脱力する。王に抱えられたまま力が抜けて、そのまま目を閉じる。寄り掛かるように背を預け、あちこち舐められたり齧られたりしながら、意識が遠くなる。
翌朝、マイリスの目を覚ましたのは、「陛下!」という宰相の怒鳴り声と、寝室の扉をドンドンと叩く音だった。
*****
※王の閨教育は七十年近く前に座学で行われたきりであるため、現在は本能重点でお送りしています。
ぺちゃ、ぺちゃ、と舌が背を這う音を追って、ぞくぞくと不思議な感覚が背骨を駆け上がっていく。
なけなしの胸を弄られながら、マイリスは長椅子の座面に突っ伏すように蹲った。その背後から、王の身体がマイリスの身体を抱え込む。背の翼も、マイリスをすっぽりと覆い隠すように包み込んでいる。
どうにも動けず、かといって、自分はどうしたらいいのかもよくわからずに、マイリスは王にされるがままだ。
部屋着もすっかりはだけられ、脱がされてしまった。
「狭い」
ぽそりと王が呟いた途端、周囲の風景が変わった。
狭くて固い長椅子の座面から、一瞬できれいに整えたふかふかのベッドの上に移動していたのだ。これも、王の使える竜の魔法なのだろうか。
蹲っていたマイリスの身体がひっくり返されて、そこに王がのしかかる。
「は、へい……」
「クスティだ」
「あ、あの、クスティ様」
「ん」
王の翠玉の瞳はどことなく蕩けているが、それでも緑の炎のように爛々と輝いている。その目にじっと見つめられて、マイリスは、蛇に睨まれたカエルというのはこんな心持ちになるのだろうかと思う。
恐ろしさより、森を映し込んだ深い湖を思わせる色に吸い込まれてしまいそうで、思わず震えてしまう。
「怖いか?」
「いえ……」
顔をぺろりと舐めて、王が問う。反射的に否定して、それから少し考える。
「へい……クスティ様の目の色が、宝石のようで……あまりに深くて、囚われてしまいそうだなと」
マイリスの言葉に、王はくすりと笑った。
笑うと、やはり王の顔は柔らかくなる。
「俺の目に捕らえておくというのは、いいな」
「はい?」
「目に入れておけば、何かに盗られる心配もない」
「はあ……あっ」
今度は耳を齧られて、マイリスの身体が浮き上がる。軽く甘噛みされるだけで、どうしてこうも身体が動いてしまうのか。
それに、“盗られる”とは。王はいったい何を心配しているのか。
その間にも顔のあちこちを啄まれて、マイリスの息がどんどん荒くなっていく。
近衛騎士は男ばかりだし、王国騎士団も九割がた男だった。
近衛に来てからはともかく、王国騎士だった時は、猥談なんて日常的に耳にしていた。男女の絡みのことだって、なんとなくレベルではあるが理解している。毎日のように娼館に通い詰める者だって何人もいたし、少ない女騎士同士で情報の交換をすることもあった。
けれど、聞くと経験するとではまるで勝手が違う。
「へっ、あの、クスティ様、あの、何か、変では、ないですか」
「何がだ」
「いえ、あの、何か、です」
ちゅ、ちゅ、と音を立てて肌を吸われ、マイリスは身悶える。その姿を見下ろして、王は小さく首を捻る。
「そのようなことを訊かれても、他に比べる対象など知らないぞ」
「え」
「おかしいところなどないと思えばいい。たぶんこういうものだからな」
「え」
「いいから黙っていろ」
「はい……」
王が変でないというなら構わない……んじゃないだろうか。
マイリスは軽く息を吐く。
初めては痛いとか、男性のサイズがどうとかこうとか、奥に届くとああだとか、肝心なところは本当にふんわりしかわからない。経験のある者から聞いた時だって、詳しい部分はどうにもふんわりだったのだ。
がぶり、と今度は少し強めに首を噛まれた。
この、首を噛むという行為にも何か意味があるのだろうか。
「クスティ様、あの、どうして、首を噛むのでしょうか」
「――ん」
舐めたり噛んだりは、そんなに楽しいのだろうか。
胸を触ったり揉んだりというのはよく聞いたけれど、首を噛むというのは聞いたことがない。王が半竜であることに、関係しているのか。
「お前は、余分なことばかり考えすぎるようだ」
「そんな、つもりは……あっ」
お腹のあたりに熱を感じる。熱くて固くて……ああ、これが、と思う。
押し当てられて、擦り付けられて、王の息もだんだんと荒くなっていく。
ぎゅうと抱き寄せられて、皮膚とは違う触感が気持ちいいと思う。
相変わらず熱は押し当てられたままで、どうにも直視はできなくて、けれど、お腹ではなくもっと別な場所に当てて欲しくて、身体を捩らせてしまう。
王がとろりと蕩けるような笑みを浮かべる。ピシリと音を立てて、王の尾がシーツを強く打った。
「もっと欲しがれ」
「は……あの……」
つつつ、と王の指先が身体をなぞる。
欲しがれと言われても、何を……と考えたところで、いきなりそこに触れられた。びくんと何かが脳天へと突き抜けて、大きく身体が跳ねる。
「ああっ!」
口をついて甲高い声が上がって、思わず王の身体にしがみついてしまう。
王がにまにまと笑って、そこを押しつぶしつつ指を前後する。
「あ、あ、陛下、へい……何か、あっ、あっ」
「クスティと呼べと言っているだろう」
かすかだった水音が、だんだんとはっきり聞こえるようになっていく。
