つがいではありませんが

ぎんげつ

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龍は卵生なので

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 ずるずると腰が抜けるように、ジィアは崩れ落ちる。
 壁がなければ、床に転がってしまっただろう。自分の股間に顔を埋めたままの朱灯しゅとうは、器用にジィアのモノを咥えて舐めしゃぶりながら身体を低くしていく。

 今は、勤務時間中なんだよな?

 思わず自問してしまうほど、現実離れしている。ぞくぞくと絶え間ない快感ばかりが昇ってきて、何も考えられなくなりそうだ。
 いったいどうしてこんなことになったのか。

 【龍宮】からの査察官が来たと落ち着き無く一日の仕事を終えた翌日、つまり今朝、突然、巡回部門から査察官補佐への配置換えを言い渡されたのだ。
 ジィアが思わず「何で?」と元上司に尋ねてしまうほどには急過ぎる異動だ。
 上司もよくわからないとしきりに首を捻っていたのだが、配属先へと来てみればいきなりこれとは……つまり、この新たな上司として赴任した龍人が、私情と職権濫用でジィアの配置換えを決定したということだったのか。

「う……あっ」
「考え事なんて、いけませんね」

 二本一度にきゅっと握られて、ジィアは思わず声を漏らしてしまい、自分の手でしっかりと口を塞いだ。
 就業中、上司と色事に耽ったあげく嬌声などが外に漏れ聞こえてしまったら、進退に関わるだろう。いや、進退だけではすまないか。

 しかし、この新しい上司はいったい何を考えているのか。
 ろくでもないことだろうが、ジィアには想像もつかない。

「く、っ」

 ちろりと朱灯がジィアの腹を舐めた。
 尖った舌先で擽るように鍛えた腹筋から胸筋へと舐め上げながら、身体を起こした朱灯はジィアの腰に跨った。前を開いた長衣の下は肌が透けて見えるアンダーだけだ。朱灯のつるりとした滑らか身体が、薄い布越しに感じられた。
 その朱灯が、はあ、と熱い吐息を漏らした。ジィアの首筋を甘く噛みながら、長衣だけでなくアンダーすらも脱ぎ捨ててさっさと裸になってしまう。

「監査官……もう、やめましょうよ。懲戒免職なんてことになったら……」
「朱灯ですと言っているでしょう。
 大丈夫ですよ。監査とはいえ、私の仕事はほぼほぼ見守りでしかありませんし。地上の方々が目立って問題を起こすようなこともないでしょう?」
「しかし、ここは職場で、今は勤務中で……」
「構いません。私の本能があなたを欲しているのですから……ほら、こんなに濡れるなんてはじめてなのですよ。ここにあなたが欲しくてたまらない」

 朱灯の手がジィアの手を握り、そこへと誘う。
 指ほどの大きさの痕跡器官の向こう、さらに奥からぐちゅりと音が立った。ジィアを誘うように、粘膜がうごめいている。

「正直、これまで本能などと馬鹿にしていました。我々龍人が本能による遺伝子マッチングに踊らされるなど、馬鹿ではないかと」

 くふふ、と朱灯が笑う。

「けれど、いざ自分の身に降りかかって見ると……もう、あなたのことしか考えられないのです。あなたの種を受けてあなたとの卵を産むことしか考えられない。あなたと私の遺伝子を受けた子供は、さぞかし素晴らしい成長を見せるだろうと。早くあなたの種が欲しくてしかたないのです」

 朱灯はジィアの指で自慰をするかのように中をかき混ぜた。目を細めて「ねえ」と猫なで声で甘えるように顔を擦り寄せる

「ジィア、私を孕ませてください」

 ごくりとジィアの喉が鳴った。
 剛直は二本とも痛いくらいにガチガチだ。ジィアの指は、リズミカルにうごめく朱灯の柔らかくぬめる粘膜がきゅうきゅう締め付けている。

「ジィア、欲しくてたまりません。お願いします。私の中に、あなたの種を」

 朱灯が悶えるように腰を振る。
 音を立てて絞り出されるように指が抜け落ちて、糸を引く粘液を纏ったままのジィアの手が、朱灯の腰を引き寄せた。

「朱灯、監査官。でも、今は、勤務中で……」
「休憩ですよ。休憩を、しましょう」

 にい、と金色の目が笑みの形になり、きらりと輝いた。
 朱灯の蜜口にジィアの鈴口が押し付けられる。さすがに二本いっぺんには無理なので、ひとつだけだ。
 その朱灯の痕跡器官……ジィアの指に足りないほどのサイズの屹立も充血しきっている。肥大した陰核と呼んでいいのか、それとも子供のような未発達の男性器と称していいのか、ジィアにはわからない。
 けれど、不思議と嫌悪感は感じなかった。

