【完結】インキュバスな彼

小波0073

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最終章 なんとか卒業できそうです

13.

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 その後、なごりおしそうな彼にどうにか解放してもらい、みのりはよろよろベッドを下りて脱ぎ捨てられた服を着た。雄基にもらったミネラルウォーターでかわきまくった喉をうるおす。
  雄基の部屋を出る直前におそるおそるスマホを確認し、ラインの画面にびっちりならんだメッセージの数に戦慄を覚えた。

 心身ともに疲労困憊のみのりはまともに歩くことができず、雄基に背負われてうちに帰った。しかしみのりを背負って歩く彼の横顔はすっきりしていて、暗い住宅街の道でもわかるほど上機嫌だった。あれだけ動いた後なのに、軽い足どりでみのりを運ぶ元気な彼が信じられない。

 自分の家についた時にはとっくに門限をすぎていて、雄基と二人で暗い店内に起立の形で立たされた。かつみにがっつり叱られながら疲労で倒れそうになる。その時ばかりはさすがに雄基も神妙な顔つきをしていたが、家に帰ろうとする直前にこそっとみのりにたずねて来た。

「うちの親、帰って来るのは明後日なんだ。明日、部活は朝練だけだし──また来るだろ?」
「来ない、絶対‼」
 
 みのりが震えあがって言うと、今まで見たこともなかったような晴れやかすぎる笑顔を浮かべた。

「次の華展、七月だったよな? サッカーの試合とかぶってるんだけど、どっちを優先すればいい? サボると部長がうるさいし、あとでけっこう高くつくんだけど」

 みのりはぎょっとして彼を見た。
 雄基が今度はにやりと笑った。

「人数がわりとギリギリだから、今まで華展の手伝いの時は友達に助っ人をたのんでて。土日は本当に面倒なんだよ、ほかにもいろいろ借りあるし。……今回は生け込みもパスするか」

 あっけらかんとした口ぶりで、今まで切り出すことのなかった手伝いの内情を明かして来る。彼の明らかな交換条件にみのりはたじたじとなった。
 あてにしていた手伝いがまったくないということは、パシリのみのりが行う作業が倍以上に増えることになる。もう選びようのない選択だ。
 雄基は楽しげに念を押した。

「明日、学校が終わったら来るな? 門限までには帰すから」

──それって門限までずっとヤり続けるってことですか?

 夢の中では二週間、通って来た彼を思い出す。みのりは思わず頭をかかえた。もう嫌な予感しかしない。

 二日後、ようやく出張から帰った雄基の母親が店に来た。不貞を働いた息子のわびを頭を下げて告げたようだ。
 体をちぢめた友人の謝罪にかつみはひたすら苦笑いをしていた。あらためて交際の承諾にふれられ、「高校生らしく、ほどほどに」と伝えることしかできなかったらしい。
  けっこうショックを受けていたのが娘に甘い父親で、これはさすがにみのりもひたすら恥じ入ることしかできなかった。

 予約のアレンジを手伝っていた娘に、かつみは肩をすくめて言った。

「雄基君はいい子だし、あんまりヤボなことは言いたくないけど……。本当にいろいろ気をつけてよね」
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