【完結】インキュバスな彼

小波0073

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最終章 なんとか卒業できそうです

14.

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 やれやれとその首を振る。
 みのりは頬をひくつかせた。「いろいろ」の意味が怖い。
 雄基はおそれていた通り、案の定の絶倫ぶりだし、自分のスキルは想像以上で彼にまったく引けを取らない。本当にいろいろ気をつけないと大変なことになりそうだ。
 アレンジを手早くラッピングしながらかつみが眼鏡の顔を向けた。

「そう言えば。あの時あんたが持ってったアレンジ、あれはいったいどうしたの? 結局誰にあげたのよ」

 思い出したようにかつみに問われ、みのりは一瞬どきっとした。
 多分花かごは街のどこかで、老婆が出した台の上をひっそりとかざっているのだろう。もうみのりには見えないが。

「──それ、俺がもらいました」

 店先から雄基の声が答え、みのりは思わず目をむいた。
 学校帰りの制服姿で雄基が入り口に立っている。今日はサッカーがある曜日だから、会う予定なんかなかったのに。彼女の顔を見るためだけに部活の後でよったらしい。

「え、そんなの、だって」

 うろたえたみのりは言葉につまり、彼氏と母親の顔を見た。しかし雄基に目くばせされてしかたなくその口を閉じる。
 配達のために店舗をあけたかつみの姿が見えなくなると、みのりは雄基に文句を言った。

「……あんなことをお母さんに言ったら、今度は私がアレンジをあげて雄基君に告ったみたいじゃない。ちょっと、立場が逆なんだけど」

 雄基がくすりと小さく笑う。台に出されたリボンや道具をかたづけるのを手伝いながら、思案顔をして告げた。

「俺がアレンジを作ってもいいけど、花屋に花を贈ってもな。変に批評されるのも嫌だし……お前の手直し、わりと厳しくて後でけっこうへこむんだぞ」
「え? 本当に?」

 みのりは大きく目を見開いた。たしかに思ったことをそのままずばずば語る自身を思い、反省する。夜の教室でそれが出て、もし集客に関わったらヤバい。
 首をかたむけて雄基が続けた。

「花の代わりが欲しいんだったら三田村にでも教わって、ケーキを焼いて贈ろうか?」

 みのりはぶんぶんと首を振った。

「お願いですからこれ以上、私より女子力を上げないでください」

 彼の女子力に関する実力は十二分に理解している。華道に片付け、お菓子作りとこれ以上みがかれてはたまらない。
 二人は肩をすくめた後で、お互いの顔を見合わせて笑った。
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