 ゆっくりと腰を落としてジィアを飲み込む朱灯は、あまり痛みを感じていないようだ。地上人の間では、処女膜の有無は獣相の種類にもよるのだと言われている。もしかしたら、龍人にも処女膜なんてないのかもしれない。
 そんなことがとめどなく浮かぶばかりで、考えはまとまることなくジィアの外へと滑り落ちる。

「あ……く、監査官……」
「朱灯、と。何度言えば、呼んでくれるんですか」

 はあ、と熱の籠もった吐息が漏れる。
 やわやわと締め付ける内側は、たぶん地上人とほとんど変わらないだろう。こうして交わることができるのだから当然か。
 朱灯のアンダーも、いつの間にか完全に前が開かれていた。
 つるりとした身体には乳首も臍も見当たらず、首から肩、上腕にかけて淡い赤色の大ぶりな鱗が並び……“とても龍らしい”身体だと、ジィアはぼんやり思う。

 ふう、ふう、と息を荒げながら、朱灯が動き出した。
 円を描いて擦り付けるようにしながら、うっとりと声を漏らしながらゆるゆると動かれて、ジィアはたちまち追い詰められてしまう。
 こんなゆっくりでは、とても足りない。
 外側に出されたほうのもう一本も、物足りない。

「――は、監査官……く、うっ」
「朱、ああっ」

 とうとうたまらなくなって、ジィアは腰を跳ねあげた。
 朱灯が高い声をあげて身体を震わせる。
 外側に出たままのもう一本が朱灯の痕跡器官と擦れ合い、ぞくぞくと背すじを何かが走る。

「あっ、ジィア、あ、う」

 片手は朱灯の腰を抱いて、もう片手で外側のもう一本と痕跡器官を一緒に握り込み、ジィアは強く腰を突き上げ始めた。
 朱灯の内側がビクビクと震えてジィアを締め付ける。

「あ、気持ち、いいです……ジィア……っ」
「く、監査、官」
「朱灯、と……あ、あ……」

 ぎゅううと強く締め付けられて、ジィアは堪らず吐き出してしまった。
 荒く息を吐いて呆然と見上げると、ぱたりと突っ伏すように朱灯が倒れ込んだ。外に出たままのほうから腹の上に散った白濁が、ぬちゃりと音を立てる。

「あ……の、監査官……」
「朱灯ですよ。どうして朱灯と呼んでくれないんですか」
「それは、上官ですし」

 朱灯はずるりと身体を持ち上げた。甘えるようにジィアの頬に顔を寄せ、自分の頬を擦り付ける。

「もったいないことをしてしまいました」
「もったいない? 何を……」
「あなたの種を外に撒いてしまうなんて、もったいなさすぎです」

 ぶつぶつと呟きながら、朱灯はぺろりとジィアの唇を舐める。
 もったいないと言われても、片方からだけ出すなんて無理なのだから、同時に胎内に射精できない以上仕方ない。
 それとも、朱灯はまさか二本とも中に入れろとでも言うつもりか。

「――両方とも余さず受け取ろうと思ったら、やはり二本とも入れなければいけませんよね」
「な、何言ってるんですか。無茶言わないでください、裂けますよ!」
「大丈夫ですよ。この穴は産卵管も兼ねてますから、結構広がるはずです」
「ちょ、ちょっ、監査官」
「朱灯です」
「あ、っ」

 朱灯が片手を下へと滑らせた。
 吐き出して少し柔らかくなっていた外のジィアは、やわやわと優しく握られて瞬く間に固さを取り戻す。
 つられて、中に収めたままのほうも、むくむくと勃ち上がる。
 それを確認してにいっと笑った朱灯は、ゆっくり腰を持ち上げた。中にいたジィアの抜け落ちた後、糸を引くようにぽたりと粘液が垂れ落ちる。

「な、無理ですってば、監査官!」
「朱灯です。大丈夫です。つくり的にちゃんと広がるはずなんです」
「そりゃ、産卵の時には広がるかもしれませんけど、だいたい、一本だけであんなにキツかったのに、二本とも入るわけ……あっ」