王が鼻をひくりと動かして、小さく吐息を漏らす。
「昔はこれの何が楽しいのかと思ったが、確かに楽しいものだな。真っ赤になったお前は妙にかわいいし、匂いも強くなった」
「何、を……ああっ、だめ、だめです、陛下」
「クスティだ。呼ぶまでやめてやらん」
「そん、あ、だめ、だめです」
「何がだめなんだ?」
「わ、わからない、ですけど、だめ……」
口を塞がれて、ぬるりと舌が入ってきた。
人のそれとは違った形の、尖った舌先で口の中を擽られて、マイリスの身体の奥にも熱が溜まっていく。
声が鼻に抜けて、んふ、と吐息交じりに漏れていく。
ぐちゅぐちゅという音が自分の口と脚の間の両方から聞こえて、とてもじゃないが、王の顔を正視できない。
恥ずかしくて目が開けられない。
なのに、今度は、指で擽られている場所よりももう少し下に熱を感じて、思わず目を開けてしまった。王の翠玉とまともに目が合って、顔に血が上る。
押し付けられているのは、王のモノだろう。
ぐりぐりぐちゅぐちゅ、こね回すように動かしている。
「ん、んっ」
王の熱が、まるで感染してしまったようだ。
マイリスの身体も、熱くて熱くて堪らなくなってしまう。
「あ……っ、へい、か、ああっ」
唇が外れて仰け反るマイリスの喉に、また王が口を寄せる。
「クスティだ」
「は、だめ……だめです、もう」
「何が、だめなんだ」
「私、変で……あ、どこか、行って……あっ」
王の腰をもっと押し当てるようにと、脚を絡めてしまう。あちこち齧りながら、王の頭が下がっていく。
頭の中がぐちゃぐちゃだ。
国のため、王のため……なんて考えていたはずなのに、そんなもの、どこか遠くへ飛んでいってしまった。
王から与えられるものが、マイリスの何もかもを持って行ってしまう。
急にひっくり返されて、腰を持ち上げられた。背中に覆い被った王の翼に包まれて、尾で絡め取られて、たちまち身動きが取れなくなってしまう。
「あ、陛下、あ、ああ……」
襟元を噛まれて、腰にあてがわれたものがゆっくりと入り込んでくる。
ピリッとした痛みはあったが、思っていたほどではない。けれど、圧迫感はかなりのもので、少し苦しい。
「ん、あ……陛下……」
は、は、と荒く短い息が、背後から聞こえる。時折強く噛まれて、けれど、痛みはぞくりとする感覚に変わって、また声が出てしまう。
「く……っ、ふ」
「は、あ……ぅ」
王の入り込んだ場所が、ひくんひくんと痙攣する。奥までしっかりと入り込んだまま留まって、微妙な痛みと、強い圧迫感と、それから未知のうっとりするような感覚をマイリスに送り込む。
ぼうっとして、考えが定まらない。
じっと留まったままの王を包むそこが、大きく引き攣れるように動きを変えて行く。だんだん物足りなさが募ったマイリスが甘えるように背を擦り付けると、王の手がさらりと腹を撫でて、敏感な場所をくすぐった。
「は、ぁん……陛下……」
「クスティと呼べと言ってるのに、強情なやつだ」
「申し訳……ですが、恐れ多く、て」
「だめだ、クスティと呼べ……でなきゃ、動いてやらん」
はあはあと、忙しなく息を吐く王の顔から、ポタリと汗がしたたり落ちる。その、ぽとりという小さな刺激にも、ぴくりと反応してしまう。
「あ、あっ……陛……」
「クスティだ」
「く、クスティ、様……」
「ん」
今度は、肩を噛まれる。
押し込まれるように腰が動いて、マイリスの背がびくんと反応してしまう。ん、と背中で微かに声がして、大きく息を吐く気配がする。
身体に回された腕に、力がこもる。
「マイリス」
「は、はい」
「約束だ、動いてやろう」
「え……あぅ」
囁いて、王が急に動き出した。
円を描くように、擦りつけるように、抉るように……パン、と肌の打ち合う音がして、マイリスの身体の芯を、今度こそはっきりした快楽が走り抜ける。
「は、あ、あん、へい、あっ」
「名を、呼べ。お前は、案外、物覚えが、悪い」
「あ、あ、クスティ、さま」
「ん」
は、は、と悶えるマイリスの手は既に身体を支えられなくなっている。上体を突っ伏したまま腰だけを高く掲げたところに、王がのし掛かっている体勢だ。
翼は相変わらずしっかりとマイリスを包み込んだまま、脚に絡められた尾の先が、ときおりシーツをぴしりと打つ。
ふたりの背に汗が浮かび、つ、と伝い落ちる。
ぐちゅぐちゅ、ぱんぱんという音と、忙しなく空気を求める呼吸音と、高く喘ぐ声だけが部屋に響く。
「あ、あ……へい、クスティ、様、私……」
「ん、いく、ぞ……」
ひと際強く穿たれて、マイリスの身体が跳ね上がり、ぐっと反らされる。
それをしっかりと抱きとめて、王は最奥に押し付けるようにしてぴたりと動きを止めた。どくんと震えるように脈打つ王から、マイリスの身体の中に熱が広がっていく。
はあ、と大きく息を吐くマイリスの身体が脱力する。王に抱えられたまま力が抜けて、そのまま目を閉じる。寄り掛かるように背を預け、あちこち舐められたり齧られたりしながら、意識が遠くなる。
翌朝、マイリスの目を覚ましたのは、「陛下!」という宰相の怒鳴り声と、寝室の扉をドンドンと叩く音だった。
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