 朱灯は片手で二本まとめて持つと、その先端を自分の股間にあてがった。まるで粘液をまぶすように擦り付けられて、ジィアの胎内から快感が湧き上がる。

「く、監査か……ちょ、それ、まずい……」
「朱灯、です……んっ、熱い、です」

 は、は、とすぐに息が上がる。
 二本いっぺんになんて無茶だと止めたいのに止められない。

 ――が。

「あっ、ちょっ、監査官!」
「朱灯です。なかなか入らないものですね」
「無理にやると、俺のも痛いですって!」
「痛いのですか?」
「変に握り締めないでください! デリケートなんですよ!」
「すみません」

 入らない入らないと呟きながら力いっぱい握られて、ジィアは我に返った。
 朱灯の握力で力任せに握られては、さすがに痛い。このまま黙ってされるがままにしていたら、握り潰されるか折られるかしてしまいそうだ。

「だいたい、一本でも狭かったのに、いきなりとか無理に決まってますって。普通はゆっくり慣らしていくものなんですから!」
「慣らしですか。なるほど……」

 朱灯は手元をじっと見つめて首を傾げた。
 このくらい、産み落とす卵の大きさと比べたら難なく入りそうなのに、と。

「仕方ありません。もったいないですが、今日のところは一本ずつにします」
「え、まだ……?」
「もちろん、まだまだです。もっと種を蓄えておかなくてはね」
「蓄えって……あ、うっ」
「ん……やっぱり、ジィアが入るととても気持ちが良いです……あっ」

 手に握るジィアをパッと一本だけにしたと思ったら、朱灯はさっさと自分の中におさめてしまった。
 さっきジィアがしたように、ゆらゆら揺れる自分の痕跡器官と残った一本を一緒に手の中に収めて、ゆっくりと腰を動かし始める。

「こんな痕跡器官に、どんな意味があるのかと思っていましたけど……ジィアはすごいですね。どうしてこれが気持ちいいって知っていたんですか。ジィアと触れ合ってると思うだけで興奮するのに、こんな……」
「っ、どれだけ、順応性が、高いんですか、あなたは」

 ぐちゅぐちゅと音が立つ。
 きっと、朱灯は知識として性行為を知っていただけだったのだろう。うっとりと溺れるように呼吸を喘がせて、朱灯は背を反らす。

「あ、ジィア……また、すぐにいってしまいそうです……さっきより、もっと気持ちいいなんて……ああっ」

 仰け反る朱灯を抱えて身体を起こすと、朱灯を下に組み敷いてジィアは身体を入れ替えた。それから自分と朱灯の外性器を挟んで腹を密着させると、朱灯の奥を強く突き込み始める。

「あ、あっ、ジィア……」
「監査官……、っく」
「朱灯、です。朱灯と呼んで……お願いします、朱灯と……」

 熱に浮かされたように顔を真っ赤に染めて、朱灯が懇願する。
 さっきまで人のことをいいように扱っていたくせに。
 そんなことを考えるジィアの背をぞくぞくとする快楽と欲望が駆け抜けて、は、と思わず吐息を漏らす。

「――朱灯」
「あ、ジィア……ああっ!」

 名を呼んだ途端、朱灯の胎内がびくびくと痙攣した。
 ジィアはくすりと笑ってしまう。

「龍人ていうのは、高貴な種族じゃ、なかったんですか」
「そんな……ふつうです。私は、ふつうで……あっ、ジィア!」
「高貴な龍人なのに、朱灯がこんなに乱れているのは、どうしてなんですか」
「それは、ジィアが欲しくて……あ、もっと、ください、お願いします、やめないで……私のことも、もっと呼んで……ああ、あっ!」

 動きを緩めるジィアに、金の目を潤ませた朱灯が縋り付いた。あんなにジィアを翻弄していたくせに、今は朱灯のほうがジィアに翻弄されている。
 汗を浮かべて、ジィアにしがみついて、もっととねだって。

「朱灯」
「あ、っ」

 名を呼ばれるだけでこんなに悦んで。
 高貴でお高くとまった龍人のくせに、蓋を開けてみたらこんなありさまだ。
 それに、たしかに身体の相性も良いようだった。
 うねうね蠢く中の締め付けも、肌や鱗の感触も、細い身体の抱き心地も、ジィアにはたいへんに具合がいい。
 こうして外側と内側、両方を余すところなく刺激して、少しハスキーな甘い声でジィアと名前を呼ばれて求められて……。

 久しぶり、というよりも、はじめてまともに抱き合って、ジィアも少しどころではなく浮かれていたようだった。
 気がついたら日が暮れて、終業時間を迎えていた。
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